SS生徒会 外での決戦
生徒会(外にいる人間)のサブストーリーです。
「会長。敵異能者多数、アジトから出てきました。」
零たちがアジトに入って行ってから数分経ったあたりで、スコーピオンの異能者と思われる者たちが続々と中から出てきたのが確認でき、ずっと双眼鏡で見ていた浅野が会長に報告をした。
「よし。敵からお出ましなら、開戦の狼煙代わりに、私の異能でしてしてあげましょう。」
日下部がそう言うと、前に数歩出て大きく息を吸った。
限界まで息を吸うと、夜中でありながら、声を張って異能を展開した。
「戦艦、抜錨ォッ!」
その声に答えるかのように、地面から人の体より大きい錨が出てきて、それを追うかのように巨大な戦艦が現れた。
その光景を始めて見た生徒会のメンバー以外は、ただただ言葉を失っていた。
「何…アレ…?」
「あれって…本物の戦艦…?」
それは果たして異能なのか?
はたまた彼女が作り出した幻想なのか?
その真意を知っているのは、その力を使っている本人だけだっだ。
「第一、第二主砲、三式弾を装填!」
日下部の声と同時に、戦艦がどんどん動いていき、戦艦の主砲がビルへと向けられた。
「目標、敵異能者組織スコーピオン基地――――放て!!」
ドゴオオオオン!!
ものすごい轟音とともに戦艦から放たれた弾は、スコーピオンの異能者たちがおる場所へと向かっていき、着弾して大爆発を起こした。
そして、その爆発に飲み込まれた異能者たちは、阿鼻叫喚となって、大パニックを起こしていた。
撃ち終えた戦艦を見ながら、その場にいた全員が驚愕とし、唖然とし、呆然とし、愕然とした。
それも異能なのか?
それが彼女の力なのか?
そんな力が存在していいのか?
その場にいる全員が、少なくとも同じ思いを持っていた。
彼女が出した戦艦は役目を終えたかのように消滅して、今の状況を確認するために浅野に指示を出した。
「浅野、敵の状況を教えて。」
「…あ、はい。敵は攻撃を受けて大混乱しております。もちろん、死者はいません。」
『!?』
浅野の言葉で、全員が驚きを隠せなかった。
普通なら今の攻撃で死者が出てもおかしくないのだが、敵を見るとそこには死者が一人もいなかった。
その場が燃えたりしていても、爆発で壊れたりしていても、やはり死者が一人もいなかった。
何で敵に死者がいないのかが分からないでいたが、彼女たちが話す会話で、すべてが解決した。
「うむ、やはり調整をして威力を押さえたからこそ、多少の威嚇にはなっただろうな。」
「まったく…三式弾とか言ってたけど、本当は『即死性が全然ない弾』なんでしょう?」
「アハハ…どうしてもこの異能を持ったら、一度は言ってみようと思ったかったんだよ。」
「本当にこの子は…」
日下部の言葉に、東雲は呆れながら息を吐いた。
何気ない事を言ってるけど、今聞いてる者たちからしたら、それが可能なのかって思ってしまっていた。
そしてその異能の正体が知りたいと思っていた矢先に、誰よりも気になっていた博士が、日下部の異能について聞きだした。
「ねぇ、あなた。今のはあなたの異能なんだよね?」
「はい。これが私の異能、『提督』です。」
「提督……じゃあこの戦艦は、あなたの想像で作られた力って事かしら?」
「そうです。私が海が好きなのと、父が昔から戦艦などについて教えてもらったからか、恐らくそれに見合った異能を、私が持ってしまったのでしょう。」
彼女は照れ臭そうに話していて、それを聞いた博士は、頭の中で冷静に彼女の異能を分析しだした。
博士は一番最初に異能という存在を知って、この力が異世界の産物に加えて、人の潜在能力を上げる存在だと思っていた。
しかし異能と向き合ってきていて、今の彼女の言葉を聞いて、ようやくその答えにたどり着いたのだ。
この異能は、記憶の奥底に存在する知識などで具現化できる存在だと知ったのだ。
この世に生まれてから今に至るまでに、一番濃ゆい存在を異能にさせる。
つまり今、目の前にいる日下部沙羅は、その中でも一番濃ゆく存在していた、海と戦艦の知識が具現化し、今のような規格外な力を発揮させる事に成功したのだ。
(もしそんなのが可能なら、今のあの子たちもそれ以上の力を発揮させるのが可能になる…!)
これを知ってるのは果たして誰か?
今の自分が一番最初か?
それともこれを発生させたスコーピオンのボスか?
博士の頭の中では、新たな発見にたどり着いて興奮していた。
「会長、敵中央からこちらに多数向かってきてます。」
「そうか。狼煙は上がったんだ。あとは戦場へまっしぐらね。」
敵が烏合の衆みたいに走ってきているのが確認できたところで、それを迎え入れるかのように、彼女もたちも戦闘態勢に入って受け入れた。
「先に行った後輩たちに、遅れを取らない働きっぷりを見せてあげるわよ。」
「そうね。久しぶりに全力で体を動かしましょうか。」
「私たちは浅野ちゃんと一緒に後方から支援しマス。」
「先輩方、無理のなさらないようにお願いします。」
「わかってるわ。行くわよ、陽菜、早瀬。」
「えぇ!」
「はい!」
日下部が先行して前に走り、その後ろに東雲と加賀美がついていくかのように走り出した。
「前にいる奴があの戦艦を動かした女だ! 奴から先に潰すぞ!」
異能者が数で押し切って攻めにかかろうとしたが、それを予想していた日下部は、戦艦を再び召喚せず、地面から鎖に繋がれた錨を手に取った。
「“アンカーブレイク”」
鎖に繋がれた錨を、ハンマー投げのように一直線に投げ飛ばし、先頭にいた異能者は避ける事も出来ずに直撃した。
もちろん彼女の想像で作られているため、本物と同じ質量ではないが、まともに受ければ骨折は逃れられないほどの重さは襲ってくる事になる。
「ひっ、怯むな! 相手はたった三人だ! 一気に襲い掛かれ!」
日下部の一撃で一瞬は怯んでいた異能者たちだったが、すぐに立て直して襲いにかかった。
今の異能者たちは、日下部だけに注意を払っていたせいで、他の二人はノーマークになっていた。
それを見逃さなかった東雲は、日下部のカバーを踏まえたやり方で、異能者に攻撃を仕掛けた。
「さっきから沙羅にマークしていってるけど、私たちを忘れないでよね。“トランプアクション「ジャック・ザ・リッパー」”」
東雲はトランプを取り出して手に取ると、投げナイフのようにトランプを投げ飛ばし、それが異能者たちにどんどん当たっていき、数を一気に減らした。
東雲陽菜の異能の名は『手品師』。
その名の通り、あらゆる道具を武器にして攻撃することができ、今出した技はその一つで、トランプをナイフのように鋭くさせてから投げたのだ。
「ネタは飽きないくらいあるのだから、見たければ静かに観賞しなさい。」
「くっ…まだだ! 掛かれ!」
「はいはい、周辺に気を付けてくださいね。会長のおかげでたくさんの瓦礫ができたので、少し派手に行きますから。」
加賀美がそう言うと、近くにあった瓦礫がどんどん宙に浮き始め、20個ほどの瓦礫が一定の高さで止まった。
「それじゃあ、降りかかる雨にご注意くださいね。」
加賀美が手を前に出すと、宙に浮いてた瓦礫が一気に異能者に襲い掛かり、異能者たちも自分の異能で防ごうとしたが、数と大きさで圧倒せれてしまい、成す術もなく再起不能にされてしまった。
自分の身長以上の瓦礫を浮き上がらせた加賀美早瀬の異能は、『心霊現象』。
幼い頃からオカルトに興味を持ていた彼女は、様々な心霊現象や超常現象などを転々として知っていき、それが今となっては自分の力となって、今や自分の異能に対して興奮が抑えきれなくなっていたのだ。
「んふふふ♪ 自分が心霊現象を使える日が来るなんて、まるで夢みたいね。」
最初に異能を使った時は、自分の目の前で心霊現象が起きてびっくりしていたけど、次第に自分がそれを発生させてる事に気づいた彼女は、オカルトに対する探究心によって満たされていき、今では生徒会の誰よりも早くその力を身に着ける事ができたのだ。
「な、何だよコイツら、一人一人の異能が強すぎて、全く歯が立たねぇ…」
「くっそ…だったら一気に異能で遅いかって……ぐぎゃ…!?」
異能と使って攻撃をしようとした異能者が、どこからか狙撃されて倒れこんでしまい、それを目の当たりにした異能者たちは焦りだした。
「おい、一体どうしたんだ!?」
「これは…狙撃か!」
「何処だ! 何処から撃ってきたんだ…!」
「おい、誰か見てねぇのか!?」
いきなり狙撃されて周囲を見渡したが、その姿を捉える事ができず、次々に狙撃されていき、数が減っていく一方だった。
「外に出てきた異能者は、思ってたよりも強くはなさそうネ。」
「そうみたいですね。」
狙撃を主は、日下部たちがいる場所よりもかなり離れた、結界の端っこで狙撃していたのだ。
その正体は、生徒会の会計をしている長谷川サーニャで、異能の名は『遠距離射撃』。
彼女の異能は、趣味でやっているサバイバルゲームがそのまま異能になっており、その特徴は、狙撃で使うものを瞬時に使用できるようにさせ、撃った弾丸も軌道を変える事が可能でもある異能だ。
ちなみに、彼女が使っているライフルはOSV―96というロシアのライフル銃で、博士が独学で本物に近い状態まで作り上げたライフル銃だ。
「サーニャ先輩、会長の近くにいる異能者を先に撃ってください。」
「заметано」
浅野の指示で、長谷川は次々と弾を撃っていき、一発も外れる事もなく異能者に命中させて倒していった。
もちろん、急所は全部外しており、死人は誰一人と出さなかった。
「それにしても、深雪ちゃんの異能と博士の道具のおかげで、こんな簡単に当てる事ができるなんてネ。」
「そんな事はないですよ。全部サーニャ先輩の実力です。」
長谷川は浅野の事を誉めていたが、彼女はそれを謙遜するかのように言ってるが、実際には彼女の異能のおかげで、見えない場所でも命中させる事が可能となっているのだ。
そんな浅野深雪の異能は、『天体観測』。
特徴は、空にある星座を見ただけで場所を把握させる事が可能となり、その力は夜によって力を発揮させる事が可能となっているのだ。
今の時間は夜中、しかも空は雲が一切ない天気。
そんな最高のコンディションの中で、今まさにその力が発揮されている浅野の異能は、空に星座がある限り何処にいても必ず見つかってしまうのだ。
さらに今二人がつけている帽子は、お互いの対象者の思考を同時に連携させる事ができる魔道具「共鳴キャップ」といった道具で、この異能と魔道具の効果で、今のような見えない場所でも命中させる事が可能となるトリックの完成になるのだ。
「このまま一気に……っ! 伏セテ!」
「っ! …きゃっ!」
長谷川の声で慌てて体を伏せた浅野は、間一髪の所で何処からか来た弾丸を避ける事ができた。
「狙撃…? もしかして白崎先輩が言ってた異能者!」
「向こうもこっちの位置が分かったようネ。場所は分カル?」
「……ここから500m…3時の方からです。」
浅野の思考を通じてその場所を確認すると、確かにその場所から射撃したような人物が一人いた。
その人物こそが、数日前に零を撃ちぬいた存在でもあって、スコーピオンの幹部の一人、E5だった。
「チッ……頭を狙ったのに、外れたじゃないの。さっさと私の的になっていれば、すぐに終わったのに。」
彼女の異能は、長谷川と同じ射撃の異能で、これまでに何人も自分の異能で人を撃ってきて、その数は40人にもなっていた。
彼女は人を殺すのに何も罪悪感はなく、むしろそれを快感として受け入れてしまっており、これまで何人も殺しきた彼女は、最早ただの犯罪者となってしまっていたのだ。
「まぁ場所はもう分かっちゃったし、さっさと片付けてシャワーでも……」
バチュン…!
その音が何なのか一瞬分かっていなかったが、すぐに音の正体が弾丸が着弾した音だと気付いたE5は、一気に焦りだした。
「嘘でしょ…!? もう私の場所が分かったの!?」
慌ててスコープを覗き込んだが、その場所には狙ってた二人はもうおらず、完全に見失ってしまっていたのだ。
(くそっ…何処行ったのよ…?)
自分の方が射撃は強い。
そう思っていた彼女は、相手が狙撃手だとわかってもすぐに勝てると思っていた。
しかし彼女はそれを見誤っており、向こうの異能が同じ実力だったのと、浅野の異能を完全に把握してないかった事が原因で、彼女はすでに立場が逆転してしまっていたのだ。
「くそっ……何で…? 完全に私の方が上なんでしょう? 何で私が押されているのよ?」
『そんなの簡単ヨ? 私があなたと同じ実力だからヨ。』
「!?」
いきなり何処からか声がして、スコープから目を離して周囲を見渡したが、何処を見ても声の主はいなかった。
「何処よ……何処にいるのよ?!」
『さっき来たデショ? あなたに送った弾丸ガ? そこから声を出してるのヨ。』
「弾丸…? まさか、ここから!?」
E5は慌ててその場から立ち上がって、飛んできた弾丸を手に取ると、その弾丸は見た目は普通の弾丸のように見えたが、これが普通じゃないと思ってしまったE5は、そこへ向けて話し出した。
「アンタ、一体何処から撃ってるのよ!?」
『さぁネ? 知りたかったら自分の脳で理解したらどうナノ?』
「ふざけるんじゃないわよ! さっさと教えなさい!」
『はぁ……分かったわ、教えてアゲル。』
するといきなり銃声が聞こえたと思ったら、E5の足に弾丸が命中してしまい、そのまま足から崩れ落ちた。
「ぐっ…! 痛い…痛い痛い……!」
『狙撃手なんだから、立ったら終わりなのは常識じゃないカシラ?』
「くっ……くっそぉぉ…!」
E5はライフルを持って狙おうとしても、その場から動いてないから何処にいるかも分からないし、撃たれた足の痛みで集中できないからか、引き金を引こうにも力が入らなかった。
「何で…? 私何もしてないじゃん…?」
『何もしてナイ? だったら数日前に彼を撃ったのは何故なのカシラ?』
「か…彼?」
『忘れた訳じゃないデショ? あなたが彼の心臓を完璧に狙って撃ったノヲ。あれは人を撃つのに慣れてるやり方でショウ。』
「…そ、そんなの…出鱈目じゃん…」
E5はそう言ってるが、確かに彼を撃ってる以上、嘘を通して逃げるしか今の方法はなかった。
しかし長谷川は逃がさないかのように、簡単に説明をし始めた。
『知ってますカ? 人間は人を一回殺すだけで豹変してしまうのですヨ。まるで狩りを知って快楽を持ってしまった獣のヨウニ。』
「な…何を…」
『それにさっきだって、彼女が伏せなかったら頭に命中してイタ。それは人を殺す動機にはなっているのではないですカ?』
「っ………」
『沈黙は同意と見たワ。』
完全に逃げられなくなってしまった、そう思ったE5はライフルをその場において、泣き言を言い始めた。
「や、やめようよ…あなたが私を殺せば、あなたも人殺しになるのよ。それは嫌じゃないの? そんなの…自分が辛くなるだけよ。」
―――――命乞い。
それは戦士にとっては敗北宣言と同じで、負けを認めた瞬間でもあった。
普通なら命乞いをしてる時点で、勝者は多少の慈悲を持ち合わせるだろう――――ただし、人殺しじゃなければ。
『確かに人殺しになるのは嫌でス。しかしあなたは彼を……尊敬している人を殺すつもりで撃ッタ。その時点で、私を怒らせるのは充分なんですヨ。』
彼女は白崎零を尊敬していた。
日本とロシアのハーフであっても、彼女はロシアにいた時期が長く、日本語は完璧にはしゃべれなかった。
周りとの距離感を持ってしまった一年生の時、彼はロシア語がしゃべれなくても、自分に当たり前のように接してきた。
『ロシア語しか話せないのなら、これから日本語を覚えていけばいい。』……それが彼の最初の言葉だった。
それから一年間、彼と相川君、それに加藤さんに常盤さんと、一緒にしゃべっていくようになってからは楽しい毎日を送るようになり、いつの間にか二年生になった時には、普通に日本語がしゃべれるようにもなっていた。
たとえクラスが違っていても、毎日のように話し相手になってくれて、それが自分にとっては幸せでもあった。
だからこその尊敬。
彼に好意を抱いていても、それは決してLOVEではなくLIKEだった。
意味は簡単、友達としてずっと尊敬したいから。
『今の自分を変えてくれた彼を殺そうとシタ……彼だけじゃナイ。あなたが今まで殺してきた人の無念を、私が全部晴らして見せマス。』
「ちょ…ちょっと待って……」
『До свидания』
その言葉を最後に、彼女はライフルの引き金を引いて、弾丸はE5の頭部に命中し、E5は息を引き取った。
絶命した彼女の後ろにいた少女は、ゆっくりとE5に近づいて声を掛けた。
「……最後に言っておきますけど、弾丸にマイクやスピーカーは付いてないですヨ。何故ならすでに私は、あなたの後ろにいるのですカラ。」
彼女はすでに浅野のおかげで場所は把握しており、博士から貰ってたドローン型スピーカーを手前の壁に付けており、そこから話していたのだ。
長谷川はE5の首元に手をやって、止まっているのを確認してから、その場を去った。
「人殺しになっても、人殺しを裁くのならそれを受け入れマスヨ。あなたみたいな極悪人が、この世からいなくなるのでしたらネ。」




