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101話 因縁

≪零サイド≫


「……さっきから別の場所でやたらと壁を壊してる音がするな。」


「多分レーヴェね。あの子血の気が強いから、戦いがつまんないとストレスを発散するために破壊行動に出やすいのよ。」


「何というか、肉食系の獣人ってそんなに血の気が強い子って多いんだっけ?」


「さぁ? 獣だけに野獣になりやすいのかもね。」


零と真莉亜は半ば呆れたかのように今も何処かで暴れている仲間の事を思いながら進んでいた。

特に零はかつての仲間であったベレナスの事を思い出し、戦いになると人が変わったかのように先陣を切って倒したりしていたから、獣人というのは魔族よりも好戦的かもなって思い始めていた。


「それにしても、未だに幹部と鉢合わせないなんておかしくないでしょうか?」


「確かに、一人くらい現れてもおかしくないと思うんだけどな。」


入ってからどれくらい経ったのか分からないけど、はっきりいって未だに幹部が出てくる雰囲気がない状態です。

男が言ってた通り、戦闘している姿は見てないって言ってたけど、流石に今の状況でいないのはどうかと思いますよ。


(…いやもしかして、何かを待ってるのか…?)


「まぁとにかくヤベェな。夜中の襲撃だから退屈になると眠たくなってきそう…――――」


俺は後ろから気配を消してその場で隠れているのに気が付いたが、後ろは振り向かずにその場に止まった。


「どうしたの、零君?」


「…悪い真莉亜、先に行っててくれないか?」


「えっ、どうして?」


「少し気になる事が出来たんだ。後から追いつくよ。」


「そう、わかった。」


真莉亜はみんなを連れて先に行って、姿が見えなくなった所で俺は魔装に着替えた。

そしてさっきから視線を感じてた後ろの方を振り向いた。


「さて、そろそろ出てきたらどうだ? 完璧に気配を消してるが、血の匂いでバレバレだぞ。」


「―――――何だ、気付いていたのかよ。」


男の声が聞こえたと同時に、壁からパワースーツ(・・・・・・)を着た異能者が現れた。

壁から出てきたという事は、コイツの異能の一つか。

いや、この際どうでもいいか。


「ようやく幹部一人目か。しかも、俺が会いたがってた「E4」だとはな。」


「待ってたぜ。またお前を甚振れる日が来るのがよぉ。」


「は?」


また…?

またってどういう事だ?

そう思っていると、E4はヘルメットを取り外して俺の顔を見てきた。


「会いたがったぜ、白崎。」


「お前、山岸(やまぎし)か…?」


E4の正体は、かつて小学生の時に俺をイジメてた主犯格の山岸(やまぎし)順平(じゅんぺい)だった。


「驚いたぜ。まさかあの二人以外にもお前がおったとはな。」


「俺も驚いたぜ。まさか俺をイジメていた奴が人殺しをしてるなんてな。」


「はっ、今更言わなくてもわかってんじゃねぇのか?」


「さぁな? お前に言う義理はない。」


俺は何も考えずに腰に掛けてた妖刀を右手に持って、ホルダーに入れてた怪銃を左手に持った。

対する向こうは、ボクシングの構えでもなければ、空手のような構えでもない、自分がやりやすい構えをして両手の拳を握って構えた。


「やる前に聞いておきたい事があるが、お前、最近人を殺したのは何時だ?」


「あ? そうだな…確か昨日のお前と同じ苗字の「白崎」が最後だったかな?」


「その白崎って人を殺したのは偶然か? それとも必然か?」


「さぁな? 俺は異能(これ)を三年前から持って何人も殺してきたからな。数えても100は超えてるかもな。」


成程……コイツは手遅れか。

だったら俺がやるのは、殺戮者へ死を送るだけだな。


「――――そうか。なら、ここをお前の墓場にしてやるよ。」


「やってみろよ。俺が先に殺してやるからよ!」


山岸が突っ込んできたのと同時に俺は銃を発砲して応戦した。


弾丸は当たったかのように見えるが、全部すり抜けたかのような感じで効いておらず、すぐに距離を詰められて攻撃の隙を与えてしまった。

俺は飛んでくるパンチを全部妖刀で弾いて、妖刀を首へ向けて振った。

山岸はそれを避けて距離を保つと、ニヤつきながらこっちを見てきた。


「ほう。あっさり殺らさせてくれないのか?」


「生憎、昔みたいに殴られるのはごめんだからね。」


恐らく今使ったのは攻撃をすり抜ける異能と、トモのような身体強化の異能だろうな。


いくつか異能を持ってるのは知ってるし、最初の壁から出てきたあたりで分かっていたから、驚きはしないな。

ただ問題は、俺のスキルが向こうに有効かどうかだな。


「しかしお前バカだよな? さっきの女どもと一緒におったら勝てる要素はあったと思うのによぉ。」


「別に、お前を殺すのにあいつらは必要ないからよ。」


「あぁ? 雑魚のお前がかっこつけてヒーローごっこかよwwwつまんねぇからやめておけww」


さっきから山岸に笑われているけど、別に何にも感じなかった。

ただまぁうっさいから、その減らす口を黙らせておくか。


バンッ!


零が発砲した弾丸は山岸に向かっていき、山岸は避ける素振りもせずにまともに弾丸を受けて出血した。


「……は?」


山岸はすり抜けの異能を常時使っていたにも構わず、零が撃った弾丸を受けてしまった事に疑問を思ったが、一気に襲ってきた激痛に叫びだした。


「いってぇ! いてぇよ! なんで弾丸が当たるんだよ!?」


「うん。どうやらすり抜けの異能もそこまで脅威じゃなかったか。」


零が最初に撃った弾丸と、今撃った弾丸は同じ弾丸でも違っていた。


一発目に使った弾丸は、普通の怪銃の機能として作った魔力の弾丸。

二発目に使った弾丸は、闇魔法で作った特殊な弾丸。


その二発目は、零が初代勇者から教えてもらった闇魔法の一つで、その特徴は、あらゆる防御を貫く貫通弾。

故にその弾丸の名は―――――


「“魔弾(カール・マリア)”。使いどころが限られるけど、お前には何も問題ないな。」


「てっめぇ……」


「どうだ? 久しぶりに味わう痛みは?」


「舐めんじゃねぇぞ!」


山岸は痛みを堪えながらも俺に攻撃を襲ってきたが、魔弾がかなり効いたみたいで、さっきまでの攻撃は嘘のように弱かった。


「おいおい、刀で弾かなくてもいいくらい遅くなったな? 傷一つでそんなもんかよ?」


「うっせぇ! 黙って俺に殺されやがれ!」


やれやれ、一発でここまで弱くなるなんて、異能者幹部の風上にも置けないな。

これならまだクラッシュのほうが根性があったし、アイツのほうがまだ幹部に相応しかったな。


「くそくそくそ! 当たりやがれよ!」


「はぁ……時間も掛けたくないし、終いにするか。」


俺は山岸を思いっきり蹴って後ろに下げて、銃をホルダーにしまって、鞘を持って居合の構えをした。


「くっそがああああああ!!」


馬鹿が、わざわざ突っ込んで来てくれるなんてな。

お前が殺した人間の分の断罪は俺にはできないが、地獄に送るのは俺が代わりにしてやるよ。


「捌の太刀……“居合十六蓮華・断”」


半身を解放した事によって体が軽くなって、さらに早くなった捌の太刀は、最早雷と同じ速さにまでたどり着き、太刀筋すら見えない程の速度に至っていた。


「…え?」


山岸は自分の身に何が起こったのかわかっておらず、ただ崩れていく自分の体を見る事しか許されなかった。


山岸の中で、零は格下だと思っていた。

小学生の時からずっと強いと感じていた山岸は、異能と出会ってから自分はこの世界の最強に至ったと思っていた。


だけどそれは勘違いで、山岸が殺していたのは、自分よりも格下の奴としかやっていなかったからで、格上とは一度も戦った事がなかったのだ。

そんな時に白崎零といった自分が昔イジメていた奴が現れて、山岸は勝利を確実に思っており、本来持ってる異能は四つもあるにも構わず、二つしか使っていなかった


その時点で―――――山岸順平はすでに敗北していたのだ。


(俺が負けた? 嘘だろ……俺よりも弱い白崎(こいつ)にか?)


山岸は自分の体が崩れていくにも関わらず、意識と生命の火は消えようとはしなかった。

それは、山岸が持ってた異能の一つ、生命を先延ばしにさせる、『生命拡張(ロングライフ)』という能力だった。


本来なら多量の出血をしても、その異能によって死を先延ばす事ができるのだが、零に体をバラバラにされてしまっては、その異能は宝の持ち腐れになってしまったのだ。


(嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 死にたくない! まだ死にたくなぁぁぁぁい!)


山岸は襲い来る死の恐怖に押しつぶされそうになるが、それを知らない振りするかのように死は山岸に襲い掛かった。


山岸順平はその日をもって死ぬ事となってしまい、最後に見えたのは、かつてイジメていた白崎零が、自分に向けて放っている絶対零度の視線だった。


「あとは地獄の閻魔さんに裁いてもらうとするか。」


そう言ってかつてのイジメっ子の死体を炎で燃やし、人肉が焼けるにおいを余所に、本来見えない空を見るかのように天井を見た。


「――――叔父さん、伯母さん。仇はちゃんと取ったから、安心して天国で照を見守ってくれ。」


俺が二人の冥福を送っていると、どこからか鳴き声が聞こえて、そっちを見ると一匹の猫がこっちを見ながら近付いてきた。


「猫? 何でこんな所に?」


俺がしゃがむと、猫は俺に甘えるかのように膝の上に前足を置いてすり寄ってきた。

あぁ、かわええなぁ。

シラヌイみたいな忠犬もいいけど、こうやって甘えてくる猫もいいな。


しかしどうしてこんな場所に猫が?

普通なら野良猫と思ってもいいけど、ここは地下。

しかも血の匂いがする異能者の巣窟だ。


「もしかしてお前、母さんが召喚させた猫か?」


「にゃー」


そうだよって言ってるのか、猫は鳴いて俺に返事をした。

そういえば母さんの魔法は一度も見た事はないけど、地下がある事も知っていたから、多分召喚術を使って動物を召喚させたのだろう。


そんな事を考えてたら、猫は俺から離れてどこかに向かいながら俺のほうを向いてきた。


「付いて来いってか。」


真莉亜やあいつらが心配はないだろうけど、道草はしたくないし、とりあえず付いて行くだけ行ってみるか。

猫はそのままある部屋に入っていき、俺も部屋に入ると、様々な薬品が置いてある部屋だった。


「これって…!?」


そこにはクラッシュが使ってた注射器と同じやつが何十本も置いてあった。

もしかして、ここにある全部がそうなのか!?

クラッシュのあれが未完成段階だと思うと、今ここにあるのは完成段階の可能性もあるな。


「にゃー」


母さんの猫が本棚をずっと引っ掻いていて、近付くと本棚の下が引きずった跡が残っているのが分かった。

本棚を横にずらすと、さらに地下に行ける階段があって、猫はその階段を下りて行った。

……行ってみるか。


狭い階段を下りてさらに地下に行き、ドアを開けると、そこには大本命のキノコが大量に量産されていた。


「ここはある意味ビンゴだな。」


どうやら母さんの召喚させた猫は、誰かに会ったらここを教えるようにしていたのかもな。

ここか見つかったのなら、やる事は一つだな。


「“女王蜂(キラークイーン)”」


そう言って手の平に闇を展開させると、そこから大量の蜂が出てきて、周辺の壁や棚に張り付いた。


「これでよし。ほら、ここから離れるぞ。」


俺は猫を抱きかかえて部屋を後にして、上の部屋にも蜂をびっしり張り巡らせて、部屋から距離を置いてから指パッチンをした。

それを合図に部屋にいた蜂が一斉に爆発を起こし、ドアが吹き飛んだのを確認してから、真莉亜たちの後を追いかけた。


「これで、地球に害する存在が一つ無くなったな。」


願わくは、これ以上人が魔物にならない事を祈ろう。

そう思いながら俺は、夢の世界(シープ・ワールド)で待機させていたアリアとシャルルをこっちに呼び寄せた。


「アリア、シャルル、俺の先生であって4代目勇者のいる場所に向かって応援に行ってほしい。」


「了解ー」

「分かりました。」


「あと、これもしておかないとな。」


俺は“無慈悲の断罪”を二人の付与させて、合流してからは死人を出さない事を念押ししておいた。


え? 何で俺は良くて二人はダメなのかって?

それはトモと明日香に血生臭いのを見せないようにするためさ。


二人は何も疑わずに頷いてから飛んで行って、俺はそれを見送ってから真莉亜たちと合流を果たすために歩いた。


**********


≪櫻井サイド≫


「随分過激になってきたな。」


「ここまで来るのに、何人やったかしら?」


「う~ん、多分100は相手したかな?」


最初こそは4,5人程度のグループで相手をしてきたけど、先に行くごとに人数が増えていき、今倒した異能者に至っては20人いた。


「それにしても、さっきから何処かでドカドカ音が聞こえるけど、幹部の奴と戦っているのか?」


「それは分からないわ。でも多分違うかもしれないわね。」


「どうしてですか?」


明日香が櫻井先生に聞くと、彼女はある推測をみんなに話した。


「多分この音は、敵を引き付けるためにやってる行為であって、囮の役をしてくれてると思うのよ。」


「なんでそんな事を?」


「誰かが誘導を行って、他の二組が動きやすいようにするためだからよ。」


「「なるほど。」」


二人は先生の言った言葉で納得して、進んでいこうと思っていたら、前から足音が聞こえて一斉に構えた。


「久しぶりね。『超強化(フルパワー)』と『天穹(アーチャー)』のサンプル。」


「おっ、ホントに当たりだった。」


一人は女性のような声で、もう一人は子供っぽさが残った声をしており、どっちもパワースーツを着ていた。


「E2にE3…!」


「幹部が二人……流石にヤバいわね。」


トモも明日香も、これまで三年間も自分の異能を使いながら戦ってきたけど、複数の異能持ちの幹部は手も足も出ないから、逃げるという選択肢しかなかった。

それはもちろん、後ろに隠れた来斗と穂花も同じだった。


隙あらば逃げるのが最善の考えだが、先生とアストレアは何も感じていなさそうに話しだして近づいた。


「ようやく骨がありそうな人が出てきましたね。」


「退屈な戦いが続いていましたし、少しはやる気にさせてくれるといいですけどね。」


二人はそう言いながらトモと明日香を守るかのように前に出て、目の前に現れたE2とE3を見て、何時でも攻撃出来ますよって感じで覇気を出した。


「へぇ…面白そうね。」


「ひっさしぶりの遊び相手、楽・し・ま・せ・ろ・よ☆」


覇気を感じて強者だと感じた二人は、武器や自分の異能を出して威嚇させて、双方が出す覇気で呼吸や瞬きすら許されない状況になっていた。


「それじゃあ、(やろ)うか。」


「「いつでも?」」

イジメで負った傷は、永遠に消えません。

もし、誰かをイジメて後悔している人は、今度は誰かを助けるようにしてください。

それが、イジメ手いた人への罪滅ぼしになります。

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