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10話 魔王とデート

どうも、土曜日の午前中から外出している男です。

今の状況を一言で表します。


………今、異世界で最後に戦ったラスボスと一緒にバス停でバス待ちなう。


どうして……こうなったんだ?

何故に俺は魔王だった彼女とデートしてるんだ?

いや話し合いをしたいって思って外に出たけど、冷静に考えたら俺何してんだよ。

俺は勇者、相手は魔王。

普通はこんなに肩を一緒に並べれない形だ。

バス待ってる時間ももったいないし、周りに誰もいないから話してもいいな。


「なあ魔王……あぁいや、神崎。」


「何かしら?」


「これってさ、デート(仮)で合ってるのか?」


「うーん……そうなるね。」


「じゃあさ、何で俺たちは手をつなぎながらバスを待ってるんだ?」


今の状況を一言足すと、今現在進行形で手をつないでます。

しかもガッチリと、離れないように。

昨日まで殺し合いしていた彼女と手を繋いでるんですよ、おかしかよね?

もうこれ恋人(仮)じゃないよな?

本物の恋人関係に見えるよな?


彼女は俺が好きなんですか?

俺は正直わからないです!

相手が元魔王だから!


「確かに私たちは恋人じゃないけど、そっちは別に彼女がいるわけじゃないのよね?」


「え?まぁ…うん、そうだけど。」


「ならこの状態でも問題ないじゃない。それにこれは私がしたいからしてる事なんだよ。」


ダメだ、意味がわからん。

そして今の俺も意味がわからん。

何でときめこうとしてるんだよ!

顔が熱くなっていくのがわかっちゃってるんだよ!

つか魔王だったのにあざといな!

カワイイじゃねぇかよ!


「それとさ、そんなに他人行儀じゃないくて、私の事は真莉亜って言って。」


「あぁぁぁ……じゃあ俺も、零って呼ばせればいいのか。」


「うん、よろしくね。零君♪」


まだだ! まだときめくな!

俺はここまでチョロくないぞ!

こういう時は頭の中で念仏を唱えるのだ!


心頭滅却心頭滅却心頭滅却心頭滅却心頭滅却心頭滅却心頭滅却………


――――――よし、冷静になれた。

これでどうにかなるはずだ。


「ねぇ、零君。」


「へぇあ!? な、何でござんしょうか?」


ヤベェ……不意打ちだったから変に裏返ってしまった。

もうダメだ……おしまいだ。

完全に俺のペースは来ない。

このデートは永遠に向こうのペースで終わりそうだ。


「…ぷっ、なによ、そのリアクション。」


「殺してくれ。死ぬほど恥ずかしい。」


「大丈夫よ、気にしたら負けなんだから。それよりも、あれから聞かないんだね。」


「え? 何をだ?」


「私の事だよ。さっきから何も言わなくなっちゃったじゃん。」


神崎を見てみると、さっきから楽しそうにしていた顔とは違って、不安を抱えているような顔になっていた。

そしてその目は、悲しさも含まれていた。


さっきから思ってたけど、支配に興味がないのは本当のようだな。

急に家に来て焦ったけど、華怜や母さんに何も危害を加えてないし、それどころか普通に挨拶だけで終わったんだ。

最初よりかは見方が変わったけど、まだ多少拭いきれない部分があるから、警戒は変わんないけどな。


「まぁ華怜や母さんに何もしなかったんだし、そっちは何かしらの理由でここに来たんだろ? だったら話ができるようになったらゆっくり話してくれ。俺も、お前をあまり警戒したくないからな。」


「……うん、わかった。」


「バスが来たみたいだな。行こう。」


それから俺たちは、バスに乗って目的地であるショッピングモールに向かった。


しかし俺は、ここで最大のミスを犯してしまった。

その訳は……そのバスは休日なのにかなり人が乗ていた。

そして俺たちはわずかながらすし詰め状態になっていた。

――――――あとは分かるよな?


俺の背中には、神崎真莉亜の胸が押し付けられていた。


え、緊急事態(エマージェンシー)緊急事態発生(エマージェンシーコール)

再び俺の理性が崩壊しそうです!

唱えろ! 煩悩を殺すんだ!


煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散…


それからずっとバスの中では、自分の理性と戦いながらなんとか耐える事ができ、その戦いは……20分も続いた。


「到着っと。早速中に入ろうか。」


「あぁ……そうだな。」


白くなりそう……真っ白に…

きれいな純白な灰になりそう……

でも、何とか理性には勝てたんだ。

やり切ったんだ、俺は…

…もうゴールしてもいいよね?


「だ、大丈夫? もしかして、乗り物酔いになっちゃったの?」


「いや、そうじゃない。大丈夫だから行こうか。」


「う、うん。」


ショッピングモールについた俺たちが最初に来たのは、女性用の服屋だった。

どうやら真莉亜の服が今着ているの以外ないって事が分かり、服を買わないと明日は裸で済ませないといけないと言ってきた。

さすがにマズいと思った俺は、最初にそこから行こうと言って今に至ってます。


「これなんてどうかな?」


「うーん……こっちもよさそうじゃないか?」


「あっいいね。じゃあこれも買おうかな。」


現在彼女に合いそうな服を選んでいるけど、今ので10着目になっていて、お金は大丈夫なのかって思い、真莉亜に聞いてみたら、大丈夫の一言で終わった。

どうやらお金に至ってはあっちの女神たちがどうにかしてくれたみたいで、懐には余裕があるようだった。


まぁ余裕があるならいいか。

ぶっちゃけ買いすぎじゃねぇかって思ってたし……進めてる俺が言うのもなんだけどな。


「ふふ、やっぱり優しいよね。」


「何がだ?」


「周辺には誰もいないし言うんだけど、実は魔王だった時の私って、“獣魔召喚(じゅうましょうかん)”っていうスキルを使って、時々魔物を召喚させてあなたたちの冒険をのぞき見していたの。」


「え、そうだったの!?」


いきなりの告白に思わずその場ででかい声でリアクションしてしまった。

イカンイカン、公共の場で恥を晒すのはいけないな。

幸いこの近くに人がいなくてホントによかった。


「い、何時から見てたんだ?」


「うーん…確かこっちの情報だったら、召喚されて10日たった辺りだったかな?」


「そんな早くに見られてたんですか……」


俺はほぼ三年間を魔王にストーキングされて冒険してたのかよ。

それってもう最初から負けてるようなもんじゃん。

ずっと見られたなんて知らなかったぞ。

しかも魔法に特化したメリッサや、俺自身も気付かないなんて……


「最初のころの零君のイメージって、ただの偽善者っていうイメージがあったんだよ。だから勇者はそういった存在なんだなって思ってたけど、そのイメージが変わったのは、三ヶ月経った辺りだったな。」


「三ヶ月? 何かあったけ?」


「奴隷を運んでた盗賊、『レッドスター』。」


「あっ、あ゛ぁぁぁぁ……」


俺は思い出してその場で蹲った。

何故ならそれは思い出したくない俺の黒歴史だったからだ。


俺が勇者召喚をされて、初めてやらかした事件。

もう思い出さないようにしていたのに、まさかここでまた掘り返す羽目になるとはな。


「思い出した?」


「ハイィ……オモイダシマシタ…」


「あの時の零君ってすごかったよねぇ。ものすごい殺意で盗賊に襲い掛かって、無差別に虐殺(・・)してたんだから。」


「ぬぉぉぉぉぉ…! やめてくれぇぇぇ……。思い出したくないんだ。あの時の俺はマジでどうかしてたんだよォォ……」


あの時の俺は、ホンットにどうかしてた。


召喚されてから三ヶ月経った時、俺は師匠と一緒に近くの森にまで来ていた時だった。

森の奥で数人の男の声が聞こえて、師匠と一緒にこっそり陰から見ていたら、そこにいたのが人間や亜人の奴隷を檻の中に入れて馬車で運んでた盗賊の姿だった。

しかもその盗賊たちは、ただの金目当てで奴隷を捕まえてたのを笑いながらしゃべっていて、それを聞いてた俺がブチ切れて師匠の指示を無視して突っ込んで、その場にいた盗賊…レッドスターを剣や魔法で虐殺した。


異世界で初めて人を殺して、初めて俺が人殺しになった時だった。

その後は師匠から一人で突っ込んだ事で説教されただけで、他は何もなかった。

別に俺が勇者だったからじゃなくて、その殺したレッドスターという盗賊が、王都ではブラックリストにされて、賞金首がかけられていたからだ。


俺が倒したのは公表されずに、魔物に襲われたで済んだけど、俺の中では後悔しても遅い思い出でしかなかった。


「まぁそんな事もあっんたけど、もう一つあってね。零君の旅で仲間を楽しくしゃべっているのが羨ましくなって、もし人間だったらそこに入りたかったんだよ。私はずっと魔王だったから、友達や仲間とか全然いなかったんだよね。だからもし人間になれたらあなたみたいな人のそばにいたいなって思ったの。」


「そ、そうだったんだな。」


なんていうか、俺とは違って苦労してたんだな。

俺とは違う苦労……ある意味似てるのかもな。


「まさか、それが理由で俺のところに来たのか?」


「ううん、違うわ。本当の理由は別……よし決めた。このデートが終わったら、私の過去を全部話すよ。だからまずは、この服の会計にでも行こうか。」


そう言ってカゴに入れてた服を持ってレジに向かい、俺もその後を追うように付いて行った。

俺は彼女が会計をしている間に、さっきの言葉の意味を考えた。


「真莉亜の過去……魔王になる経緯か?」


いや違うか。

もしかしてそれよりも前か。

さっきから見ていて思ったけど、彼女はこっちの暮らしに慣れすぎている(・・・・・・・)


バスといいレジでの会計といい、やり方が普通過ぎる。

異世界の魔王なら、地球(こっち)は魔境と同じだ。

知らなくて当然だ。

でも今の彼女は、普通にお金を払って、普通に人と話している。


今の状況を見ていてほぼ確信になった。

彼女はもしかしなくても、『転生者(・・・)』。

しかも地球(こっち)からの。


「これについても、聞いてみるしかないな。俺の不安を無くすためにも。」


「お待たせ。いやぁ~買った買った。定員さんがすごい顔してたよ。」


「そりゃそうだろうな、この量を見れば。それより貸しな。半分持ってやるから。」


「えぇいいよ。どうせ自分のだし、自分で持ってるよ。」


「男の俺が手ぶらで女のお前がこんな大量の荷物を持ってたら、明らかに俺が悪い奴にしか見えなくなるだろうが。それに後で俺のスキルで収納しるんだし、持ったほうがいいだろ?」


俺が手を伸ばそうとしても、真莉亜は問題ないって顔で何故かドヤ顔をしていた。


「心配ご無用。“気配遮断”を使用。そして“収納庫(アイテムボックス)”にインっと。」


真莉亜を囲うようにベールが張られると、俺と同じように収納庫(アイテムボックス)を使って買った服を全部その中に入れていった。


……ん?

え?

今スキルを使った?

使ってたよな?


「お、お前もまさか……スキルが使えるのか…?」


「そうだよ。あれ? 向こうから聞いてなかったの?」


「いやッ……まったく。」


「……えぇ?」


真莉亜は俺の答えを聞いて呆然とすると、理解できたのか溜息を吐いた。


「私を担当した女神もそうだけど、零君の女神も似たようなものなのね。」


「担当? ティファニスさん以外の女神が担当したのか?」


「ティファニスっていうのは、零君の担当していた女神なの?」


「あぁ、そうだ。」


まぁ女神は別に一柱(ひとり)じゃないから、他の女神がいてもおかしくはないか。

ティファニスさんも他の女神に対して愚痴とか言ってたし。


真莉亜は顔を少しだけ逸らして考えだし、何かをぶつぶつ言い始めた。


「他の女神が担当して、あの女神じゃなかった……もしかして、もういないのかもしれないのか……」


「どうかしたのか?」


「あぁごめんなさい。こっちの事だから気にしないで。」


真莉亜は我に返って俺のほうを向くと、両手を振って気をそらした。


やっぱり俺の読みは当たってるのか?

隠すどころか堂々としているし、本人も隠す気はないのかもな。


俺がそう思っていると、腹から空腹の合図であるサイレンが鳴って、スマホの待ち受けで時間を確認した。


「もう12時近くになっていたのね。服も買えたし、少し早いけどお昼にしない?」


「そうだな。少し歩き回っていたから腹減ってきていたし、そうしようか。」


真莉亜が服を収納庫(アイテムボックス)に入れ終えるのを待って、それからはまた手をつないで一緒にフードコートを目指した。


この後話せるようになるだろうし、食事をしながら聞いてみるとするかな。

もう答えは出てるようなものだけど、考えるのは嫌だからな。

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