96話 特訓は必須なんです。
「“鮮血流刃線”!」
「“弐の太刀改 大魔猿”!」
エミリアと俺の攻撃が空中でぶつかり合って、ほぼ互角の威力で爆発を起こした。
俺は“夢の世界”に入ってから別荘に向かって、空いてる奴等で俺の相手をしてくれと頼んだら、エミリアやアストレアを筆頭に、サヨリや竜人姉妹も付き合ってくれると言ってくれて、五人連続で組手形式で相手している状態だ。
ちなみにエミリアは三人目で、先に相手してくれたアリアとシャルルは終わって別荘へと帰って行ってた。
「わたくしの攻撃を相殺しきるとは、先ほどの剣技はかなり強力になられているわね。」
「そりゃあ魔王になっている以上、前よりも強化されてなかったら困るからな。」
零とエミリアはお互いに羽を展開してから空中戦でぶつかっており、すでに戦ってから15分は経っていた。
(始める前から何度か剣を振っていたけど、明らかに前よりも強化されているのが実感させられるな。)
“無骨”が“亜空斬”みたいに強化されているのと同じで、他の剣技もさらに強くさせる事が出来た。
現にエミリアの攻撃を防いだ剣技も、風魔法を斬撃に変えて放つ“弐の太刀”はさらに進化して、風が風を切る斬撃へと進化を遂げた技となった。
「今度はこっちの番だ。極限雷魔法“未知なる轟雷”」
零はエミリアに向けて雷を放ったが、当たる直前で俺は“虚空門”をエミリアの前に展開して、自分が放った雷を門の中に入れ込んだ。
「は?」
エミリアもそうだけど、その場にいて見ていた全員も零が何をしたのか分かっていなかった。
だけど零は顔をニヤつかせてから指パッチンをした。
するとエミリアの周辺に20個も虚空門を展開させ、エミリアは零が何をするのかが分かったのと同時に焦って、羽を全身で覆い隠すかのように最大限の防御に専念した。
「駆け抜けろ、霹靂。」
門の一つからさっき取り込んだ雷が出てきてエミリアを貫くと、また別の門に入って行って、それが連続で続いてエミリアに襲い掛かり、まるで雲の中で雷が走るかのように四方八方に雷が走って行ってた。
「ケホッ…―――――今のは効いたわね。」
零は雷が消滅したのを確認してから門を閉じると、全力で防御していたエミリアが羽を広げて零の方を見た。
久しぶりに効いた攻撃だったのか、その顔には怒りはなく、むしろ嬉しそうな表情をしていた。
「手加減なしの雷だったけど、直撃を受けても立つなんて思ってもなかったよ。」
「防御してなかったら立つのは無理だったでしょうけどね。でもこれだけは言っとくけど、今のは王でも耐えきれるのは難しかったわよ。」
「そりゃあ良かった。門の活用性を高めるためにさっき考えたんだけど、エミリアからそれが聞けたなら合格点だな。」
零は嬉しそうにして自分の掌に出した雷を見ていると、エミリアが下に降りて行くのが分かって、零もその後を追うかのように降下した。
「今ので流石に体に来たから、あとは後ろの二人に任せましょうか。わたくしは疲れましたので温泉に浸かって来るわね。」
「あぁ。わざわざありがとな、俺の特訓に付き合ってもらって。」
「別にいいわよ。わたくしも楽しめたので、また相手をしてあげるわ。」
エミリアはそう言って別荘の方へ向かっていき、零も流石に疲れたのか、“収納庫”から椅子を取り出してから休憩をした。
「大分コツが掴めてきたな。」
「魔王になったからどうだろうなと思っていたが、想像以上に強化されているようだな、マスター。」
サヨリは零にタオルと水を渡して、それを受け取った零はタオルで汗を拭いてから水を飲んだ。
「ふぅ――…こうやって本気で体を動かしていて思ったけど、やはり半人だけで生きてきた時よりも体の重さが全然違うからな。」
「でもレイレイ、はっきり言ってかなり強くなってるよ。多分今の状態なら、本気の私と戦えるんじゃないの?」
「どうだろうなぁ。あの時のお前は手加減してアレだったから、今の俺でどこまでいけるか分かんねぇな。あとレイレイ言うな。」
アストレアにツッコミを入れてたらやたら疲れそうだし、これ以上面倒なのはごめんだからやめよう。
「ところでマスター。魔王になったのに、その羽は一体なんなんだ?」
俺は羽を直していなかったからか、サヨリは俺の黒い天使の羽を見て指を指していた。
「あぁ、これか。これは俺にも分かんなくてな。特に害はないからそのままにしてたんだ。」
「多分それは零ちゃんが勇者だったから、その影響が出てるかもしれないね。」
「あ、照。」
リラにたのんで案内をして貰ってた照が俺の所にやって来て、俺の羽の原因を教えてくれた。
「フォルトナ様、マスターの羽は勇者の力が関わっているのですか?」
「確実じゃないからどうかは分からないけど、予想として言っただけよ。」
「勇者ねぇ……今はそう思ってた方が妥当かな。」
「ぶっちゃけレイレイのそれは天使族の私でも分からないのでぇ〜、お蔵入りさせるのをおすすめしま〜す。」
アストレアの言い方にちょっとイラッてしたけど、確かに原因が分かんない以上、どうしようも出来ないし仕方ないか。
「それよりどうだった? うちの従者が造った別荘の中は?」
「完璧すぎだよ。あれを全部あの子たちがしたとは到底思えないわね。」
「やっぱお前もそう思うよな。最初の俺たちもそうだったから。」
どうやら照も、リラたちが造ってみせたあの別荘を見て、すごすぎてドン引きしていたようだった。
まぁこれは俺たちもそうだったから、あえて何も言わない方がいいな。
「それにしても、真莉亜と夏奈は別々で特訓するって言ってたけど、何してるんだろうなぁ?」
「……どうだろうねぇ。私からしたら、零ちゃんと似たような事をしてるかもしれないね。」
「そっか。」
まぁ確かに、今の真莉亜は魔人と似たような感じなだけで、実際は普通の人間なんだ。
俺が魔王になってから焦っているのかもしれないけど、俺からしてら真莉亜もそうだけど、夏奈もあまり無茶をして欲しくないって願っている自分がいるんだよなぁ……彼氏として。
「それよりも、お前はどうするんだ?」
「え? どうするって?」
「ティファニスさんたちとだよ。再会した方が今後のためになるんじゃないか?」
俺の言った事に照は顔を顰めたけど、すぐに元に戻して、考えながら話し出した。
「……はっきり言って、私は彼女たちに会っていいのか分からないのよ。勝手な都合で転生して、自分の責務から逃げたような感じだから怖いの。」
「それは大丈夫だろう。前に聞いたけど、誰もお前の事を責めてないって言ってたし、むしろかなり心配してたんだぞ。」
「うぅ……でも…」
「はぁ……まぁお前がどうするかは自分で決めろ。俺は何も言わないからよ。」
「……うん。」
照は俯いて返事をしていたけど、まだ分からないせいか、暗い表情をしていたのが分かった。
俺はそれを見て内心でまた溜息を吐くと、照の頭に手を置いて撫でてやった。
「あまり考えすぎるな。お前は自分の意思で、これからを決めていきな。誰もお前を、責めたりはしないんだからよ。」
「……零ちゃん、私の事なのにそこまで言ってくれるんだね。」
「当たり前だろ。俺はお前の従兄弟なんだから、助けるのは当然だろうが。」
俺は元勇者であり現魔王だし、照の前世が神だったって言っても別に俺にとっちゃあどうでもいいし、今の俺たちは従兄弟同士である以上、助けるのは当たり前なんだ。
「そっか……ふふっ、ありがとう。」
「少しは、気分も軽くなったか?」
「そうだね。よし決めた、私会ってくる。」
「おっ、急だな。」
「考えるのはもうやめだ! 会って自分の心の中を全部さらけ出してくる。」
急に元気になったと思ったら、今度はティファニスさんに会いに行ってくると言い出し、今にも行こうと勢いづいていた。
ていうか、こいつどうやって神界に行く気だ?
「あの、どうやって神界に行かれるのですか?」
「えっ、そりゃあ神格を使ってぇ……」
「…………」
「し、神格ないんだった。」
アホだ、アホがここにいる。
少し前に自分で神格捨てたのを忘れてやがった。
「お前……」
「待って見ないで! 憐れんだ目で私を見ないで!」
自分で言ってから恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしてしゃがみこんでしまった。
まぁこれに至っては覚えていなかった自分のせいだから自業自得でもあるけど、せめて過去の自分が何をしてここにいるのかはちゃんと把握しておけよ。
「さてと、それじゃあ休憩もやめて再開しますかね。サヨリ、お前が先に相手してくれ。」
「私からか。わかったよ。」
「待ってよレイレイ。何で私が最後なんだよ?」
「お前とは本腰入れてから相手しないといけねぇからな。それに今回は本気のお前とやって、どこまで相手できるか試してみたいしな。」
「え、本気でやっていいの?」
本気と言ったから嬉しいのか、アストレアは目をキラキラしながら俺を見てきた。
「今回は特別だ。周りに被害を出さない程度の距離でだったら、許してやるよ。」
「来たよ、来たよ久し振りの本気の私ちゃん! そうとなったら早速ストレッチを済ませようではないか!」
そう言ってアストレアは柔軟をし始めて、俺も早めに体を馴染ませないといけないから、サヨリを連れて特訓を再開した。
「では始めようかマスター。本気の剣技、魅せてもらうぞ。」
「あぁ。存分に相手をしてやるよ。」
俺たちは剣を抜いてから構え、攻めの態勢になって見合った。
「「いざ、参る!」」
**********
一方“夢の世界”のとある場所では、真莉亜の特訓に付き合うと言って付いて来た夏奈と、時間に余裕があって付き添いをしたリベルの三人が話をしていた。
「ねぇ真莉亜ちゃん、本当に作り直しちゃうの?」
「うん。元々これは過去を忘れないようにするためにしてたけど、昨日の襲撃で自分の弱さを知ったから、これはもう切り離したいんだよ。」
今彼女たちは、真莉亜が使っている魔装の作り直しとある事をしたいからと言って零と別れ、二人はそれに付き合おうと思い付いて来たのだ。
「マリア様の希望ですから止めませんけど、レイ様には伝えなくてよろしかったのですか?」
「うん。魔装はまだしも、もう一つの方は反対するだろうから、あえて黙っておこうって思ったの。」
真莉亜が考えているもう一つというのは、零が彼女になってほしくないと思っている事でもあり、その行為は再び自分を陥れる事になる。
それ故に零は、彼女がもう苦しんでほしくないと思い、その行為を決してやって欲しくないと思っているのだ。
「でもいいの? もしそれをやって、白崎君が真莉亜ちゃんを嫌いになるような事になったりしない?」
「それは分からないわ。でも零君は私を見たら、たぶん自分のせいだって思ってしまうと思うんだよ。だって零君は誰よりも優しいんだから。」
真莉亜は零を見ているから知っている。
善人には平等な救済を、悪人には平等な制裁を。
彼女はその行動を全部見てきていたからこそ、零がどれだけ優しいのかをよく知っていた。
「だからもし、零君に嫌われそうになったら……二人共、頼んでいい?」
「「当然よ(です)。」」
真莉亜の頼みを聞いた二人は一瞬で同じ考えをして、同じ答えを言った。
理由は簡単、二人の事が好きだからだ。
「ありがとう。それじゃあ早速、魔装のモデルから話していこうか。」
**********
『お疲れ~』
特訓を終えて別荘で休んでいる状態の俺たちは、元の場所に帰る前にのんびり話をしあってから帰ろうとなって、今はソファーに座って菓子や飲み物をテーブルに置いて乾杯をした。
「零ちゃんの方の特訓は今日で大丈夫そうだけど、そっちはどうなの?」
「私はまだ時間が掛かりそうだから、明日はごめんけど零君一人で頼んでもいいかな?」
「俺は別にいいけど、そっちは時間がそんなに掛かりそうなのか?」
「うん。だからごめんけど、明日は頼んでもいい?」
「わかった。そっちも無理はするなよ。」
「うん、わかった。」
明日真莉亜が抜けるんだとしたら、俺とシルヴィアで行動しかないな。
ぶっちゃけ誰かを連れて行ってもいいけど、俺の判断で血祭りになるかならないかが決まってしまうし、そう言ったとこを含めたら手慣れてる奴がいいよなぁ……
「でしたら、私が一緒に行きます。」
「お前がか、アジュール?」
俺たちの話を聞いていたのか、階段から降りてきていたアジュールの方を向いた。
確かリベルが召喚の時に、彼女は好戦的じゃないって言ってたけど、まさか自分から付いて来ると言ってきたのは意外だったな。
「念のために聞くけど、理由は?」
「大方の話はリベルから聞いておりましたけど、少々その異能者に興味を持ったというのと、主人に自分の実力を見てもらいたいという我儘な理由でございます。」
「確かにお前の実力は見てないから今の内に見ておきたいって思うけど、だったら何で特訓の時にお前は付いて来なかったんだ?」
「その件につきましては、皆さんとはこれから共に暮らす仲間として早めに慣れておきたいと思い、他の皆さんと一緒に交流しておりました。」
「…シャルル、それは本当か?」
「はい。アジュールさんの言ってる事は本当でございます。」
真莉亜の横にいたシャルルに聞いてみると、どうやらアジュールの言ってる事は本当だったみたいで、先に別荘に帰った後も一緒に話したりお菓子作りをしていたみたいで、現に目の前にある菓子の半分はアジュールが作ったみたいだった。
「そうゆう事だったらしょうがねぇか。じゃあ明日の用事は、シルヴィアとアジュールの二人が付いて来い。」
「ん、わかった。」
「かしこまりました。」
明日のメンバーが決まったところで、リラが母さんと華怜を連れて来てくれて、この後の事を含めた話を軽くしてから、明日のために先に就寝した。
投稿が進まん!
前のやり方だったらギリギリの状態がずっと続いていただろう。




