94話 新生勇者メンバー加入
「「「ごちそうさまでした。」」」
シルヴィアはリラに頼んでいた服を着ると、俺が作った料理を食べ始め、俺たちも途中だったから一緒に食べてのんびりしていた。
「久しぶりのお兄様の料理、すごく美味しかったです。」
「お粗末様。」
シルヴィアは満足した表情で俺の料理を食べきり、コーヒーを飲んで幸せな時間を堪能していた。
「それじゃあ、俺も汗をかいてたし風呂に入ってくるか。」
「お兄様、お風呂から出てきたら話をさせてください。」
「了解。リラに真莉亜、悪いけど俺が風呂に入ってる間、シルヴィアを頼んだよ。」
「分かりました。」
「了解。」
俺は二人に頼んで風呂に入って汗を流して、暫く浴槽に入って疲れを取ってから風呂から出た。
本来なら俺も温泉を堪能したかったけど、今日は汗を流すだけだったし、二人を待たせる訳にもいかなかったから、今日は我慢してまた次の機会に楽しませてもらう事にした。
「悪い二人とも。待たせてしまった――――」
「それじゃあお兄様とはまだキスをしていないのですか?」
「う、うん。それにまだ付き合いだしたのも2週間前だから、少し早いかなって思うし。」
「甘いですよお姉様。そんな甘い考えをしていたらお兄様は他の女性を選んでしまって、お姉様を捨ててしまい恐れがありますよ。」
「うぅ……でも…」
何か……俺が風呂に入ってる間に二人がソファーで恋愛相談を話しているみたいになってるんですけど。
いやまぁ二人の距離が近くなって特に血生臭い事になっていないから俺は嬉しいけど、何故か俺との関係でシルヴィアがずっと真莉亜に急接近しては話しかけて、ずっと話していたのか、真莉亜の顔は真っ赤になってた。
てか真莉亜、お前夏奈との二股関係にさせた首謀者なのに、何で自分の恋愛沙汰になって顔を真っ赤にさせてるんだよ!
一番の元凶が顔を真っ赤にさせる権利なんて普通はないんだぞ!
お前夏奈の時はあんなに調子よかったのに、他者に言われたらそんなに恥ずかしがるなんておかしいんだからな!
(てかシルヴィアのあれは恋のキューピットか何かか? 明らかに俺と真莉亜の恋沙汰を応援しているような感じに見えるけど。)
そんな事を思いながらそれを見ていたけど、流石に真莉亜がかわいそうになってきたし、シルヴィアの件で話さないといけないから止めに入るか。
「それくらいにしてやれシルヴィア。あと真莉亜、夏奈の件があったのにその赤面した顔はどうかと思うぞ。」
「あ、お兄様。」
「うぅ……ごめん零君。今になってあの時の事を反省しています。」
どうやら真莉亜は自分の犯した罪に気付いたみたいで、手で隠していても分かるくらいに顔を真っ赤にさせていて、シルヴィアは俺に近づいて俺の手を握ってきた。
「お兄様、絶対にお姉様と結婚してね。」
「いや待て、どうしてそうなった。」
俺はシルヴィアの第一声の意味が全く分からなかったから、何でそんな事になったのか説明を求めた。
「お兄様がお風呂に行ってる間に私なりにお姉様の事を聞き出していましたが、魔王とは思えないくらいに純情な心を持っていたので合格だと見込みました。」
「だったら何でそれから結婚の話になるんだ?」
「私のお姉様になって欲しいからです!」
「いやお前の願望かよ。恋のキューピットと思ってしまった俺が馬鹿だったよ。」
そう言えばコイツ、アイリスの時も似たような事をしていたし、結果としてはアイリスが空回りしてしまってから無効になっちまったけど、どんだけ面倒事を増やせば気が済むんだろうなぁ…このお馬鹿さんは。
「んでシルヴィア、確認するけどお前は空間の裂け目を通ってパラディエスから地球に来たんだよな?」
「うん。王都でいつも通り鍛錬していて、休憩しようとしてたら急に目の前に裂け目ができて吸い込まれたって感じだったよ。」
「その時お前以外いなかったのか?」
「ううん、いなかった。」
「そっか。そんじゃあもう一人の方は異世界人じゃないのかもしれんな。」
いや、別に異世界人じゃないと決めつけるのは違うか。
空間が裂ける現象は時間や場所は決まってないし、同時に別々に発生して飲み込まれたって事もあり得るっちゃあ有り得る。
何より先生の言い方からしたら戦闘慣れしてるような感じに見えるし、異世界人の確率は五分五分ってところだな。
「にしてもお前、鍛錬中の時で良かったよな。無防備な状態で地球に来てたら、どうなっていたか分からなかったぞ。」
「うん、そればかりは本当に良かったと思ってるよ。槍と剣がなかったら後々大変だった。」
シルヴィアはそう言って槍と剣を出して見せてきたけど、どっちもガタが来ている感じでボロボロになっていて、剣に至っては刃こぼれが酷い状態だった。
「どっちも前から愛用してきていたから、かなりボロボロだな。」
「うん。近いうちに新しいのを探そうとしていたけど、お兄様の世界じゃあ新しい武器は見つけられない。」
シルヴィアはボロボロになった槍と剣を触りながら落ち込んだけど、俺はすぐにそれの解決策を言った。
「いや、それはどうにかできるぞ。」
「どうして?」
「槍はティファニスさんから貰った槍でどうにかなるだろうし、剣はいっその事“武器錬成”でどうにかできるからな。」
「……お兄様、栄光神様と仲良かったの?」
「俺を異世界召喚した際の担当者がティファニスさんだったからな。俺がこっちに戻ってきてもやらないといけない仕事ができた時も、できる限りのサポートをしてくれているからな。」
「仕事?」
あぁいけね、確かパラディエス側の方は俺の事情なども知らなければ、今でも俺がこっちで戦っているなんて思ってもいないだろうし、どうせ隠してもすぐにバレるから今の内に話しておくか。
「シルヴィアもそうだけど、異世界の方は女神たち以外は誰も知らないから教えておくけど、実は今でもこの世界で俺は戦ってるんだよ。」
俺がそう言うと、シルヴィアは表情を全く変えずに首を傾げた。
「お兄様、前に来てた話と全然違う。」
「前って……あぁ、俺が住んでる世界は平和な世界だって言ってた時か。確かに本来なら俺が住んでる世界は平和だけど、今は平和からかけ離れている状態だな。」
「どういう事?」
俺はシルヴィアに今の現状と、俺たちの目的について隠さずに全部話した。
本当なら誰にも話さないで秘密にしないといけないけど、シルヴィアは感情を滅多に表に出さない代わりに観察眼は以上に高く、槍術や剣術も持ってすぐに使いこなせたりと、生まれ持ったセンスは誰もが高く評価するほどの実力者だ。
だからこそ真莉亜も一目見ただけで普通じゃないと分かってしまったし、今の俺も多分もう気付いているはずだから、その辺りについても全部話しておかないと何時までも聞いて来るから諦めるしかないもんな。
「という訳で、今の俺は勇者でもありながら魔王であって、こっちに戻ってきても大罪の悪魔を持った魔人たちと戦っているって訳だ。」
「ん、成程分かった。」
シルヴィアはコーヒーを飲みながら俺の話をちゃんと聞いてくれて、これからどうしようか考えていた。
「シルヴィア、お前がパラディエスに戻りたいっていうなら構わないし、このまま地球で俺たちと一緒に行動して最後まで付き合うっていうのも構わない。俺は止めないから、お前の本音を言ってくれ。」
「私は……」
シルヴィアは眼を閉じて考えていたが、すぐに目を開いて俺の方を向いて来た。
「私も本当ならお兄様たちと一緒に冒険したかった。でも私は、あの時にはすでに自分のあるべき場所があったから最後までついて行けなかった。だから正直、一緒に行きたいって言えなかった自分に対してずっと後悔していた。」
「確かにお前はあの時王都に戻るって言って、結局付いて来なかったもんな。」
「お兄様、もし私がここにいたいって言ったら、迷惑だったりする?」
シルヴィアは上目遣いで俺を見てきて、目には涙が今にも零れそうな感じになってた。
(お前はやっぱり、今でもずっと我慢してるんだな。)
シルヴィアは親に捨てられてずっと一人ぼっちだったからか、我が儘を言ったりしなかったし、俺に甘えてもそこには何かしら境界線を入れて、そこまでしか踏み出してこないって感じだたから、今のシルヴィアを見て俺はすぐにそれが理解できた。
「俺はさっきいたはずだ、自分の本音を言ってみろって。」
「………」
「心配するな。誰もお前を束縛しないし、もう過去の自分を捨てたんだろ。だからもう我慢をしなくてもいいだぞ。」
「―――――…たい。」
「ん?」
「一緒にいたい! お兄様と一緒にいたい!」
ついに本音を言ってくれたシルヴィアは、俺と一緒にいたいと言ってきたのに嬉しくなって、頭に手を置いて撫でてあげた。
「やっと本音を言ってくれたな。」
「お兄様……」
「なら付いて来な。新生勇者メンバーの一員として、歓迎するぞ。」
「はい!」
シルヴィアは嬉しいあまり俺に抱き着いて来て、ギューと俺にしがみついて離れないような感じだったから、俺は何もせずに頭を撫で続けた。
それを見ていた真莉亜は羨ましかったのか、俺の横に座ってきてから体を押し付けてきた。
「えっと、真莉亜?」
「ごめん、なんか羨ましくなったから…このままで居らせて。」
「‥‥‥‥」
惚れてまうやろ―――――――!!!
こんな仕草されたら完全に惚れてまうじゃねぇかよ!!
(ヤバい……今すぐにでも抱きつきたい。…でも我慢だ!)
今はシルヴィアの慰めでカッコつけてるような感じだから、ここで真莉亜の方に行けばカッコ悪くなってしまう。
ここは冷静に対処しつつ、真莉亜にも褒美を与えるのが妥当だな。
「何言ってるんだ。彼女なんだから少しくらい甘えなよ。」
「……うん、ありがとう。」
ふん…決まったぜ。
真莉亜の顔は見えなかったけど、明らかに嬉しそうな感じになって俺の体に擦り寄ってきたから、どうやら気分を損ねる事はなかったみたいだ。
「それじゃあシルヴィア、新しい槍と剣を準備するからちょっといいか?」
「グスッ……はい。」
まだ泣いてたから申し訳なかったけど、前が塞がっていたらどうしようも出来なかったから、流石にどいてもらうようにした。
「まずは槍だけど、形がかなり変わるし俺も使った事がないからどうかは分からないけど、お前なら使えると思うぞ。」
そう言って“収納庫”から出した槍は、全体が黒く輝いていて、あらゆる全てを貫くかのような姿をしていた。
「何だかすごい槍ですね。」
「2代目勇者のパーティの一人が使っていた槍で、“絶槍キュリオス”。天をも貫いたとされる槍らしいんだよ。」
「絶槍キュリオス……普通の槍に見えるのに、そこにあるだけですごい迫力。」
「俺も真莉亜も初めてこれを見た時は普通の槍とは違うって思ってしまったよ。一回ここで振ってみたらどうだ?」
「うん、試してみる。」
シルヴィアは俺から槍を受け取ると、リビングの広い場所に立って絶槍を何度か振ってみせた。
見た感じは重そうにも見えるけど、それもすぐに慣れてきたのか、簡単に馴染ませる事ができた。
「どうだ? 使えなさそうだったら、俺が作るけど。」
「……少し重いし、私にはちょっと厳しいです。」
「そっか。なら仕方ねぇか。」
俺はシルヴィアから槍をもらって、それを“収納庫”の中にしまい込んだ。
「ごめんなさい、お兄様。」
「謝る必要なねぇよ。それより待ってな、槍と剣は俺が作ってやるから。」
「あれ? 零君って“武器錬成”なんて使えないよね?」
ん? 何で真莉亜が聞いて……ってそうだ、あの時いなかったから知らないのか。
「実は魔王化した時に使えるようになったんだよ。『自動改変』で俺のスキルもかなり変わっちまったからな。」
「そうなんだ。だったらもう私は零君から頼まれることはないのね。」
「いや、それは分からねぇから頼む時は頼むよ。」
俺は早速シルヴィアの槍と剣を作ろうとした時に、ある事を思い出して“収納庫”からあるものを取り出した。
「せっかく作るなら、ちょっと頑丈なものを作ってみようかな。」
「それって、金剛魔鉄?」
「あぁ。昔アリアとシャルルの故郷であるバストリア鉱山に行った時に貰ったやつでな。使い道が特になかったからずっと持ってたんだよ。」
俺が取り出した鉱石は、冒険をしている時にバストリア鉱山に立ち寄った時があって、そこで依頼をした時に金剛魔鉄を貰ってからずっと大切に持ってたんだけど、怪銃と同じで結局使わずに封印していたけど、ここでしかもう使い道はないだろうし、シルヴィアにはずっと使ってもらいたいからかなり丈夫な槍を作ってやるかな。
「それじゃあやってみるか。“武器錬成”」
槍の形はそうだなぁ―――――…シルヴィアが使ってた槍と同じ形にして、穂を普通の鉄から金剛魔鉄に変えてみるか。
「よし、できた!」
初めての“武器錬成”は無事に成功できて、手にはシルヴィアが愛用していた槍と同じ槍があった。
「早速だけどシルヴィア、一回振ってみてくれ。」
「うん。」
シルヴィアは俺から槍を貰って、さっきと同じように何度か槍を振って感触を確かめた。
「どうだ?」
「うん、全然問題ない。これなら使える。」
「そっか、よかった。」
シルヴィアからの言葉で安堵した俺は、すぐさま剣も作り出して、普通の剣じゃあまたすぐにボロボロになるだろうし、金剛魔鉄は谷内で全部使ったるからないし、真莉亜が前にやってた魔剣を俺も作ってみるか。
そうして俺は槍と同じようにシルヴィアの剣と同じ剣を作りだして、自分の魔力を調整しながら剣に流していって、無事に魔剣を作る事ができた。
「零君、もしかして魔剣を作ったの?」
「そ、お前の魔剣と同じやり方でな。魔力も大幅に増えたから無事に完成したよ。」
「お兄様、すごい。」
俺はシルヴィアに剣を渡してから振ってもらって、大丈夫だとわかってすぐに俺たちは別荘を後にして、異能者狩りを再開した。
梅雨入りしてるけど快晴の空を見てたらホントに梅雨入りしてるって思ってしまった




