93話 勇者としての仕事
「うわあああああああああああ!!」
「熱い熱い熱い!! 誰か助けて!!」
次に見つけた異能者は真莉亜が相手をして、最大火力の炎を投げつけてあっさり勝って、数人いた異能者は全員灰になってこの世から消滅した。
「なんか特に強いと感じる事なく勝ってるわね。」
「多分俺たちが思っているような強さはなさそうだし、クラッシュが特別だったかもしれないな。」
本人も幹部に近いって自称していたけど、確かにあの感じだったら幹部に近かったのかもしれないな。
まぁ最後は自分で命を捨てて魔物になっちゃったけど、結果としてはクラッシュが強かったのは証明できたし、スコーピオンの下っ端がどのくらいのレベルなのかも把握はできたな。
「この辺りにはもういなさそうだし、別の場所に移動しよう。」
「そうだね。後は何処に行く?」
「そうだな――――…今度はあっちにいてみようか。」
そう言って今度は別の場所に向かって歩き出し、しばらく道なりに進んで行ってたら、草むらの辺りから唸り声が聞こえだして俺と真莉亜は止まって警戒したけど、全く出てこようとしなかったから行ってみると、そこには十数人の男が縄で縛られていた。
「なんだこれ?」
「もしかして、スコーピオンの異能者を襲ってからここに縛って置いたって事じゃないよね?」
「さぁ―――……とりあえず一人だけ回復させてから尋問してみるか。」
唸り声を出してた一人の男を道端に引きずってから気にもたれかかるかのように置いて、腕にあった傷を回復させてから顔を何回か叩くと、男は起きて俺たちを見てきた。
「うぅぅ……俺は…?」
男はまだ意識が回復してないのか、まだ寝ぼけているかのような感じだった。
「寝起き早々悪いけど、アンタはスコーピオンの駒でいいんだな?」
「お、お前らは一体?」
「異能者…とだけ言っておくよ。それよりちょっと質問をしていいか?」
「――――何だ?」
「アンタらは何でここで縛られてるんだ?」
俺の質問に男は考えるかのように首を傾げると、何かを思い出したかのように俺たちを見てきた。
「――――一人の女の子にやられた。」
「「女の子?」」
男の言った事に俺たちは首を傾げると、男はそれからポツリポツリと話し出した。
「夜に人質を連れてこいって言われて町に向かっていたら、いきなり何処からか現れて来て俺たちを襲うと、そのまま縄で縛って何処か行きやがった。」
「……そうか。」
男が人質を連れてこいって言った時点で許せねぇと思って刀で首を切ろうとしたが、『救済王ノ意志』の中にある“無慈悲の断罪”が男を黒く染めていなかったのに気付いて、俺は刀を持つのをやめて、男にある事を聞いた。
「なぁアンタ、どうしてスコーピオンなんかに入っちまったんだ?」
もし“無慈悲な断罪”の通りなら、この男はまだ罪を持っていない状態であるから、無罪の男がどうしてこんな血濡れた組織にいるのか疑問を投げた。
すると男は悔しそうに歯を食いしばりだして、恨めしそうな顔で言ってきた。
「本当は俺だってこんな組織に入りたくなかった! だけど妹が病気でお金がねぇからこうしてでもお金を稼がねぇと妹が助けられねぇんだよ!」
「その妹さんは、今でも病院で入院してるのか?」
「あぁ……俺が罪人になるのは構わねぇ。それで妹が助けられるならそうするしかねぇんだよ。」
「……そうか。」
俺は男の縄をナイフで切ると、男の妹さんの詳細を一つずつ聞いて言った。
「その妹さんだけど、どんな病気なんだ?」
「は? 何でそんな事をお前らなんかに…」
「もし知ってる病気だったら、俺でも助けられるかもしれねぇからだよ。」
「――――ホントか?」
男の顔色がだんだん良くなっていって、俺の顔をマジマジと見てきた。
俺はその顔を見ていて、懐かしさと忘れかけていた自分を思い出していた。
(そうだよな……俺は元でも勇者何だから、こんな奴なんか放っておけねぇ主義だったもんな。)
パラディエスでは何人もの人を救い、時には苦しんでいる人のために無茶な思いをして救ったりとしてきたんだ。
そんな事を前までは当たり前にしてきたんだから、何時までも罪人に対して憎悪を持たないで、これくらいはしとけっての。
「お前、ホントに妹を救えるのか?」
「確証はないけど、最低限の仕事はしてみせるよ。」
男は俺の言葉を聞いて覚悟を決めたのか、命乞いをするかのように俺の服を掴んで頼み込んできた。
「頼む! 俺の妹を……助けてくれ!」
「その言葉、承った。」
俺はすぐに妹さんの詳細を詳しく聞いた。
「異能者に襲われて、身体全体に痣みたいなのが出たまま意識不明……か。」
「何か分かったりするのか?」
「聞いてる感じだったら呪印もあり得るけど、見ない事には分からないな。どの病院にいるんだ?」
「ここから上り列車に乗って二駅先の第3病院ってとこだ。」
「成程、あそこか。」
俺はその病院の名前を聞いて、それが何処にあるのかすぐに分かった。
その病院は俺も世話になった事があるし、あの病院の先生は信用できるから安心した。
「アンタの妹さんは必ず救い出してやる。その代わり、アンタの知ってるスコーピオンの情報を全部教えてくれ。」
「……わかった。全部教えてやる。」
俺は男から情報を聞き出したが、ほとんどが俺の知ってる情報だったからあまりいい情報は手に入らずに唸ってしまった。
「うーん、あまりいい情報はなさそうだな。」
「なんかすまないな。そっちにしてはいい情報はなさそうだったから。」
「あぁいや、気にしないでくれ。もう他にはないのか?」
「後は……あ、幹部の事は知ってるか?」
「幹部の情報……」
その情報は確かまだ持ってないから、それなら何とか情報は持てそうかもな。
「いや、持ってないな。幹部の事で何か知っているのか?」
「よかった、それは知らなかったのか。俺は何度かあった事があるけど、幹部は全員で七人いたんだ。」
「七人か……その七人は強いのか?」
「わからねぇ。俺も実際に戦っているところは見てないけど、聞いた話によれば一人以外は全員人を殺しているみたいだそうだ。」
「ッ!……そうか。」
幹部たちもすでに人を殺しているのなら、躊躇いは必要なさそうだな。
そんな事を思っていたら、真莉亜がある部分が気になっていたところがあったのか、男に問いを投げた。
「あの、さっき一人以外って言ってましたけど、その一人って誰ですか?」
「E7だ。」
「「E7?」」
俺と真莉亜は初めて聞く名に首を傾けた。
「なぁ、そのEって言うのは一体?」
「Eというのは、Enableの頭文字からつけてるみたいで、全員がパワースーツを着てるんだ。」
「Enable…『可能にする』…か。で、そのパワースーツていうのは、ゲームにあるようなアレか?」
「そうそれ。そんでもって幹部たちはEシリーズって名前で活動していて、誰も顔を知らないんだよ。」
「顔を知らないって事は、ヘルメットか何かを被ってるの?」
「全員ヘルメットを被ってるんだよ。だから男か女かもわからねぇんだよ。」
幹部の顔は認識できず、ましてや戦い方も分からないとなると、幹部に当たった場合は慎重になるべきだな。
それにパワースーツは博士が言ってた兵器だろうし、俺の予想でSランクは塩梅だろうな。
「幹部の情報を得られたのは助かった。これが全部終わったら必ず妹さんを助けるよ。」
「あぁ、ホントにありがとう。」
「礼を言うのは妹さんの意識が戻ってからだよ。とりあえず随時会えるように連絡先を聞いていいだろうか?」
「あぁ、分かった。」
俺は男から連絡先を聞いてから、念の為に草むらにいた奴らを全員確認したけど、黒く出ていた事から救わなくてもいいと分かったところで、俺たちはその場を後にした。
「さて、敵の目と鼻の先のあたりに来てみたけど、これといって強い異能者はいないし、肝心の妹弟子も見つかっていないし、どうしたものかな。」
「何人おくりびとにしたか忘れたし、特に印象的な異能もなかったから、正直言ってつまらないよね。」
「そうだな……―――――」
ギュルルル……
「「………」」
これまでの収穫を思い出していると、同時にお腹の虫が鳴ってお互いを見てから照れて時間を確認すると、もう昼は過ぎていて2時になりかけていた。
「そういえば博士と話し合っていた時には12時になってたな。」
「お腹も空いたし、一旦休憩しようか。」
「そうだな。」
お互いに腹も減った事だし、近くに座れそうな場所があったから、“収納庫”の中に入れてたサンドイッチを出してそこに座って遅めの昼食を摂る事にした。
「朝に作ったサンドイッチだけど、ちゃんとそのまんまの状態で保存ができるから助かるよな。」
「こういったときに“収納庫”のありがたみが出てくるよね。」
そうして俺が作ったサンドイッチを食べていると、近くの茂みから物音が聞こえてきて身構えてしまった。
「何、今の音?」
「音の大きさからして猫とかじゃないな。ちょっと見てくる。」
俺は食べかけのサンドイッチを置いて茂みに近づいて中を覗いてみると、そこには一人の少女が横になって寝ていて、その少女は俺が探していた人物にそっくりだった。
「……シルヴィア?」
「う…うーん……」
少女は俺の声で目を覚まして俺を見てくると、眠っていた眼はパッチリ開かれて、俺の顔をまじまじと見てきた。
「…お兄様?」
「やっぱり、シルヴィアなんだな。」
「お兄様!!」
シルヴィアは俺だと認識した瞬間、体を起き上がらせて俺に抱き着いてきた。
茂み越しで抱き着いてきたからちょっとバランスを崩したが、俺はシルヴィアを受け止めてから頭を撫でて、それを見ていた真莉亜は口を開けてポカーンとしていた。
「お兄様、お兄様、お兄様!」
「シルヴィア、無事でよかったよ。」
「ずっと会いたかったです! あの時お兄様が元の世界に帰ったと聞かされて最後に別れの挨拶ができなかったので寂しかったです。」
「お前はあの時遠征で一日じゃ帰って来れなかったからな。お前を待たずに帰ってしまって悪かったな。」
俺がシルヴィアの頭を撫でて慰めていると、ずっとその様子を見ていた真莉亜がやってきて、シルヴィアの顔を見てきた。
「ねぇ零君、この子が零君の言ってた妹弟子の子なの?」
「あぁ。彼女がシルヴィア、俺の妹弟子であって王都で一番槍をやってる子だよ。」
「……見た目からして華怜ちゃんより一つ二つ年上なのかな?」
「確かシルヴィアは俺が19だった時には14だったから、あいつより三つ上になるな。」
俺が真莉亜に簡単に説明をしていたら、俺の胸の中で泣いてたシルヴィアが泣き止んで真莉亜の方をじっくりを見始めた。
「お兄様、その人は誰ですか?」
「ん? あぁ、彼女は神崎真莉亜。俺の彼女だよ。」
「お兄様の彼女さんでしたか。初めまして、お兄様の妹弟子のシルヴィアと申します。」
「あぁえっと、初めまして。神崎真莉亜です。」
シルヴィアと真莉亜がお互いに俺を挟んで自己紹介を終えたが、何故かシルヴィアは真莉亜の顔をずっと直視していた。
「………」
「あ、あの……私の顔に何か付いてる?」
「……お兄様、この人は本当に人間?」
「……やっぱ即バレしたか。お前の観察眼は侮れんな。」
「え、えっと零君。まさか私の正体バレテーラ…なの?」
「そうみたいだ。」
一年間も一緒に修行しては、僅かな時間だけ一緒に冒険の旅をしていたから分かっていたけど、どうやら真莉亜の正体に完全には分かってないけど、ほぼバレてしまっている状態だし、潔く自白するか。
「……シルヴィア、先に言っておくが槍と剣は抜くなよ。」
「はい、誓います。」
「ふぅ……彼女は、魔王マリアベルだ。」
呼吸を整えてからシルヴィアに真実を言って、俺から魔王というワードが出て殺気を出してくるのかと思ったが、特にそういった事は起きず、ただ無表情で俺と真莉亜の顔を見てきていた。
「えっと……シルヴィア?」
「やっぱり魔王だったのですか。」
「アレ…?」
シルヴィアは素っ気なくすぐに納得してしまって、俺は拍子抜けな声を出してしまい、念のためにシルヴィアに疑問を投げてみた。
「なぁ、シルヴィア。俺が魔王の彼女と付き合っていてあまり驚かないのか?」
「まぁ確かにお兄様が魔王と付き合っている事には驚きましたけど、何かしらの事情があって付き合っているのは、お兄様たちの表情を見ていたら大体納得できます。」
「じゃ、じゃあ何でさっきから俺たちをずっと見てきているんだ?」
「いえ、特に意味はありませんけど。口に付いてる食べカスの後を見ていてお兄様の料理が恋しくなったからです。」
「え、そっち?」
どうやら俺たちのさっき食べてたサンドイッチの食べカスが口に付いてたみたいで、口元を触ってみると確かにパンのカスが口に付いていて、シルヴィアはそれをずっと見ていたのか。
「もしかしてだけど、お前3日前から何も食べてないのか?」
「いえ、“収納庫”の中に入ってた干し肉やパンがあったので、それを食べてから凌いでいましたが、今日の朝食で食糧は底を尽いたのでどうしようか考えていたら寝てました。」
「つまり、昼は何も食べてないのか?」
「はい。」
シルヴィアは無表情で淡々と答えているけど、俺からしたらちょっと遅かったらシルヴィアを餓死させていたかもしれないと思って冷や汗をかいていた。
いやホントに危なかった……生きててホントによかったって思ってしまったよ。
「それよりもお兄様、お腹が空いたので何か食べれる物はありませんか?」
「あぁ、さっき食べてたサンドイッチがあるし、ちょっと多めに作ってたからまだ余ってるけど、それを食べるか?」
「お兄様のサンドイッチ!」
シルヴィアは表情を明るくして早く食べたそうにしている犬のように喜び始めて、俺はそれを宥めて一旦自分の汚れた服をきれいにするのを先に優先させた。
「とりあえず異能者狩りは中断して、一旦“夢の世界”に行ってからお風呂に入って、それから昼食を食べようか。」
「うん、わかった。」
「真莉亜もそれでいいか?」
「うん、私もそれでいいよ。それに少し汗をかいたからちょうど良かったしね。」
「よし、それじゃあ早速行こうか。」
それから“夢の世界”に向かってすぐに別荘に行って、シルヴィアと真莉亜は温泉に浸かりに行ってる間に、俺はリラに全部の事情を話してシルヴィアの服の用意させて、その間に軽く食べれそうな料理を作っていたら、本格的な昼食になってしまったと後から思ってしまった俺であった。
主人公が殺戮をしてますけど、勇者と魔王をどっちも持ってるので気にしたら負けだ!




