91話 異能科学者
「それじゃあ母さん、今日は夜まで帰らないから華怜を頼むよ。」
休校になった初日、俺はトモたちと保健室で話し合った時間が近づいてきたのを確認して、今回の協力者と会った後に、そのまま敵の巣窟で戦っている妹弟子らしき人物を探す計画になった。
「わかったわ。リラちゃんがここに来て零くんの世界に行かせたら母さんも行動するね。」
「了解。真莉亜、行こうぜ。」
「うん。」
俺と真莉亜は家の近くにあるバス停でバスに乗って、トモたちと合流するために駅に向かった。
それとシラヌイは華怜の護衛として今は影の中にはおらず、昨日の夜にシラヌイを紹介してから華怜がシラヌイを気に入ってくれて、昨日から正式に家の飼い犬として迎え入れられた。
(まぁ本当は犬じゃなくて狼なんだけど、元々は俺の式神で指示しない限り噛まないのはわかっているし、華怜も可愛がるといってくれたから別にいいか。)
そんな事を思いながらバスの車窓から景色を眺めていると、横に座ってた真莉亜が俺の肩を叩いてきてそっちを向くと、真莉亜は今日の行動について聞いてきた。
「今日の夜に敵の巣窟に向かうって言ってたけど、人探し以外にはどうするつもりなの?」
「本来なら戦っている二人に会うのが目的だけど、巣窟にいる異能者を何人か捕まえてから尋問しようと思ってるんだ。」
「それって、情報を吐き出させるために?」
「あぁ。できる限り今回の事件は早めに終息を迎えないといけないからな。俺の予定としては、三日後には襲撃をするつもりでいるんだ。」
「三日後か。それなら早めに準備しないといけないわね。」
「そうだな。」
それからは先は特に何も話さずにバスに揺られ続け、約束の時間よりも少し早い時間についた俺たちは、一番目立つ広場の時計の下に立って二人を待った。
待ってる間に自販機でジュースを買ってから飲んで待っていると、バスから二人が降りてきたのがわかって、俺は二人に向けて手を振って、二人も俺に気付いてやってきた。
「いやぁ悪い悪い、明日香を起こすのに手間取っちまってな。」
「別にいいぜ。大方遅刻の言い訳は予想はできたからな。」
「明日香ちゃん、起きるの遅いの?」
「私は悪くないわ。私の眠気を誘ってくるベッドが悪いのよ。」
いやお前あからさまに自分は悪くないって顔をしてるけど、お前が眠気に負けてるのは早めの就寝をしてないのが原因だろうが。
こいつは昔から寝不足で学校を遅刻になりやすく、中3の時はギリギリで登校するのが当たり前で、付き合いたての頃はトモが学校までおぶって運んでくる事が何回かあった程だ。
「はいはいお前の言い訳はどうでもいいから、さっさと駅のホームに向かうぞ、そろそろ電車が駅に着きそうな時間だしな。」
「わぁおマジかよ。ならさっさそ急ぐぞ。」
俺たちは無事に合流してからすぐに駅のホームに向かい、何とか予定としていた電車に乗る事ができた。
「それでトモ、今から行く所は何処にあるんだ?」
「こっから4駅離れた場所だ。そこに降りたらある場所までは徒歩でそこに向かうんだよ。」
徒歩か……となると思ってた場所よりも近いのかもしれないな。
いや待てよ、確かこの方向の電車は工場地帯の電車だし、昨日の話だと敵の巣窟は目と鼻の先じゃないのか?
「なぁトモ、お前らの協力者の博士がいる拠点って、もしかして敵の巣窟からかなり近いんじゃないのか?」
「それは大丈夫だ。駅に降りたら向かうのはその逆だし、今から行くのは人気が少ない場所だからあまり気付かれないんだよ。」
「でも逆に人気が少ないんじゃあ、すぐにバレやしないの?」
「心配しなくてもいいよ。博士の拠点は普通の拠点とは違うからさ。」
「「普通の拠点とは違う?」」
俺と真莉亜がハモって明日香の言った事に疑問を感じていると、明日香は見ればわかるといって答えを言ってはくれなかった。
「おいみんな、そろそろ敵の巣窟だから帽子を被っておきな。」
トモが言ってきた事で俺たちはバッグに入れてた帽子やサングラスなどを付けて身を隠し、駅が近づいてきたところで俺は車窓から敵の巣窟を確認した。
(周囲は特に至って何も目立つものはなく、あるとしても数か所にビルや工場があるだけか。)
数か所あるビルが気になったけど、日光で光が反射しているせいかあまり中を見ることはできず、周辺にも普通の作業をしている人がちらほらと見えただけで、それ以外はわからなかった。
「零君、何かわかった?」
「いやわかんねぇな。特にそういった感じなのは見えないって事は、向こうはかなり手馴れている可能性があるかもな。」
「俺たちも何度か足を踏み入ったけど、何も手掛かりは見つけれなかったよ。」
となると工場はアジトを隠すためのフェイクで、本陣は地下にあるかもしれないし、仮にビルだった場合も異能で外からじゃあ見えないようにしている可能性もあるかもな。
それにこのあたりで働いている作業員は全員色欲の部下なのかもしれないし、至って普通の作業も実は何かしらの意味があたりするのかもしれないな。
「とにかく今は博士と会うのを優先して、夜から俺と真莉亜は行動をするから、その時に何かしらの情報を探してみるとするよ。」
「わかった。」
俺たちが乗ってる電車は工場地帯を抜けていき、生い茂った林を通ってしばらくした場所にあった無人となった駅で止まった。
「よし、ここで降りるぞ。」
トモに言われて電車から降りて外に出てみると、周辺には草木で生い茂っていれば、道路には車もいなければ人の気配もなかった。
「まるでゴーストタウンみたいな場所だね。」
「ここは前までは人がいたんだけど、異能者がこの辺りで暴れたり殺したりして以降人がいなくなっていって、いつの間にかこうなってるんだよ。」
「でも急に移住する人が急増したせいで、水道や電気はそのまんまだからここで暮らす事もできるんだよ。」
「……そっか。」
異能を持った瞬間人殺しとは、だったら特に慈悲は必要ないのかもしれないな。
いや、まだ全部が犯罪者って訳じゃないかもしれないし、そこは慎重にしていった方がいいかもしれないな。
「それでトモ、これから何処に行けばいいんだ。」
「今からそこに行く、付いて来てくれ。」
俺と真莉亜は二人の後を付いて行くような感じで後ろを歩き、所々で周りの気配を確認しながら進んで行ったりと、警戒を怠らないように進んでいった。
どれくらい歩いたのかわからないけど、ある場所に付いたところで二人は止まった。
「ここって、商店街か?」
「もう使われていない商店街だがな。ここに入るぞ。」
そう言って商店街の中に入ったけど、半分近くがシャッターが閉まっていて、天井から漏れる光が唯一の明かりみたいな感じになってた。
「着いたぜ、ここだ。」
トモが言って俺たちはそこを見ると、そこは駄菓子屋さんのお店で、トモと明日香は躊躇なく中に入っていった。
多少不気味だったけど俺たちも後を付いて行って、トモが畳が敷かれている場所を突然剥がしだした。
「これって……!」
「秘密基地への隠し扉さ。この下に博士の拠点があるんだよ。」
「すごいわね。こんなの普通じゃわからないよ。」
「この下で博士が待ってるわ。行きましょう。」
トモと明日香は梯子をつたって降りて行って、俺と真莉亜も続いて降りると、そこは人一人が通れる地下通路みたいになっていて、左右に行ける道もあれば、地下は電気も通っていて明るかった。
「随分と本格的に作ってるんだな。」
「上の商店街には誰もいないから、地下通路は作り放題だったんだよ。」
「まさかと思うけど、俺との付き合いが悪かった時って、これを作っていたからじゃないだろうな。」
「「ギクッ!」」
二人は俺の言葉に体を震えさせると、焦ったかのように汗を流して俺の方を見てきた。
あ―――はいはい成程……確信犯か。
「もしかしてですけど……怒ってます?」
「別に怒ってはねぇけど、そうゆうのは俺にも少しだけ話してくれてもいいじゃねぇかよ。」
「いやぁ―――そう言ったのって信じないと思ってたから黙ってたんだよ。だってお前、そう言ったのにあまり興味は持たなかったじゃねぇかよ。」
「――――…まぁ確かにな。」
トモの言った通り、異世界に行く前はそんなファンタジーはアニメやゲームでしか存在しないと思ってなかったし、いきなりこいつ等が超能力を持ったって言って来ても聞かないフリなんてしていたかもな。
「っと、そうこうしているうちに着いたぜ。ここが対異能者反逆基地だ。」
そこには頑丈そうな鉄の扉があって、トモはその扉を開けて中に入って行って、俺たちもそれを追うかのように入った。
「博士、昨日言ってた二人を連れてきたぜ。」
トモが椅子に座ってデスクワークをしている人に声を掛けると、その人は椅子を回転させて振り向くてから立って、こっちに歩いて来た。
見た目は2,30代の女性で、目の下には隈が濃くできていて、今にも眠そうな顔をしていた。
「あなたたちが二人の幼馴染とその彼女さんね。会えて嬉しいわ。」
その人は俺たちの前に立つと、少しだけ微笑んで俺の前に手を出してきた。
「電話で一度自己紹介したけど改めまして、私は彼らの協力をして異能者と戦っている、博士のリキューサよ。名前で呼ばれるのはあまり好まないから、二人と同じように博士って呼んで頂戴。」
「初めまして、二人の幼馴染の白崎零です。」
「彼女の神崎真莉亜です。」
「よろしく。早速で悪いのだけど、お互いが持ってる情報を交換しあうために話し合ってもいいかしら?」
「わかりました。」
博士は近くにある椅子を指さしてからそれを使ってと言ってきたので、俺は椅子がある場所に歩いて取りに行くと、近くに置いてあった武器みたいなのに目が行って、それが何なのかがすぐに分かったけど今は気にしないで椅子を持って博士の近くに行き、真莉亜に椅子を渡した。
博士はコーヒーを入れて俺たちに渡すと、椅子に座ってお互いが話し合えるようになった所で話し合う事にした。
「それじゃあまずは先に君たちの方から情報を聞いてもいいかしら。」
「はい。俺たちが知ってる情報はいくつかありまして、まずは俺が知ってる情報を一つずつ話していきます。」
俺は今の異能者がどれ程の戦力なのかと、昨日の襲撃で異世界の産物が微かに関わっている事、そして俺たちが異世界に数年いて、異能者を率いているボスが大罪の悪魔の一人だって事を全部話した。
「――――成程ね。大体の事は分かったわ。」
博士はコーヒーを飲んで落ち着かせると、横に置いてたパソコンに俺の情報の事を入力しているのか、早打ちで打っていき、俺たちを見てきた。
「簡単に言うと、あなたたちが知ってる別の世界の物が地球にやってきて、スコーピオンはそれを利用して世界を征服させようとしているって感じなのね。」
「大方、その解釈で間違いないです。」
「そう……」
博士は考えるかのようにパソコンを見ていると、扉が開いて双子の子供が入ってくると、トモと明日香を見るや否や、喜びながらそっちに向かって走り出した。
「「トモ兄! 明日香姉!」」
「おぉ、来斗に穂花。」
「朝から元気だよねぇ。」
「いや明日香、もう11時だからそれは当たり前だと思うぞ。」
俺が明日香にツッコミを入れていると、トモたちを見ていた双子が俺たちに気付いて、不思議そうに見てからトモたちに誰か尋ねた。
「ねぇトモ兄、この人たち誰?」
「俺たちの幼馴染であって、異能者を倒すために協力いてくれる人たちだよ。」
「トモの幼馴染の白崎零だ。こっちは俺の彼女の真莉亜だよ。」
「よろしく。」
俺たちが二人に挨拶すると、双子は俺たちをずっと凝視して、しばらくしたら何故か溜息を吐いてガッカリしだした。
「なんかトモ兄たちよりも弱そうだな。」
「えぇ…何で俺たち初対面の子供にいきなりディスられてんの?」
「いきなり言われると傷つくわね。」
双子の発言にちょっと悲しくなってきてしまったが、トモと明日香はすかさずフォローをした。
「何言ってるんだ二人とも。言っておくがこいつ等は俺たちよりも強いんだぜ。」
「そうよ。それにこれから異能者と戦っていく中で、二人は今回の要になるんだよ。」
「え―――どう見てもトモ兄の異能が最強なんだから、絶対トモ兄のが強いよ――」
「そうだよ。本当に強いのは二人に決まってるじゃん。」
おいおいフォローの意味がなってないで余計に俺たちが被弾してしまってるじゃねぇかよ。
俺は今日博士と情報交換をするためにここに来たのに、何でここにいる子供…しかも二人の協力者に弱いと言われなきゃいけないんだよ。
「来斗、それに穂花も、初対面の人にそんな言い方はいけないでしょう。ちゃんと謝りなさい。」
「でも博士、俺たちは―――」
「ちゃんと謝らないと、来月からお小遣いはなしにするわよ。」
「うっ……ご、ごめんなさい。」
双子の一人の来斗という男の子は、博士に言われて俺たちに謝ると、博士は俺たちに申し訳なさそうにして謝って来た。
「ごめんなさいね。この子たちは昔から学校に行けてないから常識がなってないのよ。」
「あぁいえ、別に気にしてないのでいいですよ。それよりも話の続きをしましょう。」
「ありがとう。それじゃあ今度は私の知ってる情報を教えるわね。」
博士は俺たちに礼を言うと、途中になってた情報交換の話し合いの続きを始めた。
ちなみに俺たちに言ってきた双子はトモたちに任せて、隣の部屋で特訓したいと言って部屋から出て行ってくれました。
再就職の面接ボロボロだったから見送り(不合格)にされてしまいました。




