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第21話:集まった3つの星

()りょうひらの(どうしたの)?」



姫香(ひめか)さんに僕の状況を話して、対策を考えてもらおうと思って読書部に来た。

それにしても、姫香さんは、僕が持ってきた酒饅頭を口いっぱい頬張っている。やっぱり酒饅頭が好きじゃないか。



「その前に、それぞれ紹介していいですか?」


「ん」



姫香さんは短い音で肯定した。

とりあえず、それぞれを紹介しないと、天乃(あまの)さんと二見(ふたみ)さんが置いてけぼりだ。一方、姫香さんはマイペース。酒饅頭がお気に入りみたいでまだ食べてる。



(スリー)スターズの伊万里姫香(いまりひめか)さんです。読書部の部長でもあられます」


「「……」」



天乃さんと二見さんの反応がいまいちよくない。



「どうかしましたか?」


(りゅう)くんは、伊万里さんとどんな関係?」


「ですか?」



天乃さんの質問に、二見さんも乗っかった。



「……他人です」


「なぜ、流星(りゅうせい)くんは、他人に相談事を持ち込むんですか!?」


「問題解決能力が高いからです」


「……まあ、いいです」



二見さんは納得していないようだった。何かを感じ取ったのだろうか。



「あとは、分かる。五十嵐天乃(いがらしあまの)さんと、二見天使(ふたみてんし)さんでしょ?」



姫香さんが割り込んで言った。彼女らのことをフルネームで覚えていたようだ。そして、饅頭は食べ終わったようだ。



「で?」


「実は、クラスで二見さんと付き合っていることがバレてしまいまして、クラスのグループチャットが大荒れです」


「バレたも何も、隠さなかったんじゃないの?」


「まあ、そういう言い方もあるかもしれません……」


「まったく……」



姫香さんが手を額に当てて頭痛のポーズをした。



「恋人みたいな姉」と言いながら天乃さんを指さす姫香さん。

「私?」と天乃さんは自分を指さして驚いている。


「後輩みたいな恋人」と言いながら二見さんを指さす姫香さん。

「恋人……」二見さんが喜んでいる。



「じゃあ、伊万里先輩は?」と天乃さんが僕に訊ねた。


「姉みたいな……」と僕が切り出すと、「他人」と姫香さんが続けた。



いや、そこは「先輩」とかじゃないんかい!


思い当たる節はある。

「恋人みたいな姉」天乃さん。「後輩みたいな恋人」二見さん。「姉みたいな先輩」姫香さん。


僕は天乃さんの好意に気づかない程、鈍感じゃない。でも、それは姉としての情でもある。彼女自身が混乱しているだけだ。それに関しては、すぐに気づくはず。


二見さんは僕のことを慕ってくれている彼女。ただ、かなり誤解していて、僕を持ち上げてくれている。それほどではないことがバレてしまった時はどうなってしまうのだろう。


それぞれ違うキャラクターでありながら、それぞれ共通点がある。そう思ったけれど、姫香さんは「他人」だった。やっぱり共通点などなく、一様に似ていることなどないのだ。



「じゃ、自己紹介も終わったことだし、問題は?クラスの騒ぎ?それともこの三人の事?」


「クラスのことです。騒ぎを納めたい」



そうしないと、最終的に二見さんに振られる気がする。



「じゃあ、勉強ね」


「は?」



意外な答えに変な声が出てしまった。天乃さんと二見さんは、とりあえず僕たちを見守っている感じ。



「小さいときはケンカが強いか、足が速い子かが偉いわ」



思い当たる節はある。



「次は勉強ね。頭が良いと偉くなる」



それが今と言いたいのかな?



「最終的には、お金をいっぱい持ってるといいのよ」


「元も子もないですね」


「まあ、世の中、そんなものよ」



この見た目、幼女だか少女だか から出てくる言葉とは思えない。でも、不思議といつもの彼女の言う事は当たっていた。だから、今回も信じてみるか。



「それで、僕はどうしたら?」


「今度の学年テストで、五十嵐天乃さんを超えなさい。そしたら、クラスはあなたを認めざるを得ないわ」


「なんで天乃さん?同じクラスの二見さんじゃなくて!?」


「その子はあんまり勉強は得意じゃないから、勝ってもインパクトはないわ」



二見さんの方を見てみた。



「うーん、勉強はあんまり得意じゃないから、成績は真ん中くらいです。すみません」



次に、天乃さんの方を見た。



「え?私!?いつもの学年で5番以内よ?」



出た!優等生!そんな高得点取れるわけがない……僕の表情を読み取り、姫香さんが部屋の隅に視線を送った。それに気づき、僕もそちらを見た。



「そこのダンボールに過去問があるみたいよ?」



部屋の中を見ると、床に積まれたダンボール。箱には「➀」とか「②」とか書かれている。



「これは?」


「過去問ね。歴代読書部は部長が自分のテストの答案をダンボールに入れて保管してきたみたい」


「なんでまた」


「どうも、殆ど過去問の使い回しだって言うことを読書部の誰かが見つけたのかもね。ミステリーとか好きそうな人が多かったからだろうから」



なるほど、それで後輩のために、答案を残して……



「今んとこ一番優秀なのは『⑥』の『加賀美恭子』って人ね。殆ど満点だもの」


「じゃあ、それをやっとけば かなりの高得点!」


「そうなるわね。そっちは少し字が薄くなっているから、私のでもいいけど」



姫香さんの2年の時の答案もほぼ100点ばかり。この人タダもんじゃない。



「あと、ちょっとだけなら勉強見てあげてもいいわよ?」


「お願いします!」


「わたっ、私も!」



二見さんが名乗り出た。



「まあ、二人とも急激に成績を伸ばしたらインパクトは高くなるわ。二人の強さをアピールすることにもなるし」


「やたっ♪」


「なんで?」



成績を上げようと思ったのだろうか。僕が二見さんに尋ねた。



「当然じゃないですか!幼女先輩とこんな密室で放課後に二人っきりなんて、エロ展開必至じゃないですか!」



あぁ……二見さんは「こちら側」の人間だった……発想が。そんなつもりは毛頭ないのだけど。



「あと、幼女先輩さえ追い出せば、二人っきりの勉強会……はぁはぁはぁ、世界先輩、大変です、鼻血がでそうっス」



彼女様よ、その可愛い顔で、発想が微妙おっさんなのが面白いぞ。その「勉強」とはどんな「勉強」なのか……あと、教えてくれる人を追い出すんじゃない!ボケ散らかしていて、ツッコミが追い付けない。



「私は?」



天乃さんが自分を指さしながら聞いた。



「天乃さんを超えることがゴールなのに、ハードルが上がったら超えられるものも超えられなくなります」


「ちぇー」



不満そうだけど、こればっかりはしょうがない。



「じゃあ、教える方は?」



僕が判断に困って、姫香さんに判断を委ねるために視線を送った。



「教える方ならいいんじゃない?私、二人も同時に教えられないし」


「じゃあ、お願いします」


「しょうがないなぁ」



さっき立候補しましたよね!?なぜちょっと気が乗らない芝居をしたのか。


こうして、なぜか勉強することになり、次の定期考査で姉である天乃さんを成績で超えるという目標ができた。そして、その天乃さんは教える役を買って出るという、もはやマッチポンプみたいになっている。


僕は、しばらく裏でヒソヒソされながらそれに耐えつつ勉強し、好成績をあげてみんなに見直される作戦を実行することになる。何かが起こる予感しかしない……



---

作中に出た、「加賀見恭子」さんは、こちらの作品のヒロインなので、当作には出てきません。伏線ではありませんのであしからず(|ヮ|)/


既に読んでくださったあなた!ありがとうございます!

まだのあなた!ぜひトライしてください。


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