第四十話 「第二王子の慮外」
ブランシュフルール公爵令嬢と、姿を変えられてしまった弟との話が済み、客間を出ると廊下で控えていた従者のヨハンに告げる。
「王都へ戻る。支度が出来次第、ここを発つ」
「かしこまりました。それと、ディートリヒ殿下……。調べさせていた件の報告書が先程、届きました」
「?」
「調べるようにと仰られていた、ディートリヒ殿下がお生まれになられる前後の事です」
「ああ……」
カルミア伯が第二王子の父親は国王では無く、自分だと仄めかしてたから疑念を拭う為、ヴァイスヒルシュ城に滞在している間、公妾について調べさせたのを思い出す。報告書を受け取り、ライムストーンで造られた白色の廊下を靴音を響かせ、歩きながら中身に目を通す。
すると驚いた事に、公妾が第二王子である自分を妊娠した当時、すでに国王と公妾の関係は冷え切っており、当時の城内でも第二王子の父親は、国王以外の男性なのではないかと、まことしやかに囁かれていたと記されていた。
「そんな……。いや、しかし……。いくら何でも、覚えが無い子供を父王が認知するメリットなど……」
報告書の文字を読み上げた後、過去の記憶を思い出し、ある可能性に思い至る……。かつて、東国センタウレアへ第二王子を交換留学に出すと、父王があっさり決断出来たのは、実の子では無いからでは……と。
正妃との間にはジークフリート王子しか子供が生まれず、外交の駒となる子供が欲しかった王は、公妾の不貞に目を瞑り、生まれた子供を黙って認知したのではなかろうか。
実際、公妾の子供である自分を、東国センタウレアへ送ることによって、緊張関係にあった国境地帯の諍いは平和的に解決した……。
次期国王である第一王子ジークフリートを当時、微妙な関係であったセンタウレアに送る事は出来なかった。仮に公妾の子供である自分が居なかったら、東国との外交問題は丸く収まらなかった可能性もある。
あくまで、そういう噂が流れていただけであって確証は無い……。しかし公妾の子供が、国王の実子では無いと仮定して考えれば、今までの事に辻褄が合う気もして思わず口元をおさえて立ち尽くし、廊下で暫し愕然としていると歩み寄る影があった。
「おお。ディートリヒ殿下とお見受けします。このような場所でお会いできて恐悦至極に存じます」
「其方は?」
「私は北方、ガランサス国の公爵、ダリオ・アルケ・フィサリスでございます」
「ガランサス国の……」
慇懃に挨拶した銀縁眼鏡の公爵は、分厚い本を小脇に抱え、黒いドレスの女を伴い現れた。ガランサス国といえば、かなり遠方の地だ。いったい何用かと思わず眉を顰める。
「遠いガランサス国から、はるばるこちらまで訪ねて参ったのは、他でもありません。こちらのアリアを是非とも、殿下のお傍近くにお仕えさせたく」
自家の娘を王族の傍で仕えさせて、あわよくば縁戚関係に持ち込もうと目論んでる輩はいくらでもいる。これもまた、その類かとうんざりしながら吐き捨てる。
「必要無い。失せろ」
「……」
にべも無い言葉に、銀縁眼鏡の公爵は笑顔を張り付けたまま固まる、フィサリス公爵の後ろから、黒髪の女が一歩前に出る。
「お待ち下さいませ殿下……。私、アリアと申します。誠心誠意、殿下にお仕え致しますわ……。どうかお傍に置いて頂けませんか?」
「……」
濡羽色の髪が艶やかなアリアという女は、懇願するように両手を胸の前で合わせていた。長い睫毛に縁どられた黒曜石色の瞳は、自分の頼みを断る男は居ないであろうという、絶対的な自信に満ち溢れ、肉厚な紅の唇は、勝ち誇るような笑みをたたえていた。
実際、彼女は美しく、豊満な胸元を強調した紫黒色のドレスも相まって非常に魅惑的である。しかし先程、出自についての噂を知った、自分の心理状態も相まって、些かも彼女の美貌に感銘を受ける事は出来なかった。
「くどい。俺には必要ない。ガランサス国に帰るがいい」
「……」
眉も動かさずに冷たく言い放ち、その場を後にする。近隣諸国の王侯貴族相手ならいざ知らず、ガランサス国といえば、グルーテンドルスト国から、陸路と海路で一ヶ月以上もかかる距離にある国である。
最低限の交易、交流はあるが、遠方にあるガランサス国の貴族と親密になるメリットは、皆無と言って良いほど。
ここまで通されたという事は、第二王子とガランサス国の貴族が婚姻を結べば、何らかの利益があると見込んだ重臣の口利きがあったのだろうが、そのような思惑に乗ってやる必要は無いし、他国の上級貴族相手とはいえ、不躾にやって来た者に対して、社交辞令的な対応をする気も起きなかった。
ガランサス国の公爵との会話を切り上げ、滞在している居室に戻ったが、今から支度を調えて出立したのでは、すぐに日が暮れる為に翌日の早朝、出立する運びとなった。
完全に問題が解決したとは言い難いし、自分の出自について、どうにも拭えない疑惑がある事を知ってしまったが、すでに公妾が死亡している現在、これ以上の真偽は確かめようが無い。
「一先ず、弟の安否が確認できたのと、所在が明らかになったのは僥倖だったな……」
アルヴィンの帰りを待ちわびる王妃や臣下たちも喜ぶだろう。寄木細工の卓上へ無造作に報告書を置き、肘付き椅子に腰掛けた。天井を見上げれば、格子の中に植物のレリーフが施されているのが見えた。それらを一つ一つ眺めながら、ふと思い出す。今回、城から弟の捜索に出る前、アルヴィンに仕えていた者と交わした会話を……。
国の新事業について、責任者である第三王子が突如、不在になった影響が出始めているらしいとの噂を小耳に挟んだ矢先、アルヴィンの下で働いている書記官から尋ねられた。
「ディートリヒ様……。アルヴィン様はいつ頃、戻って来られるか、ご存じないでしょうか?」
「いや。残念ながら、俺にも全く分からない」
色よい返事を聞けなかった書記官は、途方に暮れた表情をして項垂れた。
「そうですか……。困りました」
「何か問題が出ているのか?」
「はい。クリスタルガラスの製造販売など、新事業は大変好調なのですが、アルヴィン様の主導で行われていた原材料の調達が、暗礁に乗りかけていて……」
クリスタルガラス製造は、我が国で大きな利益を上げている新事業だ。すでに大成功と言って良い成果を上げていたが、材料が調達できないとなると由々しき事態である。
「原材料調達……。それは確かに問題だな」
「元々、ガラスの原材料や、他の新産業の材料も国内には無いのです……」
「国内に無い物なら輸入に頼っているのか?」
「はい。王子であるアルヴィン様、自ら他国との交渉に赴いて、原材料確保や技術者の人員確保に取り組んでこられたのが功を奏して、かなり良い条件で他国から原材料などを確保できる予定だったのですが……」
アルヴィンは元々、国王の寵妃の子として生まれた。有り体に言えば、父親が国王とはいえ、愛人の子という立場で非嫡出子だった。しかし現国王ゲオルグが、アルヴィンの母ルイーズを王妃にした為、現在は現国王と現王妃の嫡出子という立場になった。
現国王夫妻の王子という肩書を持つ事となったが以前同様、決して驕る事無く臣下に接し、自らの仕事に携わっている為、国内外の評判もすこぶる良い。アルヴィン本人にしてみれば長年、王の寵妃という立場であった実の母親が、今さら王妃になった事の方が、青天の霹靂とも言える事態だったろう。
妾の子供として生まれると、我が国では子供の身分は母親の実家が基準となる。例え父親が、国王であろうと本来なら、寵妃の子供であったアルヴィンに王位継承権は無い筈だったが、現国王夫妻の王子となった際、新たに制定された王位継承法が適用され、アルヴィンにも王位継承権が認められる事となった。
そんな王位継承権を持つ王族、自らが他国との交渉に当たっているのだから、交渉相手の方も王子を無下にできる訳がなく「以前より、他国間の交渉が円滑になりました」とアルヴィンが笑いながら話していた事を思い出しつつ、書記官に問いかける。
「アルヴィンのおかげで、かなり良い条件で原材料を確保できる予定だったという事は、アルヴィンの不在で輸入の条件が悪くなってしまったのか?」
「それが、輸入の話自体が無かった事になりそうなのです」
「なんと……」
「肝心の原材料が確保できないとなると折角、軌道に乗りかけていた新事業が、全て頓挫しかねないのです……。アルヴィン様には一日も早く、戻って頂かなければ経済的にも大きな損失となります」
「……」
アルヴィンの所在がはっきり分かったおかげで、携わっていた事業の重要な決裁は可能になった筈だ。姿こそ、白鳥だがアルヴィンとの意思疎通は全く問題ない。書類での確認や指示なら大丈夫だろう。
本当は白鳥の姿でも王都に連れ帰りたかったが、弟の煮え切らない態度から十中八九、帰還したがらなかった原因は、ブランシュフルール公爵令嬢であろうと見当はついている。
「ジュリアに命を狙われた一件がある以上、再び彼女の身に危険が及ぶ懸念があるからな……」
仮にブランシュフルール公爵令嬢の傍を離れて、彼女が害される事でもあれば、アルヴィンは悔やんでも悔やみきれないだろう。
かと言って、彼女も一緒に王都へ行くとなると、ブランシュフルール公爵令嬢はアルヴィンの元婚約者という立場で、世間的には第三王子が行方をくらました原因とされている令嬢である。誤解であるのだが現時点で、公的には大いに問題がある立場である。
グルーテンドルスト国へ一緒に来て欲しいと頼めなかったのも、そこがネックになっていた。事情を知らない臣下や国民はブランシュフルール公爵令嬢に悪感情を持っている。
「仮に彼女を共に連れて行って、下手に第三王子の元婚約者であるとバレれば非常に拙い……」
身分が判明すれば、彼女が不快な思いをする可能性は高く、なまじアルヴィンが皆から慕われているだけに、ジュリアのみならず不特定多数の者たちから、ブランシュフルール公爵令嬢が害意を抱かれる危険すらあるのだ。とても彼女をグルーテンドルスト国へ連れて行く気にはなれなかった。
とにかく、王都に帰ったら、アルヴィン不在の影響で差し障りが出ている案件を書状に認めさせて、急ぎブランシュフルール公爵令嬢の屋敷へ届けさせないといけない。そう思い至りながら、湖城での最後の夜を過ごした。
翌朝、ヴァイスヒルシュ城を出て、すぐに王都への最短ルートである渓谷に入る。荒々しい岩が切り立つ、峡谷の間を縫うように舗装された、狭い路を通過する間は護衛兵の隊列が細長く伸びる。
第二王子の移動中の護衛として、兵を千人つけられたので、それなりに長い隊列となっていた。狭い道から進行方向の右下に一歩、足を踏み外せば深い谷底に墜落してしまう。
左側は壁同然の荒い岩肌が剥き出しになっているが、墜落の危険を避けるべく皆、自然と左側に寄りながら王都への帰路を急ぐ。ふと馬車の中から外に視線を向ければ、北東に見える山脈の高い峰には、暗い雲がかかっていた。
「嫌な雲行きだな……」
「層積雲ですね。あの様子でしたら、恐らく雨は降らないと思います」
「だといいが……。天候が崩れれば、王都に着くのが遅れてしまうからな……」
雲の種類からある程度、天気が予測できるらしい侍従の言葉を聞いて一先ず安堵の息を吐きつつ、ふと自分のペンダントに触れる。王都を出てから、弟の消息が掴めない日々に暗澹たる思いだったが、無事に良い報告を持って帰れる事に満足しながら馬車に揺られていた。
弟はジュリアに恩赦をと考えていたが、アルヴィンは第三王子とはいえ、現国王と現王妃の子。被害者であるアルヴィン自身が穏便な処分を望んでも、事が公になればジュリアを強く断罪せざるをえないだろう。
本人には、あまり自覚が無いようであるが、第二王子とは名ばかりの自分とは比べ物にならない位、アルヴィンは国にとって重要な立場なのだ。
加えて公妾殺害が露見してしまえば、流石に庇い立て出来るものではない。父王に事の次第を伝えて、王命でジュリアを拘束すれば話は早いのだが、全て内密に事を運ぶのは骨が折れそうだ。
さて、どうするべきかと思案していると不意に、前方から異音が響いた。馬車の前後を守っていた隊列の騎兵たちも脚を止めたらしく、周囲が俄かに騒めく。
「何の音だ?」
「どうやら、山崩れのようですね。それほど規模は大きくないようですが、進路が塞がれてしまいました。復旧に多少、時間がかかりますね」
右手の窓から顔を出し、前方を確認した侍従が眉根を寄せながら答えた。視線を見ければ、確かに前方では大小の岩や砂利が山積みになっており、行く手を阻んでいる。
「こんな時に……。しかし、こんな渓谷で山崩れとは」
「なんだか、妙な感じがしますね……」
「妙?」
「ちょうど我々の進行を妨げるようなタイミングで山崩れが起こるなんて……」
侍従が言葉を紡ぎかけていたが、次の瞬間、再び先ほどと同じ異音が今度は後方から鳴り響き、これは流石に尋常ではないと俄かに緊張が走る。すると、何かが風を切るような音と、すぐ近くで、何かに突き刺さるような異音が複数回、響いた。
「何事だ!?」
「で、殿下……。どうか外に出ないよう……!」
「?」
「ぐっ!」
急な停車で少なからず衝撃を受け、眉間に皺を寄せながら疑問を口にすれば、馬車を操っていた馭者が上ずった声で応答している途中、不自然に返答が中断され、馭者台から馭者がドサリと地面に落ちたであろう音がした。
「て、敵襲だっ!」
「馭者が射殺されたぞ!」
「ディートリヒ殿下の馬車をお守りしろ!」
悲鳴にも似た声が馬車の前後から上がる。尋常ではない雰囲気に侍従のヨハンが馬車の左窓から、隊列の前後を確認する。前方も後方も土砂崩れで道が塞がれている。
周囲の護衛の騎兵達が王子を守るべく、急ぎ馬車の傍に駆け寄るのが見えた。さらに気配を感じ、上方に視線を向けると、ヨハンは目を見開き愕然とする。
「あれはっ!?」
「!」
侍従が凝視する先に視線を向ければ、壁の如く切り立った、荒い岩壁の高処に物々しい数の弓兵達がずらりと並んで、この馬車と隊列に狙いを定めていた。
「これは一体!?」
「国外ならともかく、国内でこうもあからさまに命を狙われるとは思わなかったな」
「ディートリヒ殿下……」
「渓谷の狭い道で隊列が長くなり、俺の守りが薄くなるタイミングを狙って来るとは……」
完全にこちらの動きを読んだ上で、地の利を生かした伏兵を潜ませているとは、他国の者にしては手際が良過ぎるのではないかと苦々しく舌打ちした時、上方から大きな声が響く。
「そちらの馬車に乗っておられるのはグルーテンドルスト国、第二王子。ディートリヒ殿下とお見受け致します!」
「!」
「殿下!?」
問いかけの声に応えるべく、窓際に近寄ったばかりか、自らの手で馬車の窓に手をかけ、開け放つ主を目の当たりにして、侍従のヨハンや護衛の騎兵たちは慌てふためくが、これだけの数の弓兵に地の利がある上部側面から狙われ、こちらの前後は土砂崩れで退路を断たれた挙句、味方の兵が殺到していて馬車は身動きが取れない。
千人の護衛が完全に裏目に出た形となった。普通の弓矢だけなら馬車の中に立て籠もれば、ある程度、防げるだろうが、敵側が火矢や落石を仕掛けてくるのは時間の問題だろう。かといって、自分が馬車から出れば即座に射殺される。完全に袋の鼠だ。
この状況で長い渓谷を無事に抜けるのは、まず不可能。せめて誰の命令で兵が差し向けられたのか知りたい。この後に及んでも王子である自分を守ろうとする、侍従や周囲の護衛に「控えよ」と手で制して、弓兵隊の指揮官らしき男に答える。
「いかにも……。グルーテンドルスト国、第二王子。ディートリヒである。其方らは何者だ?」
「私どもは、貴方様のお父上のご命令で参りました」
その言葉を聞いて、辺りは騒然とした。
「!?」
「そんな、馬鹿なっ」
「ありえない!」
侍従のヨハンをはじめ、周囲の兵にも動揺が広がってゆく。真意を測るべく、質問を重ねる。
「父上が、どういう理由で兵を差し向けたのか……。説明して貰いたい!」
「ディートリヒ殿下……。貴方には謀反の疑いがかけられております」
「なんだと!?」
信じがたい言葉を告げられ、思わず眉根を寄せるが、高処に陣取った弓兵隊の指揮官は意に介さず言葉を続ける。
「弟君であるアルヴィン殿下の行方を捜すという名目で、各地方の有力貴族に話を持ち掛け、密かに王位簒奪を計画しているという嫌疑がかけられております……」
「誤解だ! 私は王位など望んでいないっ! ましてや謀反など!」
「申し訳ございません、ディートリヒ殿下……。私はすでに任を受けているのでございます。恨むなら、お父上をお恨み下さい」
弓兵隊の指揮官であろう男の右手が上がり、一斉射撃の合図が為された。その瞬間、矢の雨が上方から降り注ぐ。
「ヒッ!」
「ぐぁ!」
「クソっ! こんな!」
周囲で矢を受けた兵たちの悲鳴と怒号、そして騎兵が駆っていた馬の嘶きが響く。そして馬車内を狙った矢も射ち込まれる。
「殿下! くっ!」
「!?」
馬車の内部を狙った弓矢は、身を挺して主を守った侍従の右肩と腕に突き刺さった。
「ヨハン!」
「ディートリヒ殿下、ご無事で……」
侍従が痛みに顔を顰めながら問いかけた瞬間、再び複数の矢が風を切り裂く音が聞こえ、咄嗟に侍従の腕を掴み、を開いた窓際から、反対側へ引き寄せる。
一瞬の差で、ついさっきまで侍従が居た、革張りの座席に数本の矢が突き刺さり、馬車の外部にも多数の矢が刺さる。自分より年若い侍従が目の前で死ぬ所を見たくないと、咄嗟に手が出た。しかし、第二射から何とか身を躱せたと思ったのも束の間だった。
「馬車の馬を狙えっ!」
上方から、弓兵隊指揮官の声が響く「拙い!」そう思った次の瞬間、前方から馬の肉に矢が突き刺さったのであろう鈍い音が複数、立て続けに聞こえた。尋常ではない馬の嘶きが渓谷に響く。同時に急な振動が起き、馬車がありえない角度に大きく傾いた。
「!?」
「殿下っ!」
右側の馬車の窓から崖下に向かって多数の矢が突き刺さった馬が落下するのが一瞬、見えた。そして、馬
と繋がれている、自分が乗っている馬車も諸共、深い谷底へ吸い込まれていった。




