第10話(累計 第56話) ラザーリの苦悩。
「ここ数日の問い合わせの多さは一体どういうことですか、広報委員長!?」
「申し訳ありません、中央委員長殿。何処も当方が子供奴隷を買い付けている事に対しての物です。奴隷に落ちた可哀想な子らを救うために買っているのだと返答していますが、事実かどうか査察に入りたいと共和国側から来ています。また、貴族連合側からは奴隷制を廃止したはずの共和国内で何をやっているのだかと、馬鹿にするような話が来ています」
カレリアの公館、執務室では、民主労働党の中央委員長ラザーリが眼鏡青年の広報委員長を相手に吠えている。
最近、業務が急激に増えてきているからだ。
「ぐぐぐ。今、査察に入られても困ります。共和国には現在領内が荒れていて対応に苦慮しているから、しばらく待ってと伝えてください。ついでにプラント技術者を先に送ってくれとも!」
度々の問い合わせに疲弊するラザーリ。
更に、他の問題も多発していた。
「公安委員長! このところの警備部隊の連絡途絶はどういう事ですか? ここ一週間で二部隊が消息を断ったと聞いています」
「も、申し訳ありません。確認しようにも、我らが党少年隊に機械人形を操縦したり自動車を運転出来る者はいない為、街の外に行くのも厳しいのです」
ラザーリは激しい口調で強面な壮年男性、公安委員長に問う。
「ぐぅぅ。人材不足がここに来ましたか。子供たちへの教育はどうなっていますか、人事委委員長!?」
「それがですね。教える事が出来る人材は、全て粛清済み。農園送りにしている者には、少しは使えそうな者もいないでもないですが……」
人事委員長、太った中年男性、パブロは性懲りもなく横にはべらせた以前とは違う美少女メイドの尻を触りながらラザーリに報告をしていた。
……パブロめ。とっかえひっかえ、少女に手を出して飽きたら、他所の国へ輸出するとは! 優秀じゃなきゃ、とっくの昔に殺しているぞ!
「……分かりました。では、人事委員長。少しでもマシな人材を農園から呼び戻してください」
「分かりました。では、代わりに子供たちを送ってくださいませ。おお、実に良いお尻ですねぇ、貴方は」
「あん! パブロ様ぁ」
自分達が行った「総括」からの粛清。
貴族だけでなく、彼らに従いプラント維持やギガスに乗っていた者達。
更には無垢な子供たちには教育や知性は不要と教育者や医療従事者も。
ラザーリは、彼らを全て抹殺した。
それにより、高度教育を受けた人材の大半は既にこの世にいない。
更に教育を受けていない子供たちを主力にしている為に、対外的な戦力にも出来ない。
……ボクは崇高な思い、子供たちによる清純な社会をつくる事を目指したんだぞ? なのに、どうして上手くいかないんだ! 汚い大人に政治を任せる訳には、いかないのに!
ラザーリは、下品な人事委員長や無能な広報委員長らを見ながら頭を抱える。
革命により貴族を追い出したのち、同志たる大人で作った労働党でカレリアを支配した。
大人の力を借りたくはなかったのだが、自分だけではどうにもいならなかったから。
しかし、汚い大人たちは自分の保身の身に走り、子供たちに負担だけが増えている。
……やっぱり大人は汚い! 子供らによる自然な社会をボクが作らないといけないんだ!
「農業委員長、人員配置を検討お願いします。それと、技術委員長。プラント再起動の目途は立っていますが? 先日入手した水生成魔導具は動いていますが、このままでは食料の配給にも支障をきたします!」
「ラザーリ殿。人員配置につきましては、なんとかしましょう。その代わり、農地への給水量増加をお願いしますわ」
「プラントですが、何分に仕様を理解できる者が私含めて誰もいません。マニュアル書すら意味不明な記述ばかりで……」
美少年執事に視線を向けたままの中年女性、農業委員長。
汗っかきで太っちょの技術委員長。
彼らも文句だけ言って、ラザーリのいう事を聞いてくれない。
「くぅぅぅ! で、では、皆さん。業務に励んでください。すいません。私はしばし、私室にて休みを頂きます。何かありましたら、連絡をください」
職務室から頭を抱えたまま飛び出たラザーリ。
防音になっている私室に入り、鍵をカチリと閉じた。
「ああ、レダ! ボクはどうしたら良いんだぁ。もう、ボクはいっぱい、いっぱいなんだぁ」
「ラザーリ様。大丈夫ですわ。貴方には勝利の女神たるワタクシがいますもの」
ベットに飛び込んだラザーリは、ベットサイドに座る少女に縋りつき、子供の様に泣き叫ぶ。
伝説に言われる「馬」や「ロバ」のような長い耳を持ち、白い肌、長い黒髪、ヘーゼル色の瞳を持つ美少女レダは幼子の様に己にしがみつくラザーリの頭を優しく撫でる。
「ボク、ボクね。頑張っているんだ。他の大人たちなんて私欲いっぱいで汚いんだ。特に人事委員長のパブロなんて女の子のお尻触りながらボクに報告するんだよぉ!」
「それは嫌よねぇ。じゃあ、どうして他の大人を排除しないの、ラザーリ様? 貴族たちみたいに『総括』して粛清したら良いじゃないかしら?」
「それが出来たら苦労しないよぉ、レダ。ボク一人じゃなにもできないんだ。扇動するのがやっと。政治も無理だし、プラントも動かせないし、ギガスにも乗れないんだぁ!」
慰めるレダに対し、幼児のようにダダをこねるラザーリ。
彼は自分には扇動しか才能がなく、他の事に関しては嫌々ながらも同志と語る大人たちの力を借りるしかないのを愚痴る。
「大丈夫ですわ、ラザーリ様。貴方にはワタクシが居ますから。ワタクシは決して大人にはなりませんし、ずっと貴方の側に居ます。ギガスの件ですが、もうしばらくお待ちを。ワタクシの姉がこちらに戦力を回して下さいますから」
「レダ! レダァ! ボクには君しか、そう君しかいないんだぁ。ボクを裏切った汚い大人になんてならないで。ずっと、ずっとボクの側から離れちゃ嫌だ! 母さん、僕を捨てた母さんみたいにはなっちゃ嫌だぁ!」
「はいはい。レダはずっと貴方のしもべ。側に居ます。さあ、ワタクシが慰めてあげますわ」
レダは、顔を上げたラザーリの唇に己の桜色な唇を合わせる。
そして、二人の物理的距離はゼロとなっていった。
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