第9話(累計 第55話) ナオミの過去話。
「お、おほん。それじゃ、ナオミ。お願い」
「うん。お兄ちゃん」
僕の彼女論争がナオミの一言で開始されるも、リリの「わたしがトシおにーちゃんの彼女なんだもん!」の一言で解決した。
……まあ、その一言に至るまで小一時間掛ったのはどうなんだか。エヴァさんは結局リリ可愛いで折れ、アカネさんは最初から僕は弟枠で恋愛感情は無いって言ってくれたけど。
「もうお兄ちゃんが話しているとは思いますが、わたし達の両親はニコラ・オスマン伯爵様お抱えのギガス整備士でした」
ナオミが僕らの両親の事から話し出す。
この話はエヴァさん以外は話していたと思う。
「アンリ・オスマン子爵様の運転ミスで起こった事故の責任を、両親が取らされ二人とも死刑となりました。その後、残されたお兄ちゃんとわたしは別々の奴隷商に売られてしまいました」
……死刑の内容まではナオミは知っていなかったか。その方がいいよ。ギガスに追いかけられて、最後は踏みつぶされたなんて、知らない方が良いに決まってる。
「ふーん。トシの話はあまり聞いてなかったけど、二人とも大変だったのね。よしよし」
「そうなの、エヴァお姉ちゃん。で、おにーちゃん。わたしを見つける前は復讐鬼ってやつだったらしいよ」
エヴァさん、ナオミの話を聞いて思うところがあるのか、ナオミの頭を撫でてくれる。
そこにリリも一緒になってナオミをナデナデしているのは兄として嬉しい光景だ。
……僕は、リリのおかげで人に戻れたんだ。僕も、リリに出会うまでは、貴族を恨んで踏み殺したりしていたし。
「エヴァさん、リリちゃん、ありがとう。そこから先だけどカレリアに来るまでの事は、わたしもあんまり記憶に無いの。女の子がいっぱいのお店に売られそうになったのとか、ひもじい思いと寂しい思いをいっぱいしたのは覚えているんだけど」
乏しい記憶によると最初、ナオミを買い取った奴隷商。
ナオミを女の子が多いお店、おそらく女の子の「春」を売る夜の店、娼館に最初は売ろうとしたらしいけれど、まだ幼すぎるナオミは売れ残った。
その後、別の奴隷商に売られ、カレリアの支配者に買われるまでは満足に食事も貰えなかったそうだ。
「カレリアに来て、最初の時。奴隷として買われた子達の中で女の子だけ別の部屋に集めさせられたの。太ったオジサンが来て、皆の顔や身体をじっと覗き込んできたわ」
後から、そのイヤらしいオジサンがカレリア民主労働党の人事委員長だったとナオミは知ったらしい。
……女の子だけってのがイヤらしいな。もしかして?
「その時、可愛いお姉さんとかが別室に連れられて行ったの。お姉さん達を次に見た時は、みんな綺麗な服を着て偉い人の横に立ってたわ。中には、後から別の国へ行った子の事も聞いたけど」
見目麗しい女の子は、党員のメイドや側仕えとして雇われていた。
更には美少女の「輸出」をしているという話がナオミから飛び出した。
「わたし達、奴隷枠でカレリアに入った子。皆、親から捨てられたり『みなしご』な子ばかりで、何処にも行くところが無かったの。だから、厳しい仕事があっても、ご飯が食べられて寝るところがあった奴隷でも満足していたわ。そして、いつかは偉い人に見つけてもらって、綺麗な服を着る仕事を夢見たの」
カレリア、そこでは子供に国の運営をさせるだけでなく、積極的に他国から行く先の無い子供を買い付けているらしい。
……ナニが、清純な子供たちによる国家だ! 指導者共が自分達の好き勝手してるだけ。逆らえない子供や大人たちを力で押さえつけているだけじゃないか! 綺麗な服を着てする『仕事』なんて、想像するだけで怒りがこみ上げるよ。
「わたしは、そのオジサンに何回も見られたんだけど『顔は良いけど、身体が貧相だし』とかで、労働組に回されてたの。後は、お兄ちゃんが来るまで荷物運びとか、農場のお手伝いをしていたわ」
「ナオミ。悲しい記憶もあったのに、無理に言わせてごめん。色々な事が分かったよ、どうもありがとう。」
「ううん。お兄ちゃん、わたしを助けに来てくれてありがとう。他の皆さまも、色々ありがとうございました!」
僕は、なおもエヴァさんやリリに抱っこされているナオミに礼を言った。
ナオミの悲しい記憶から分かった事だが、カレリアは自分達の領地の子供たちだけでなく、周辺から奴隷として売られている子供を買い付け、労働力や外部への輸出品へとしている。
「なに、水生成魔導具でナオミちゃんの笑顔を買えたのなら、安いものだよ。トシ殿、ナオミちゃんの事はワシに任せておけ。カレリアが文句言ってきても、ワシが守るさ」
「伯爵様。重ね重ね、僕たちの為にお力をお貸し頂、ありがとうございます。さて伯爵様、カレリアは子供たちの人身売買に手を出していますね。これは許されざる事です。各国が大人しいのも、人身売買に上層部が関与しているからでは無いでしょうか?」
……伯爵様には、本当に頭が上がらないよ。伯爵様とは戦わなくて良かった。こんな素敵な人、僕は絶対に裏切らないし、どんな暴力からでも守って見せる!
僕は、伯爵様がナオミやリリ共々守ってくれたことに感謝しつつ、疑問を尋ねてみた。
「おそらくは、そういう事であろうな。子供を利用して自分達だけで利権を食む、実に許せぬ存在よ。トシ殿、ワシも先程の案を承認しよう。貴族連合向けに今回の情報を流してみるわい。防衛用ギガスが少ない事は、あえて言わぬがな」
「ありがとうございます。そうして頂けると、助かります。僕も共和国筋に、こんな噂を聞いたって話を流してみますね」
未成年者の人身売買を国家単位で行う所業。
これは、何処の貴族、平民であろうとも感覚が「まとも」であれば嫌い、辞めさせるべきという意見が出るはず。
この外圧を受けたカレリア側の動きを見てみようと、僕は思った。
……キレて、こっちに手出ししてくるなら、自己防衛の理由を付けて倒せるんだけど。今回は、こっちが先に奴隷少女誘拐強奪をしちゃってるから、攻めずらいし。
この後も、僕らは色々と今後の事を話し合った。
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