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8.使い魔さんはトラウマを作る


「なんじゃこれは……」


 我の自室にあるダンジョン監視用のモニターに映る光景を見て我はそう呟くしかなかった。画面の何処を見てもひたすらに緑しか見えないこの状況ではそう呟くしかあるまい。

 ヘルガがスポットを買うと決めてから一週間ほどが経過した。

 我は朝から昼にかけては山の動物をダンジョンな連れて戻っては食料にしてDPを稼ぐという地道な活動を続けていた。

 そして数日前にヘルガの奴はちゃっかりと我の名義で借金をし、スポットを買ったようでスポットを設置してからはダンジョン内と外の森にもゴブリン供の姿をちらほらみかけるようになってきたわけなんだが……


「増えすぎじゃろ……」


 ダンジョン内のそれなりの防音能力がある自室にいるとというのにゴブリン供の鳴き声が聞こえてくる。

 こう言ってはなんだが我のダンジョンはそんなに難しい作りをしてない割には巨大だ。その巨大なダンジョンのどこにいても声が聞こえてくるのだ。自室に引きこもっていても昼夜問わずにひたすらに聞こえてくる甲高い鳴き声に気分は世に聞く育児ノイローゼの母親の気分である。

 そしてそれを引き起こした張本人であるヘルガはというと同様に部屋からでない。ただし、自分の部屋からではなく我の部屋からではあるが。


「あんなにゴブリンがいっぱいなんですよ⁉︎ そんな中に私がいたらら『くっ殺!』状態になるじゃないですか! あと今の人化したマスターが言ったらR18に引っ掛かりそうなので絶対に行かないでください!」

「R18が何かはわからんがゴブリンは汚いから我も自分じゃらは近づく気はないのぅ。あと我もドラゴンの姿じゃないから見つかったら襲われそうじゃな」


 最近の言葉はよくわからんがとりあえずは行きたくないのはよくわかった。我も行きたくないし。


「だが実際問題これはなかなかにやばいじゃないのかのぅ」

「ええ、人間達がこの状況を見たらダンジョン災害(ハザード)が起こっていると思われても仕方がないくらいのゴブリンの数です」


 ダンジョン災害(ハザード)とは言葉の通りダンジョンでの災害である。ダンジョン内で増えすぎたモンスターがダンジョンから溢れ出したりする現象である。ダンジョンから溢れ出したモンスターというのは大体が人里へと向かっていくことからダンジョン災害(ハザード)が発生した場合には人間側の軍が動くことがある。

 そしてこのダンジョン災害(ハザード)でもっとも面倒なことがある。


「下手したら上位種が生まれるんじゃないのかのぅ?」

「ですよね」


 災害ハザードを指揮する上位種が生まれることこそが一番面倒なことだ。どういう理屈で生まれるのかはわからないがある一定数以上の同型モンスターが集まって生活していると本能で生きる知能のないモンスターでも知能を持つモンスターが生まれたりするのだ。それこそが上位種。


「人間の軍が来るのは面倒じゃしのぅ」

「人間はダンジョンとしてはおいしいお客様ですよ? DP的に」

「現実的じゃ」

「でもなんかこう数の暴力で蹂躙する様とか見たくありません?」

「む……」


 それは少しばかり見て見たい光景ではあるがのぅ。


「蹂躙の前に共食いが始まってるが?」

「え⁉︎」


 モニターの一部分を指差す。

 そこには血で血を洗うような戦いをしているゴブリン供の姿が見られ思わずモニターの保護フィルターが働き「見せられなよ!」と表記されたモザイクがかかるほどじゃ。しかし、悲鳴は加工されることなくやたらと性能のいいスピーカーから流れて来るので我とヘルガはげんなりとしてしまう。これはSAN値が下がる。


「間引きましょう。人類を蹂躙するには私達のSAN値が足りません」


 青い顔をしたヘルガが真面目な顔でそんなことを告げて来る。我としても依存はない。というかあんな「見せられないよ!」的な光景が我のダンジョンで日常的に行われると思うと怖気が走る。


「じゃ、ヘルガ行ってこい」


 ヘルガの首元を掴み引きずるようにしながら我は部屋の扉に向かい歩き出す。


「へ? いやいやいやちょっと待ってくださいよ! 私? 私なんですかぁぁぁぁぁ⁉︎」


 ジタバタと暴れるヘルガであるがそもそも人型であってもドラゴンである我に力で勝てるわけなかろうに。扉を開けると一面に緑が見えたことに顔をしかめてしまったがゴミを捨てる容量でヘルガをポイっと放り投げると素早く扉を閉め鍵を掛けた。

 その後、モニターの前まで歩いていくと先程ヘルガを放り投げた通路へとチャンネルを合わせてモニターに表示し、棚からヘルガに見つからないように隠していたドラゴンが食べる用の超ビッグサイズのドラゴンポティトを取り出し封を開けると口に流し込む。


『ちょ! まじですか⁉︎ 本気ですか⁉︎ いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 モニターはすでに緑一色。というか緑しか見えん。そんな中にはすでに「見せられなよ!」という状態になっているヘルガが色々とモザイクが掛かっている状態で映し出されてるわけだが時折画面に緑ではなく閃光が走り赤い血けむりが上がっているのはヘルガの奴が魔法を乱射しているんだろう。

 魔法が放たれるたびに空白地帯が生まれるわけだがそこはさすがはゴブリンというべきか恐ろしいまでの物量で瞬く間に空白地帯が埋められていく。


『むり! むりぃぃぃ! ひぃぃぃ、なんか掛かったぁぁぁぁぁ!』


 パニック状態で魔法を乱射していたヘルガだがさらに恐慌状態になったのかさらに魔法の乱射する数が増える。ヘルガの背後に展開される魔法陣の数がさらに増えて放たれる魔法がヘルガの鳴き声と共に破壊の嵐を撒き散らす。


『こぉぉなぁぁぁぁいぃぃぃぃでぇぇぇぇ!』


 それから三時間。

 魔法をぶっ放し続けたヘルガが魔力切れで倒れたの見計らいダンジョンマスター権限でヘルガを我の私室に転移させてやる。

 助け出されたヘルガはというとゴブリンの血や肉、あとついでに白い液体やらなんやらを身体中にこびりつけたままの状態で部屋の隅に向かって歩いていくと膝を抱えてそこに頭を埋めるようにして体を震わしていた。


「ゴブリンこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいぃ」


 どうやら深刻なトラウマを作り出してしまったようだな。

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