63.機械メイドさんは機嫌が悪い
「疲れた……」
「身から出た錆というやつですね」
質問攻めから解放されたらすでによるじゃった。ドラゴンは体力もかなり有るんじゃが疲れるものは疲れるんじゃ。
流石にクマの被り物は取った。あれは暑すぎる。
「モンスターの素材ではなく、魔剣とかにしとけばよかったかもしれんな」
こんなに疲れるのならキングゴブリンなんぞ出さずに魔剣でも出しとればよかった。ダンジョンでもゴブリンが持ってた魔剣を討伐した冒険者が持ち帰っとる姿を何度か見たことあるしな。
ダンジョン近くのゴブリンが持ってたとか言えば多分信用された気がするし。
そんな長い間拘束されて手に入れたのが冒険者証二人分というのは割に合わんな。
外に出たらもうすでに日が沈み始めよる夕方なわけじゃしな。
「出した魔剣が規格外じゃなければ問題ないでしょうが、今ご主人が持ってるのを出したらさっき以上の騒ぎがでますよ?」
「このザクザクヒールナイフか?」
「このご主人、ネーミングセンスが酷すぎる……」
スピアの言う我の持つ魔剣というのはこの間できた世にも珍しいなんと刺すと回復するという攻撃ではなく回復する魔剣なんじゃ!ただし刺さる。
見た目は切れ味の悪そうなナイフ、というか悪い。そんなナイフ型の魔剣なわけじゃがそれでひたすらに刺しまくると傷が治るという回復型の魔剣じゃが、あんまり評価が良くないんじゃよな。
「刺すだけで回復するんじゃぞ? 凄い魔剣じゃと思うんだだが?」
「確かに凄いですが、刺した時の痛みは感じますし、痛みの感覚が数十倍に増幅されるって話でしょう?」
「治らんよりマシじゃろ?」
このザクザクヒールナイフの唯一の欠点は刺して回復する時に刺した痛みの数十倍の痛みが発生する事じゃな。
ちなみに、実験では三人に一人は回復する痛みに耐えきれずに発狂して死んだりしとるわけじゃが、死ななければ治るんじゃから問題ないよね!
「その発想が最早普通ではないのですが、さすがはゲスなご主人」
「ねえ、褒めてる? それともバカにしとる?」
「ホメテマスホメテマス」
「嘘くさいんじゃが!」
なんかバカにされるのも慣れつつある自分に嫌気がさすのう。
じゃが、前向きに考えなければな! せっかく街にきたわけじゃし? キングゴブリンの素材もそれなりの値段で売れたわけじゃしな。今は懐が暖かいというものじゃ。楽しむべき時は楽しまなければ。
「遊…… 情報収集は明日にして、とりあえずは宿じゃな。ここまで来て野宿とかは嫌じゃし」
「冒険者ギルドで教えてもらった宿に行きましょう」
動くのもだるいが明日からのためにと仕方なく動くしかない。さっさと今日は休みたいし。
人の気配が少なくなりつつある道を歩く。
「景気が良さそうじゃねえか姉ちゃん」
「その懐の金を俺たちに渡してもらおうか」
「ギャハハハハ」
なんか下品な声が聞こえてきたから振り返ってみたら冒険者ギルドの隅にいたナイフを舐めてた連中じゃないか。
またナイフ舐めとるが、美味いのかナイフっ?
あとなんで髪型が全員漫画でしか見たことがないモヒカンヘアーなんじゃろうか?
「なんじゃ?」
「ゴミです。ご主人。街にはよくあります」
「街ではよくあるものなのか?」
「ゴミはどんなに綺麗にしても一定数はわくので」
「あとナイフって美味いのか?」
「個人の趣向です。ですが一般論から言えば鉄を食べる種族でない限りはおいしくはないと思いますが?」
「聞こえてんだよ!」
「優しくしてる間に有り金全部だしな!」
どこかに優しくしてる要素があったんじゃろうか? 人間はよくわからんな。
「金が欲しければ働けばいいじゃろが」
「楽して儲けたいんだよ!」
「痛いのはいやだからな」
「痛い目に遭わすのは好きだがな!」
うん、とりあえずはこいつらがクズというのはよくわかった。楽して儲けたいという気持ちはよくわかるんじゃが、それが人から奪うというのは最悪じゃな。
ここは我が痛い目に合わせてやるか。なに、ザクザクヒールナイフがあるから頭を吹き飛ばさなければ死には……
「消えなさい。ゴミ」
ゾッとするくらいに冷たい声を出しながらスピアの奴が腕を三人組の一番前にいたモヒカンヘアーの眉間へと向ける。
あ、スピアの奴、機嫌が悪い。
そんな機嫌の悪いスピアの腕が瞬時に分解され魔力を纏いながら鉄の輝きを纏う物へと再構成される。それは明らかにモヒカンヘアー達には過剰な暴力になる物であること確認した我はかなり焦った。
「ま!」
「Rキャノン」
制止の声は虚しく、スピアの腕から轟音と共に魔力の火が吹いた。




