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59.ドラゴンさんは吟味する

 

 結局連れていくのはスピアだけとなった。

 理由はなんとなくヘルガを連れていくと嫌な予感がしたからなんじゃがな。

 それをヘルガに伝えるとヘルガの奴は口を尖らせながら「横暴だ!」と怒鳴っておったがそこは無視。

 放っておいてもあやつのことだからDP使って何か買い物するじゃろう。

 そして街に行くにあたっての問題がまだあった。


「服どうするかじゃな」

「ご主人、私はこのメイド服で問題ありません」

「お主はな」


 スピアの奴はメイド服で問題ないんじよ。

 問題なのは我なんじゃよな。

 なにせ我はドラゴン。ドラゴンが服なんか着るわけなかろう? 今はヘルガのせいで人型で過ごしておるわけなんじゃが、服はなんか肌に張り付く感じがあるから嫌なんじゃよね。だから我が着てるのは基本的には頭から被るローブのような物ばかりなんじゃよ。

 本当は下着も付けたくないのじゃが流石につけないとヘルガとさらにはスピアが怒る。前に付けなかったらめちゃくちゃ怒られたし。


「じゃが、街に行くっぽい服ってどんなのじゃ?」

「いつも通りでいいのでは?」

「え、まっ裸でいいのか?」

「くずご主人、潰しますよ? あと裸は風邪を引くからやめなさいといいましたよね?」


 え、我何を潰されるんじゃ⁉︎

 めちゃくちゃこわいんじゃが……

 じゃが裸で行くのはダメなのかー ドラゴンが裸って普通じゃと思うんじゃが。

 そうなると面倒じゃがやっぱり服が必要じゃよな。

 いや、我にはローブがあるよな。


「ローブじゃだめなのか?」

「ローブでも問題ありませんがご主人の場合はローブのサイズすらあっていません。ローブの裾なんて引き摺り回しすぎて擦り切れてます」


 確かに我の着てるローブはサイズが合っとらんな。ブカブカじゃし、何より動きにくい。


「サイズ直しをしてもらって……」

「服を着るのが面倒なのはわかりますが、新しいのを買い揃えては?」

「だるいんじゃ」

「……マルコシアス商会を呼びつければ」

「もし、そんな勝手な事をしたら流石に我もキレるからな!」


 なんとも言えないような視線をスピアから感じる。

 じゃが、我だって面倒なのは嫌じゃ。

 我は確かに人型になっても可愛いドラゴンであるという事は自覚しておるわけじゃが、我が人型の時の服を買うのを面倒くさがるのはちゃんと理由がある。

 あね様達に服を買いに行く時に無理やり連れて行かれたのか我の事が大好きなマルコシアス商会じゃったんじゃ。

 あやつが何故、我をあそこまで好きなのかはわからんが、あの商会に初めて行った時にトラウマが出来るレベルでまとわりつかれたからのう。

 有能なんじゃが我は会いたくない。


「ではDPで新しいローブを取り出せばいいのでは?」

「そうじゃ!それが妥当じゃよな」


 なにもマルコシアス商会で買う必要はないしのう!

 DPのカタログをウキウキとしながら開く。あやつの姿を見なくてよいとわかるだけでだいぶ心がはれやかじゃのう。


「さて服、服っと、ん?」


 DPカタログを弄っていると画面に赤いデカデカとした文字でセール! と書かれている項目を発見した。

 ふむ、安いのはいいことじゃよな。クーファ姉上なんかもバーゲンとかセールとかの文字を見ると人が変わったかのように周りを蹴散らしながら突貫しておったし。


「なになに? 冒険者なりきりセット?」

「見た感じが冒険者のような服ではないでしょうか?」

「なるほど」


 我がカタログを見ていると、隣からスピアのやつが覗き込んできてそう告げる。

 確かにカタログに表示されているものは、どれも異世界の漫画で見たことがある冒険者と言われる連中が着るような服であるようだ。

 どれも何処か奇抜な服装に見えるが……

 これが冒険者の服と言われるものなのだろうか?


  「つまりは、ごっこ遊びのセットということかのう?」

「ダンジョンを運営している私たちには必要ないものなので、ごっこ遊びと言っても間違いはないでしょう」


 ということはじゃ。ここに表示されている服などを購入すれば、世間一般的には冒険者と呼ばれる連中に紛れ込むことができるのでは?

 ならば、ここから選ぶしかあるまい!

 そうして我は冒険者なりきりセットに表示される衣服を吟味するのであった。

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