39.勇者さんは働く
「はぁ、空が青い」
「ソラ、くだらないこと言ってないで働いてください」
「空見て感想言っただけだよね⁇」
畑を鍬で耕す手をちょっと止めて空を見上げて俺様、ソラがポツリと呟いた感想を同じく畑を耕していた僧侶のカティが言葉で一刀両断してきた。僧侶なのに。
さて、なぜ未来の勇者である俺様が畑を耕しているかというと冒険者ギルドからの依頼だったりする。
予期せぬダンジョン災害に巻き込まれ、パーティは全滅。更に僧侶のカティがこの街の神父のせいで死亡したせいで余計な蘇生代金を踏んだくられたので俺様のパーティは一気に金欠に陥った。そりゃあ、武器も防具も買えないくらいの金欠だ。当然、街から街へ移動するために必要な足もなければ食糧などを買う金もない。
そんなわけで武器も防具もない俺様達は冒険者ギルドからの依頼を受け、金が貯まるまでこの街に留まることになったわけなんだが、
「お金が貯まらない!」
「それはソラがまともに働かないからです」
武器がないと魔物と戦えないから自然と街中で働くしかなくなるんだが、当然魔物討伐より手に入る金が少なくなる。
「俺様は一気に金を手に入れたいんだ!」
ちまちました金より大きなお金だよな!
「そう言いながらこの前はゴブリンにフルボッコされてましたよね」
「あれはゴブリンの数が多すぎただろうが!」
「まあ、百匹はいましたしね」
俺様の実力ならゴブリンくらい素手で倒せる。ただ、倒すだけならだ。
金を手に入れるためにはゴブリンを倒した後に魔石を手に入れないといけないからな。
まさか倒されたゴブリンを餌にして解体をしている最中に背後からボコられるとは思わなかった。
「この街の周りはおかしい! 弱いゴブリンの他にも同じ姿形をしたゴブリンなのに明らかに強すぎるゴブリンもいただろ!」
「あー、一匹だからって背後から奇襲したのにラリアットをやり返されたやつですか」
大量のゴブリンには勝てん、だからゴブリンが一匹になるのを待って最後から奇襲したのにも関わらず反撃を受けて首がへし折れるかと思ったぜ。
「ソラ、魔物との戦いは命懸け。装備はちゃんと整えましょうと教わったじゃないですか」
「いやいやいや、そりゃそうだよ⁉︎ だがゴブリンだぞ⁉︎」
ゴブリン、最弱の魔物だぞ。子供でも倒せる魔物だ。
数の暴力という必殺はあるが一体一体では大して強くないはずだ。
それがなんで俺様を! 勇者候補である俺様をボコボコにできるんだよ!
「はぁ」
カティが深々とため息を吐き出し畑を耕す手を止める。
「ソラ、ここは最果ての地ウォーケンですよ。噂では突然変異種なんていくらでもいるらしいですし」
「え、そんなやばい土地なの⁉︎」
突然変異種って確か高密度の魔力を浴び続けたり、長く生きていてなるやつだろ。
「情報収集は大事と昔から言ってるのに…… その様子ならこの前私達が行こうとしていたダンジョンから魔剣が大量に出てきて、この街に持ち込まれている話もしらないんでしょ?」
「魔剣だと⁉︎」
カティの言葉に俺様は手にしていた鍬を放り投げて目を見開き、放り投げた鍬がカティの足元に飛び、泥が飛び散り、カティの顔面へと掛かった。
「ソラ?」
「す、すまっガブ!」
カティのいい笑顔と共に俺の顔面に拳が飛んできたのだった。




