37.ドラゴンさんは踏みつける
「良い商談でした」
「そりゃよかったのう」
鼻に詰め物をしたマルコシアスがそれはもういい笑顔でそんな事を言いおる。
紙袋をとんでもなく大事に抱えておるし、詰め物をしているはずの鼻からはまた新鮮な血が滴り落ち、着ているスーツを血でまだらに染めていっておる。
紙袋を抱きながら鼻血を垂れ流すスーツの男。パッと見、不審者じゃよな。
「次回も是非によいお話がしたいものです。と言いましても今回の金額では利息分にも足りませんが」
「紙袋の中身意以外の話がいいがのぅ」
「ハッハッハ」
誤魔化すような笑い声をマルコシアスがあげる。
なんとなくじゃが紙袋の中身が察せられるしのう。敢えて断言はせんがな! また新しい下着が補充されてる気がするしな!
「ところでオリビア様、今後はどのようにダンジョンを運営していくご予定で?」
「あーどうしようかのぅ」
ダンジョン運営自体がまるで何も出来ていない。
現状は渦から湧いてるゴブリンから発生するDPを管理というか放置してるにすぎんしな。
そしてその発生するDPの貯蓄も大して増えとらん。元手がないから手をつけようがないんじゃよ。
「マルコシアス商会でオリビア様の内臓関連を担保に融資できませんか?」
「こいつ、マジで言いおったな」
ヘルガがマジで我の内臓をどうこうしようと言いよった。
マルコシアスなら確実によしと言うじゃろうに。
「もちろんと即決したいところですがオリビア様の臓器を担保なんかにしたらフィンブルス様に殺されてしまいます!」
「なんで姉様の名前がでてくるんじゃ」
姉様なら嘲笑うくらいしそうなんじゃが?
「くれぐれもよろしくと言われていますので。他の商会にも同じような事を言ってないですよね?」
「我に知り合いはそんなにおらんから言っておらん」
魔界にいる頃からぼっちじゃったからな。
なんかみんなに避けられとったし。
「絶対に言わないでくださいよ⁉︎ 下手したら人間界の地形が変わりますから!」
「お金にならないなら言いませんよ」
ヘルガ、その言い方ではお金になるなら確実に言う気じゃよな?
我の内蔵なのになぜヘルガに管理されとるんじゃろう。じゃがドラゴンの素材は高値で取引されるというし……
「正直な話、DPを融通することはフィンブルス様に禁止されておりまして」
魔法契約までさせられましたので無理なんですとマルコシアスは笑う。姉様、我を虐めて楽しんどるのか?
姉様の考えは我には理解できん。
「実家にいる時も肉ばかりじゃなくて野菜も食べろとうるさかったのじゃ!あと食べたら歯磨きしろとか!」
「融通するのを許したらズブズブと堕落した生活を送りそうですしね、マスターって」
楽できるのに楽をして何が悪いんじゃ?
あと野菜より肉の方が旨かろうが!歯磨きは面倒なんじゃ!
「というわけでDPは融通できませんがこちらを渡しておきましょう」
マルコシアスがどこからか取り出したのは一冊の冊子だ。
それを受け取りタイトルを見ると、
『バカでもわかるダンジョンの作り方』
と書いてあった。
「バカにしとるのか!」
思わず床に投げ捨てたわ!
「いえ、バカにしているわけではなくですね、タイトルはまあ、バカにしてますが」
マルコシアスが微妙に居心地悪そうな表情を浮かべていた。やっぱりタイトルでバカにするという嫌がらせじゃよな⁉︎
「我はな! 確かにバカじゃがな!」
「あ、自覚あったんですねマスター」
「だゃまれ!」
しれっとヘルガ、お主もバカにしてくるでないわ! 我ダンジョンマスターぞ! お主の雇用主!
かなり頭にきたので床に叩きつけた冊子を足でひたすらに踏み続ける。
「で、では私はこれで失礼します」
我がかなり怒っている事を察したらしいマルコシアスは転移の魔法で姿を消したのだった。




