36.ドラゴンさんはわからない
「ふむ」
ふざけた現れ方をしたマルコシアスじゃが、やはり商会の人間じゃからか買い取り品を前にしてようやく真面目な表情になった。我が提示した武具を手に取り注意深く見ておる。
「なかなかに人間界では珍しい素材を使われている装備品ですね」
「見ただけでわかる物なのか?」
「大抵の素材はですが。まあ、人間界の素材はまだわからないものも多いですが」
「これはいい物なのかのぅ?」
「剣や杖などはミスリルですね。魔力をよく通してくれて使いやすい鉱石ですよ」
人間界の鉱物なんぞ我にはわからんからなぁ。オリハルコンすら実物を見るまでは知らんかった。いや、オリハルコンという鉱物があるというのは知っておったんじゃぞ? だがあれは非常にレアな物らしいから見たことはなかったんじゃ。今は首輪で付けられとるがのぅ。
しかし、ミスリルかぁ。それをヘルガは首に叩きつけられておったんじゃが傷ひとつないのう。むしろ剣が砕けておったし。
勇者族、恐るべしと言うべきなのかミスリルが脆いのか判断に迷うのう。
「ミスリルは魔界でも取り扱いやすくて人気商品ですね。もっともこちらの武器は性能が低すぎて武器としてではなく、ミスリルとしての価値しかありませんが。むしろ武器の形をしておらずにインゴットで出された方が余計な加工の手間も入らずに価値が上がるというものです」
「インゴットの方が高いのか……」
武器の形をしただけの余分な物が取り付けられたミスリルといった扱いみたいじゃな。哀れ、人間界の職人よ。
「どれくらいで売れそうじゃ?」
まあ、知らぬ職人よりも手に入るお金のほうが大事じゃ。身も蓋もない言い方じゃと思うがお金って大事じゃしな!
「ミスリルの質。量から考えても150万くらいでしょうか」
「150万か」
「不純物がない純ミスリルなら500万は出せましたが」
同じように返してみたはいいが正直な話、それが高いから安いかが全くわからん。
我、ドラゴン!物の価値わかんない!
なにせ我はドラゴンなわけじゃしな。武器を手にしなが戦うわけでもないから価値もわからん。自前の爪と牙が最強の武器じゃしな。人間状態になったら身体こそが最強の武器防具になっとるわけじゃし。あくまで弱体化しとらなければじゃが!
つまりはドラゴンには余計な武器なんて不要ってことじゃからな。
弱体化してなければな!
「ヘルガ、150万って高いのか?」
「ミスリルの相場はわかりませんけど、売ったマスターの人形と同じくらいですね」
いや、あの人形のほうが絶対に価値があるんじゃからな! ヘルガには価値が分からんだろうが。
「人間界では珍しい鉱物ではありますが魔界では何かしらの部品としてしか使われない物ですからオリビア様が知らないのも仕方ないでしょう」
「そういうものですか?」
「ええ、魔界では魔力を伝えやすいミスリルは使い勝手がいいですから」
「ならもう少し高く買い取ってもいいんじゃないのかのう」
なにせ我には借金があるわけじゃし。
お金はいくらあっても困らんのじゃ。
「そういわれましても。ミスリルは魔界で大量に使われると同時にいくつも鉱脈が見つかったおりますのでそこまで高く買取はしていませんので」
「むー」
「くぅ! むくれた顔も可愛らしい!」
我が頬を膨らませて不満を露わにするとマルコシアスはまた鼻血を吹き出しながら我から顔を背けよる。
床に血溜まりができとるんじゃが……
「マルコシアス様」
ヘルガが音もなくマルコシアスへと近づき、手にしていた紙袋を手渡す。なんじゃあれ?
手渡された紙袋の中身をマルコシアスは覗き込み大きく目を見開いとる。
「これは!」
「これで多少は高くなりませんか?」
「ば、倍にさせていただきましょう!」
なんか高く買取されとる⁉︎




