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17.ドラゴンさん消失される

 

「うーむ、異界の本は面白いのう」

「マスター」

「ん? なんじゃ?」


 最近ゆとりができつつあるDPを使って取り出した異世界のマンガ、なる物をこれまた人をダメにするくっしょんとかいう異界のアイテムに腰掛けながら読んでいる我にいつも通りジャージを着たヘルガが声をかけてきた。

 鎧クマのタマはというと部屋の隅の方で今日は鎧を着込まずに裸で素振りをしておる。なんかスキル的な物のレベルが上がるんじゃろうか? 鎧を脱いどると完全にただのクマじゃよな。

 あれ、アイデンティティを自ら捨ててる気がするんじゃが?


「言っとくが我は何も悪い事はしとらんぞ! このマンガとやもお主から貰っておるお小遣いのDPをやりくりして買っておるんじゃからな!」


 我は手にしていたマンガをヘルガの視線から遮るように抱きしめた。

 いかにヘルガが横暴と言っても我の小遣いで手に入れた物まで取らせはせんぞ!

 気分は子供を背後に庇う動物みたいな感じじゃな!


「違います別件です」


 なんじゃ、別件か。

 ヘルガの言葉に我はホッとする。じゃが、次に別件というのがなんだったか考える。


「……戸棚に隠し扉の奥に隠してあった限定プリンも我じゃないぞ?」

「なんで戸棚の隠し扉の奥に隠してあったの知ってるんですか? あとなんでプリンって知ってるんですか? というかマスターが食べたんですね!」


 しまった! 藪蛇を突いたかもしれん。

 ヘルガのメガネが怪しい輝きを放つ。そしていつの間にか手には黄金の剣が!

 ノーモーションから繰り出される殺意の塊のような攻撃を身体を捻り、マンガを放り投げ、クッションから床を転がるようにして躱す。

 振り下ろされた黄金の剣は寸止めされる様子もなく、空中を舞うマンガを両断し、先程まで我が腰掛けていたクッションを切断しその剣から発する魔力の余波で消失させおった。

 つまり、我のDPで買った物が消失した!


「何をするんじゃ!」

「私のプリンはマスターの命より重い」


 まずい、ヘルガの目がやばい。

 部屋になんとも言い難い威圧感が満ち始め、本能が告げる危機感知に従うように更に床を転がってゆく。

 その後ろを追いかけるようにヘルガの奴がひたすらに黄金の剣を叩きつけてきよる。

 床にはそれだけで溝ができ、その余波で周りのものを吹き飛ばす。


「は、話せばわかるのじゃ!」

「それが遺言ですか?」


 メガネの奥にあるヘルガの瞳はなんとやくイッちゃってる人みたいな怪しい輝きを放っとる。

 プリン一つで我の首が危うい!


「わ、わかった! 今度我がプリンを買ってくるから許してください!」


 選択肢を誤れば我が死ぬ!

 ヘルガの持つ黄金の剣が我に振われたらいくら強い我であってもあっさりと両断されかねん。


「一個で済むと?」

「じゅ、十個くらいで許してもらいたいんじゃが……」


 一個がどれくらいの値段かはわからんのだが、あんまり個数を要求されても我のDP(小遣い)がなくなりそうじゃし。


「まあ、それで手を打ちましょう」


 ヘルガの瞳が元に戻り、手にしていた黄金の剣も姿を消す。そして部屋に広がっていた威圧感が一瞬にして消える。

 し、心臓に悪い。


「約束を保護にしたら……」


 ホッとしている我にヘルガが視線を向けてきた。その目は悪寒が走るくらいに怖い目じゃ。


「う、嘘はつかん! ちなみにどこに売っておるプリンなんじゃろか?」


 以前、食べた時もDPで補充しておこうと思ったんじゃがDPで出せなかったんじゃよ。

 だからヘルガの奴にバレたんじゃが。


「王都の有名なお店のものです。買うのに四時間並びました」

「王都、四時間……」


 食べ物のために四時間も並ぶなんて我にはできんな。

 というか人が大量におるところに自分から行きたくない。あんまり群れておると焼き払いたくなるし。

 じゃが、買わんと我の首が体とさようならをしかねん!


「が、頑張って買いに行くのじゃ」

「期待していますよ」


 こ、殺されんように頑張らなければ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 10個も買えるでしょうか。
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