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16.使い魔さんは暴れたがる

 

「勇者抹殺案内ですか」


 ヘルガが手渡された手紙を読みながら一人呟く。

 我はというと不貞寝である。二日分の努力を無に解されてはこれはもう不貞寝するしかないじゃろう?


「参加するんですか?」

「しないとうるさいじゃろうなぁ」


 ダン連の連中はさして強くはないがうるさい。その五月蝿さはヘルガの小言を容易く凌駕する。

 昨日の天気から始まり、服のシワや経済の景気についてなどとよくわからん話を滑らかに流れるように話すその手腕だけは評価するべきなんじゃろうな。

 じゃが、トップだけは邪神クラスに強いからタチが悪い。


「幸いなことに今回の勇者はあくまでも勇者候補じゃ。さらには勇者供のハイキングコースは記載されているわけだからな。落とし穴でも配置しておけばいいだろ」


 勇者候補といえそんな相手なんぞ魔王でもないのにまともにするもんではないからな。

 なにせ歩く理不尽、歩くフラグブレイカー、歩くハーレム製造機だからな。人間のくせに大量の美女を侍らすなんて生意気な!

 物にもよるが普通に戦っても勝てん相手に命をかけるなんぞは馬鹿らしいというものじゃからな。あんなものは適当に相手をするに限る。

 つまりは雑に対応してダン連の要望も満たす。


「では私が罠を……」

「いや、そんなことせんでもいいじゃろ」


 ちょっとヘルガがやる気になっとる。

 いや、ヘルガなら勇者族なわけだから勇者候補と対等に…… いや勇者候補なわけじゃからワンサイドゲームになりかねん。まともにやり合うだけ馬鹿らしい。


「私も、少し、暴れたいん、ですが!」


 ヘルガの奴は手紙を置き、いつの間にか手にしている黄金の剣で素振りしとる。

 なんか振った後の音が凄いんじゃが? あと素振りだけでダンジョンが揺れるっておかしくない?

 というかフラストレーションが溜まってるみたいじゃな。

 最近はダンジョン内の雑務ばかりじゃしな。あとゴブリンに襲われたりしてるからかもしれん。


「ダンジョン内からゴブリン共をタマに追いやらせて出撃させればいいじゃろ」


 第一階層はすでに繁殖したゴブリン共のせいでゴブリン王国になっとる。

 すでに飽和状態になっておるし、なんなら上位種まで複数生まれておる。

 これをダンジョン内にずっと置いておくのはダンジョン的には美味しいし、じゃが問題でもある。

 問題はいつ、ダンジョン災害(ハザード)が発生してもおかしくないということじゃな。

 普通、上位種が何体も発生するようなダンジョンはないからのう。

 あね様のダンジョンでも上位種なんてそんなに生まれないと言っておった。

 まあ、生まれているのはゴブリンじゃが。なんでこんなに上位種が生まれとるんじゃ?


「ゴブリンのダンジョン災害(ハザード)なんてそうそうないじゃろう?」


 下手にゴブリンの大軍なんかが統率を持って地元の街なんて襲いにでも行かれたらたまったもんじゃない。

 それで人間共に目を付けられたりしたら人間共はダンジョン攻略のためにワラワラと我の住処にやってくるじゃろう。ポイントとしては美味しいんじゃが面倒じゃ。我が出れば問題ないがヘルガが怒る。

 そんなわけじゃから勇者候補を有効活用しなくてはな。こちらはダンジョン内のゴブリンの数を減らすことができる。さらには災害ハザードを勇者に押し付けることができる。そして勇者候補が駆除したゴブリン共は我のDPとなる。勇者候補達は実戦を体験できる。まさにウィンウィンの関係じゃな!


「完璧じゃな!」

「え、どこがです? めっちゃ穴だらけじゃないですか」

「まあ、どうせ勇者候補に嫌がらせをするだけなんじゃから真面目にする必要もあるまい」


 ダンジョンをデカくするとかそういった目標などがあれば別じゃが厄介元である勇者と危険を冒してまで戦う気は昔の我ならともかく今の我にはない。


「まあ、勇者候補が来たら適当にゴブリンをけしかければいいじゃろ。その時ならヘルガ、変装してお前が多少暴れても問題あるまい」


 あわよくばついでに勇者候補をぶっ殺しても問題ない。

 どうせ復活するんじゃし。それでもダン連の奴らは喜ぶじゃろうしな。


「変装」


 ヘルガは俯きながら何かを検討するように我の部屋から去り、誰もいなくなった部屋の床に溢れたスープを我は涙ぐみながら拭き取るのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 多少ですみますかねー。
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