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91、浦上(うらがみ)動く

永禄四年(1561年) 十月下旬 摂津国 有馬郡 道場(どうじょう)(じょう) 三上(みかみ)(ひで)(なが)


「六角は()めているようですな」


 鳥養兵部丞殿(とりかいひょうぶのじょうどの)が嬉しそうに言う。六角は仲間割れしている。赤松と宇野、別所(べっしょ)()めているらしい。赤松と宇野は三好と和議を結ぶべしと息巻き、別所は波多野がいるのだから決戦をするべきだと言っているとか。元々烏合の衆だ。後藤(ごとう)但馬(たじま)(のかみ)も困り果てているという。


浦上(うらがみ)遠江守(とおとうみのかみ)も一万三千の軍勢を動かすそうだ。はっはっは。虎福丸め、やりおるわ」


 岩成(いわなり)主税(ちからの)(すけ)殿(どの)が豪快に笑った。そうだ。浦上が若に言われて動いた。播磨に向けて兵を動かした。播磨には留守の兵がいるが、守りは薄い。好機(こうき)と見たのだろう。浦上に使者を送ったのが若だった。我が主ながら、恐ろしいお人よ。これで六角も逃げ腰になるだろう。


「六角は兵を退くだろう。そこで一気に攻める」


 筑前(ちくぜん)(のかみ)殿(どの)が言う。(うなず)く者が何人かいる。


()次郎(じろう)殿(どの)、有馬郡を攻め取った後、虎福丸殿に差し上げまする。三好と伊勢、仲良く致しましょうぞ」


 筑前守殿が笑みを浮かべて語りかけてくる。新しき領地か。これからが大変となろう。







永禄四年(1561年) 十月下旬 播磨(はりま)(のくに) (べつ)名城(みょうじょう) 大広間 宇喜多(うきた)直家(なおいえ) 


「三郎右衛門、六角は慌てて戻って来るかな」


 主である浦上(うらがみ)遠江守(とおとうみのかみ)(さま)が歯を見せながら言う。


「戻って来なくても、赤松や宇野は勝手に領地に帰ってしまうでしょう」


 笑みを浮かべながら答えると、遠江守様は大きく(うなず)いた。


「はっはっは。赤松め、慌てて戻ってももう遅いわ。播磨は浦上の物となると言うのに」


 遠江守様が笑うと、重臣たちも笑う。播磨はがら空きだ。摂津攻めで赤松は出払っている。そこで幕府の伊勢虎福丸から播磨を攻めてはどうかと申し出があった。私はその申し出に乗った。このままでは毛利か、尼子に潰されるだけだ。殿も私もみすみす殺されたくはない。大内一族は根絶やしにされた。毛利元就、恐ろしい男よ。浦上も宇喜多もいずれ飲まれる。その時に首を刎ねられぬという心配はない。


 虎福丸の申し出は渡りに船だった。殿も私も喜んだ。しかし、三好筑前守ではなく伊勢の童子がこのようなことを思いつくとは……。恐ろしい事よ。ただ面白くはある。毛利元就よりも面白い男かもしれぬ。


「まずはこの辺りで休むとしよう。赤松が野戦を仕掛けてくるなら、備前に引き込んで蹴散らしてくれる」


 殿が自信ありげに言い放つ。重臣たちから賛同の声が上がった。戦か。赤松を飲み込めば、浦上は大きくなる。もしかすると、毛利と戦える程の……。その方が良い。人に頭を下げるのは好かぬ。虎福丸には礼を言わねばな。これは私にとっての好機(こうき)だ。


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