表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

200/248

200、園部攻略

永禄六年 (1563年) 一月上旬 丹波(たんば)(のくに) 八木城 伊勢虎福丸


荒木(あらき)山城(やましろ)(のかみ)(うじ)(よし)、こちらに返り(ちゅう)(よし)


 弥七郎が俺の部屋にやってきて言った。首尾は上々だ。園部の領主たちは弥七郎の調略に応じた。荒木(あらき)山城(やましろの)(かみ)がその代表だ。


 俺は新庄城の守りが固いと見て、西の園部に注意を向けた。園部は山に囲まれたところに平野が広がっている。肥沃な土地だ。開墾(かいこん)すれば生産力は格段に上がる。欲しい。そう思う。


 荒木たちの寝返りは信じない。どうせ罠だろう。巫女に化けたくノ一が園部では目撃されている。弥七郎の目はごまかせない。


 波多野孫四郎は悔しいだろう。戦で活躍もできず、家臣も次々と俺に寝返っている。ここで荒木を使って一泡(ひとあわ)()かせる、そんなところか。


 いいだろう。策に乗ったふりをして騙してやる。


「弥七郎、園部の地を攻めるぞ。兵は四万を集めようと思う。新しい兵も増えたし、(きた)えるのに丁度いい」


「良きお考えかと」


 弥七郎が笑顔で(うなず)いた。


山城(やましろ)(のかみ)を罠に()める。そうだな。俺が(とく)雲寺(うんじ)に向かう。つまり、本陣が(おとり)になる」


 弥七郎が目を見開いた。作兵衛や三郎(さぶろう)兵衛(びょうえ)もだ。


「若、危ないですぞ」


「大丈夫だ。すぐに引き返す。振りだけだ。敵は慌てるだろう。追ってきたところでこちらも奇襲する。そうでないと小山城(こやまじょう)(こも)られると厄介だ。野戦で山城(やましろの)(かみ)を叩いておく。それで良かろう」


「ですが……」


 三郎(さぶろう)兵衛(びょうえ)眉根(まゆね)を寄せる。危険が大きすぎる。そう思ったのだろう。危険だがやるしかない。あまり園部攻略に時間をかけていれば新庄(しんじょう)(じょう)の敵が南下してくる。ここは園部を手にし、波多野の力を()いでおくことだ。俺が強く言うと皆黙った。よし、この作戦で行こう。


 多少無茶しないと山城(やましろの)(かみ)も追ってこないだろうからな。










永禄六年 (1563年) 一月上旬 丹波(たんば)(のくに) 小山城(こやまじょう)付近(ふきん) 伊勢虎福丸


 次々と()り出される兵に山城(やましろの)(かみ)の軍はたじたじになった。やはり伏兵がいた。およそ二千程だろうか。俺が(とく)雲寺(うんじ)に布陣すると偽情報を流すと取り囲むように部隊が配置されていた。


 俺は一万の本陣で退いた。もちろんわざとだ。山城(やましろ)(のかみ)の軍は調子に乗って城下町に兵を出してきた。ここに伏せておいた兵を決起(けっき)させる。その数四千。民家に隠れていた部隊に山城(やましろ)(のかみ)は気づかなかった。それと三郎(さぶろう)兵衛(ひょうえ)の堤軍二万をうろうろさせた。小山城に近寄らせないふらふらした動きだ。山城(やましろ)(のかみ)はこの動きにも(まど)わされた。小山城の北に山がある。そこに蜷川(にながわ)丹後(たんご)(のかみ)の二万が布陣している。丹後守が一気に南下して本陣に加わった。油断した山城(やましろ)(のかみ)の軍は蹴散(けち)らされる。


「若、小山城が落ちました」


 作兵衛が嬉しそうな顔で報告してくる。山城(やましろ)(のかみ)は山に逃げ込んだようだ。


「良い。良いぞ。フフフ」


 俺は笑うのを止められなかった。難航(なんこう)すると思われた小山城がこうもあっさり手に入った。


 もう園部の中心地は俺の物になったのだ。俺は城下町を手に入れた。


 肥沃(ひよく)な地がまたしても俺のモノになったのだ。これが笑わずにいられるか。


「作兵衛、小山城に入るぞ」


「ははっ」


 作兵衛が喜色(きしょく)満面(まんめん)で言う。伊勢軍の志気は高い。良いことだ。この勢いを殺してはならんな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ