表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

180/248

180、今岡城攻略

永禄五年 (1562年) 六月上旬 丹波(たんば)(のくに) 今岡(いまおか)(じょう)  伊勢虎福丸


 殺気立(さっきだ)っているな。俺は家臣たちを見回す。福井の重臣が並んでいる。俺を(にら)みつける者。不快そうに顔を(ゆが)める者、それぞれだ。


「虎福丸殿、何故ここに来たのだ。我らは敵同士。足利(あしかが)(たか)(うじ)(こう)の子孫たるそれがしは(いさぎよ)く伊勢軍と戦って死にたい。一族郎党、妻も子も覚悟ができておりまする」


「早まられるな。尊氏公とて九州に逃げて再起(さいき)(はか)った。足利はしぶとくずるく生きていくべきだ。公方様も毛利を頼って逃げて行ったではないか」


「尊氏公……言われてみればそうだが……」


「ここで滅ぶのも美であろう。だがな、因幡(いなば)(のかみ)殿(どの)、足利の親類衆として我が家で力を使うべきだ。尊氏公ならば降伏してでも生き残りますぞ」


「……」


「では波多野につきますか。波多野孫四郎(はたのまごしろう)悪逆(あくぎゃく)の振る舞い、武士とは思えぬ非道(ひどう)なり。丸岡城も奪って己の物にしようとしますぞ」


「何を言う。孫四郎殿は礼を重んじ、福井家を立ててくれる」


 福井(ふくい)因幡(いなば)(のかみ)は怒ったように言う。甘いな。利用されているだけだ。


「足利の()を借りたいのでしょう。では越中(えっちゅう)(のかみ)殿(どの)はなぜ死んだのだ。越中守の侍女が毒を盛ったのだ。そうに違いあるまい。孫四郎は信じるにあたらぬ」


 波多野(はたの)越中(えっちゅう)(のかみ)晴通(はるみち)は波多野の前当主だ。二年前に病死した。忍びを使って調べさせたが、女中が毒を入れた可能性が高かった。恐らくこの女はくノ一だろう。


「その女中を(とら)えて()い詰めました。もう口は割った。次は福井(ふくい)因幡(いなば)(のかみ)殿(どの)を討つつもりであったと申しておりましたぞ」


「まさか。信じられるか」


「嘘だと思うなら密書を見せましょうか。ほら」


 俺は密書を十通取り出すと、因幡(いなば)(のかみ)の家臣に渡す。もちろん偽造(ぎぞう)したものだ。もちろんくノ一も捕えてはいない。こちら側の用意した偽物だ。ただ福井(ふくい)因幡(いなば)(のかみ)極限(きょくげん)の緊張状態にある。疑心暗鬼に(おちい)る可能性は高い。


 時間が立つと福井(ふくい)因幡(いなば)(のかみ)が重い息を吐く。


「波多野孫四郎め、我が娘に懸想しておったとは。不届き至極」


 偽物の書状の中に本物もある。因幡(いなば)(のかみ)の大事な二人の娘を孫四郎が欲しがっているというものだ。足利の姫に波多野の子を産ませる。どす黒い欲望を感じる気持ち悪い書状だ。


「足利を、我らを(ないがし)ろにする波多野孫四郎はもう許せぬ。虎福丸殿、福井一門衆、虎福丸殿にお味方致す。この福井(ふくい)因幡(いなば)(のかみ)、伊勢家の家臣となって伊勢家を盛り立てまする!」


 因幡守が平伏する。重臣たちもだ。俺はホッとする。どうやらうまくいったようだ。さらなる領地開発、内政に力を振るうことができる。


 人材が(そろ)う。奉行所も拡張(かくちょう)せねばならんな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ