表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おない年の兄妹  作者: 沙悠那
SPICY APPLE PIE
57/66

Episode15 思わぬ来客に……


 明日になれば、幾美ちゃんが学校に戻ってくる。負けないぞと決めたあたしは、幾美ちゃん不在の中、がんばって学校に登校している。幸い休み時間は有未香のクラスで過ごし、お昼も一緒に食べてくれている。有未香のクラスでもねっとりとまとわりつくような視線を感じないわけじゃないけれど、一緒にいてくれる人がいるってだけで気持ちは随分と楽に思えて、有未香には感謝している。


 お昼休みになって、有未香のところに向かおうとした時、メグたちが側に寄ってきた。どうして? いつもは完全無視なのに……。

「ちょっと、あんたね有未香に優しくしてもらっているようだけど、あんたって確か有未香から今の彼氏を略奪したんじゃなかったっけ? よくそんなことしておいて有未香の行為に甘えられるよね。あたしだったらそんな無神経なこと絶対にできないなあ。ねえ、みんなだってそう思わない? この子って図太すぎるよね?」

「そうなの!! なにそれ、信じらんない。有未香の元カレ獲ったんだ」

 あたしとメグの周りにクラスの皆が寄ってきて、あたしに対してのブーイングの言葉があちこちから掛かり嫌な空気が渦巻く。悔しくて哀しくて仕方がない。突っ立ったままで机に付いた手のひらに力がこもり、指はわなわなと震えだす。絶対に涙なんか流すもんかと奥歯を強く食いしばりながら耐えた。

 仲良くしていた分だけメグはあたしに裏切られた気がして腹を立てているんだと思う。容赦なくあたしを攻撃してくる。これが女子高の怖いところでもあるんだ。面白がっているのか便乗して嫌がらせを始める子たちまで日増しに増えてきて、ほんとにもう限界、堪られないよ。明日までもつのかな、あたし。


「ちょっと、あんたらいい加減にしなよ。瑠花ん家の事情も知らないくせに勝手なことばっか言ってんじゃないよ」

「幾美ちゃん! なんで?」

「ただいま。さっき戻ったばっかなんだけど、瑠花のことが気が気じゃなかったから来たんだよ。やっぱりね、こんなこっちゃないかと思ってたんだ。でさあ、あんたら好き勝手な中傷してるけどさ、いったい瑠花の事どこまで知ってるっつーの?」

「……」

 幾美ちゃんが凄みを利かせた声を張ると、しーんと静まりかえった教室。

「ほらね、訳わかんないくせに言ってんじゃないよ。誰が同棲なんて不確かな情報ぶちまけたか知らないけどね、瑠花と彼氏はね、親同士の再婚で一緒に住むことになったんだよ。ちゃんとした理由があるんだからね」

「けど、兄妹で付き合うってのはどうかな」

「そう? あたしは有りだと思うんだけどなあ。もしもだよ、急にカッコいい男の子と家族になって暮らすことになったとしたら、あんたらだってどきどきしたりしない? ときめいたりしないって言い切れる? 博子あんたはどうなの?」

「う、うーん、気にならないって自信は……ない、かも、しれない」

「あ、あたしも……」

「でしょ。メグは?」

「あたしはそんな不純なこと絶対にあり得ない。血が繋がってなくったって家族は家族でしょ。不潔だよ」

「まあ、いいわ。わからない人には無理に理解してもらわなくても。けど陰険なことはこれっきりにしなよ。いい? あたしがちゃんと見張ってるからね。卒業後の合コン企画のことみんな忘れてないはずだよね? 今回は卒業記念ヴァージョンでイケメン揃いだって告知してあったと思うけど、かなり期待してくれていいよ。けどさ、あたしがそっぽ向いたらあの企画は忽ち立ち消えになるってことわかってるとは思うけど念のためここで言っとくね」

「えーそれは、ちょっと。楽しみにしてるんだもん。それだけは幾美ちゃん勘弁してほしい」

「じゃあ今まで通り、瑠花と仲良くしてやって」

「うん、わかった。今までごめんね、瑠花」

「ううん」

「七海、あんたこの間から、わざと瑠花の机にぶつかって嫌がらせしたりしてたよね? 七海の彼氏もあたしが紹介してあげたんだからね。あんたの意地の悪さを彼氏に伝えとこうか? 男の子って女の子のそういうところ嫌いなんだよね」

「もうしないからさ、彼氏にはちくらないで。お願い!!」

「瑠花に謝ったら考えてあげてもいいけど」

「ごめん。ちょっと面白がって冗談がすぎただけだから、もうしないよ」

「う…ん、もういい、よ」


 すごいなあ。幾美ちゃんのパワーで皆は終始圧倒されて、納得させてしまうところがすごい。切り札っていうのは合コンで培ってきた人脈のことだったんだ。グループ行動しない幾美ちゃんだけど、合コンの開催を趣味とし、皆に斡旋しているだけあって人望が厚いというか、毅然とした態度や言葉に誰も文句が言えなくなっちゃう感じだ。

 ただ、メグたちには通用しなかったみたい。

 その後も口は聞いてもらえないまま。嫌がらせはないものの無視される状況は変わらなかった。



「今日さ、鍋やる予定だから家においでよ。鍋はにぎやかにやるほうが絶対に楽しいからさあ」

「うん、いくいくっ」

 帰りは幾美ちゃんと材料を揃えるためにスーパーマーケットに立ち寄ってから、マンションへと向かった。

「今日はそっちの和室にテーブルだしてやるから、折りたたみのテーブル運ぶの手伝ってよ」

「OK」

 結構な大きさのあるテーブルを納戸から運びだして脚を伸ばし和室の真ん中に配置した。それからふたりでキッチンに向かい鍋の準備を済ませ、ダイニングで紅茶を飲みながら中村先生たちの帰りを待つことにした。

「そうだ、この間頼まれてたパンフレット類、忘れないうちに渡しておくよ。取ってくるから待ってて」

 その時玄関のインターフォンが鳴った。

「あっ、あたしがでるよ」

 幾美ちゃんの代わりに玄関へと向かい、鍵をあけ扉を開いた。

「?? 有未香!!」

 てっきり中村先生か魁人くんだと思って扉を開けると、目の前に有未香が立っているんだもん、びっくりしちゃった。

 有未香のすぐ後ろににっこりと笑う晴哉くんまで。

 なんだろう、この顔ぶれって? いったい、なにが始まるっていうの?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ