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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
SPICY APPLE PIE
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Episode11 幸せな空気


 美弥ちゃんに電話をいれて、今晩は幾美ちゃん家で夕飯をご馳走になることを告げた。もちろん、今日学校をサボったことは内緒なんだけど。


 ふたたび、制服へと着替えなおしてダイニングに向かうと、幾美ちゃんが料理をしているところだった。

「幾美ちゃん、あたしも手伝うよ。なにしたらいい?」

「今日はお鍋だから、そんなに手はかからないし、そこ座ってて」

「料理はいつも幾美ちゃんがしてるんだ」

「だいたいはね」

 手際よくテーブルの上に着々と鍋の準備がのせられていき、真ん中には土鍋がセットされた。


 ピンポーン

 お家の人が帰ってきたみたいだ! ちょっと緊張する。ちゃんとご挨拶しなきゃ。


 幾美ちゃんが廊下へと向かい、再び戻ってきた後ろには、あれ?

「いらっしゃい田中さん。また会えて光栄だよ」

 笑顔でそう言うのは、先生! 幾美ちゃんの彼氏の中村先生だ。そっか呼んであったんだ。

「おじゃましてます」

「よおー、瑠花ちゃんっ」

 あれれ、いつの間にか魁人くんまで。

「さあ、早くみんな席について。鍋はじめちゃうよ」

「幾美ちゃん、家族の人は待たなくていいの? 先はじめちゃってていいの?」

 魁人くんがくすくす笑っている。なにか可笑しいこと言ったかな、あたし?

「家族はこれで勢ぞろいしてるよ、俺たち3人で暮らしてるからさ」

「え、えーーー?」

「ぷっ、おっかしい、その素っ頓狂な顔!」

 ちょっと魁人くん! 誰だっておどろくでしょ、この状況は!

「あたしね、去年から頼人と一緒に暮らし始めたの。同棲よ同棲。こういうのが本当の同棲っていうのよ。約1名邪魔なのが転がり込んできたのは誤算だったんだけどね」

「おいおい、邪魔なのってなんだよ。俺は兄貴と兄弟なんだ、ここからのが学校ちけーし、別にいいだろ」

「別に悪いとは言ってないでしょ」

 ちょっと、ちょっとやり合わなくても、いいんじゃ。

 そうだったんだ。幾美ちゃん同棲してたんだ。あたしは先生とずっと付き合ってた事実を知った時も驚いたけど、こうして一緒に暮らしていることには正直もっと驚いた。学校ではまったくわからない両方の事実。幾美ちゃんのようにタイトに生きていけたら、あたしももっと楽なのになって思った。どうしてあたしだけ、あんなことになっちゃったんだろう。

 誰のいやがらせ? まさか、まさかとは思うけど有未香じゃないよね?

 ううん、そんなはずない、有未香はあんなことするようなずるい子じゃない。今は晴哉くんという素敵な彼氏だっているんだもん。祥大のことはもう、もう吹っ切ってくれてるはず……。


「どうした? ぜんぜん箸進んでないよ。俺がよそってあげよう」

 中村先生があたしの器を取って、寄せ鍋のいろいろな具材を彩りよくよそって手渡してくれた。

「おいしいだろ。キミーはけっこう料理が上手いんだよ」

「確かにな。それは俺も認めてやる」

「おまえがえらそうにいうなよ。キミーは俺の女なんだぞ」

 幾美ちゃんはにこにこと楽しそうにふたりのやり取りをみつめている。

 幸せな空気がここには充満している。

 食後に紅茶とクッキーを勧めてくれて、それを食べたあと、中村先生が車で家の前まで送ってくれた。




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