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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
SPICY APPLE PIE
50/66

Episode8 誰だよ? (S-side)


 腰に振動が伝わってくる。

「またかよ」

 知らないメアドから受信する不可解なメールが届くようになって1週間。時間帯は決まっていて朝と昼休みの頃と夕方、それに夜に2回だ。相手は俺のことを知っているのか、親しげにおはようだの、おやすみだの、馴れ馴れしい限りだ。

「なに? 瑠花ちゃんからのラブメか」

 昼飯を済ませ、廊下にでて溜め息まじりに開いた携帯を横から覗き見しようとしてくるのは、隣のクラスにいる晴哉だ。

「見るなよ」

「瑠花ちゃんってば、そんなやばいこと書いてくんのかよ。いいから見せろや」

「瑠花はそんなやつじゃない。なあ晴哉、おまえの携帯に知らないやつからメール届いたりすることってあるか?」

「なに、おまえもしかして瑠花ちゃん以外の子とメールしてんのか」

「そんなんじゃねえよ。勝手に送られてくんだよ、朝・昼・晩と1日に5回も。おまけに無言電話までかかってくる」

「そりゃあれだわ。おまえを呪ってるやつの仕業だろ。瑠花ちゃんと出会う前の祥大は節操なかったもんな。くっくっ、きっと誰かに恨まれてんだろ」

 おまえにだけはそのセリフ言われたかねえよ。こいつ、久しぶりに話しかけてきたかと思えば、面白半分でやなこというやつだ。

 俺が人に恨まれてる?

 なんでだよ、薄情だったかもしれないが付き合ってる子と別れるときは、それなりの段取りを踏んできたつもりだし、それならなんで今さらなんだって俺は訊ねたい。

「女とは限らないな。過去に祥大に女を取られたやつの憂さ晴らしかもしれねえしな。背後から刺されねえように注意して歩けよ。じゃあな」

 他人事だと思って好き勝手なことのたまっていきやがった。俺は真剣なんだぞ。マジで刺されたりした時には晴哉を呪ってやるからな。




 着信音が鳴る。

 出なきゃいいのに携帯を握りしめ耳に押しあててる俺。

「あんた誰? 俺のこと知ってるんなら声だせよ。話があるんなら聞く」

「…………、ツー、ツー、ツー」

 また無言で切りやがった。いったい誰なんだよ。俺に本気で恨みを持ってるのか? それにしては親しげなメール送ってきたりするし、大抵はその日の天候だのどうでもいいような文字が並んでいる。恨んでるやつがわざわざそんなこと書いてくるわけがない。

 あー、もう、さっぱり、わけわかんねえよ!




 カチャリ

 瑠花が伺うようにして俺の部屋の扉を細く開け、顔をひょこっと覗かせている。

「どしたの? 入れば」

「部屋の前まで来たら着信音がしたから廊下でしばらく待ってたの。もう話は終わった?」

「ああ、たいした電話じゃないから」

「もしかして……女の子だったりする?」

 瑠花が遠慮がちに訊ねてくる。

「心配か? こっち来いよ」

 パジャマ姿の瑠花がとぼとぼと俺の傍まで歩いてくると、首に腕をまわして耳元で囁く。

「一緒に携帯ショップ行っただろ。俺の携帯は新規にしてデータも移行しなかった。だから携帯の番号知っているのは家族と親しい連れだけ。俺がおまえに誠意をみせたの忘れたか?」

 腕の中でぶんぶんと必死になって首を横に振り、意志を告げようとしている可愛い姿がある。

「疑ったりしてごめん」

 心配させたくはないから、無言電話のことは瑠花には一切話していない。

 そうだ、そうなんだよ。

 俺の番号やメアドを知ってるやつなんて限られてんだ。

 だったら、あのメールに無言電話、誰の仕業なんだって話になるわけで。

 誰だよ? 俺にいやがらせしてくるやつは……いい加減名乗り出ろってんだ。




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