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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
SPICY APPLE PIE
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Episode5 また今年も同じことが起こる?


「ぜんぶ誤解なんだよ、瑠花。だから祥大くんのこと責めないであげて」

 観覧車での祥大とメグの抱擁シーンを目撃してから、何回この『誤解』って言葉を耳にしたことか。メグが高所恐怖症で高いところを怖がって、祥大がメグを気遣っていたら、ああいうことになったって?!

 あーーっ、もう頭を整理しようとすると、どうしてもあのシーンが甦る。やだやだ、考えるのはもうよそう。

 あの日以来あたしの祥大に対する態度はよそよそしい。肩を触れられるだけでもイヤなんだ。祥大がメグに心変わりしたわけじゃないことくらい、重々承知しているくせに、どうしてだか祥大の顔をみるだけでイライラしてくる。




「おかえり」

「あ、うん」

「まだ俺のこと怒ってるのか? だいたいさー、おまえがメグちゃんと一緒に観覧車に乗れとか言うから悪いんじゃないか」

 祥大がメグちゃんって言うだけで、余計イライラしてくるあたし。

 こんな雰囲気のまま、冬休みに突入し、お正月を迎えることとなった。

 美弥ちゃんが腕によりをかけて作ってくれたおせち料理が、ダイニングテーブルの真ん中に並べられ、あたしと祥大は向かい合って座り、お互い視線のやり場が定まらず。あたしはお重の中へと意識的に視線を集中させてる始末だ。

「さあ、始めようか。今年もみんなが健康で良い年を送れるよう年神様に感謝しておとそで祝おう。順番にまわすから、祥大と瑠花ちゃんは口だけつけるようにして」

 緊張しながら盃にそっと口をつけて、祥大へと差し出した。おとそを受け取った祥大は、盃に口をつけるなり、勢いよく傾けぐっと飲み干してしまった。

「おいおい、祥大おまえまだ未成年だぞ。酒はまだ早い。へんな癖つけないでくれよ」

「いまどきそんなだせーこと言ってたら笑われるぜ、おやじ」

 なんだか一年前のお正月が甦ってくるようだ。祥大ったらだるそうに座り崩しながら、おせちを食べ始めている。そうだ、あの時はろくに食べもしないで席をたち、さっさと家をでていってしまったんだった。今年もまた同じことになるんじゃないかって不安がよぎる。まさか、女の子と会う約束なんてしてないよね? 相変わらず女の子にはもてているみたいだから心配になってきた。

 けど、そうだ。祥大ったら、けっこうがっつりと美弥ちゃんの作ったおせち料理を食べているもの。去年とは違うよ。

「なんか俺の顔についてる?」

「えっ、う、ううん。なんでもない」

 びっくりした。あたし、そんなに祥大のことガン見してたかな?

「ごちそうさま。美弥ちゃんのおせち、どれもこれも全部おいしかったよ」

「祥ちゃんがそう言ってくれるの、すごく嬉しいのよわたし」

「俺じゃ嬉しくないのかい?」

「そうじゃないけど、だったらあなたも褒めてくれたらいいでしょう?」

「ばかだな、美弥の作ったものは何だっておいしいに決まってるじゃないか」

「もう、あなたったら子供たちの前でやだわ」

 あーあ、正月早々うちの親たちったら。まだ新婚気分が抜けきれてないみたいだね。ラブラブでさ。去年は確か、ふたりについて初詣に行ってあてられっぱなしだったんだよね。

「俺、そろそろ出かけるよ」

 うそ!! それじゃあ、去年とまったく一緒のパターンじゃない!

 祥大は席を立つと、いつの間にか用意していたダウンジャケットをリビングで着込み始めた。

「家族で初詣に行かないのか、祥大?」

「俺は遠慮しとく」

「だったら今年も瑠花ちゃんと3人だけだな」

 え? またあたしも一緒なの!? やだよ、あたし今年は遠慮しとく。それより……。

「早く支度しねえと置いてくぞ」

「あ、あたしも一緒に行っていいの?」

「いやなら別にいいけど」

「やじゃない、行く行く行くーーっ。待って」

 今年は去年とは違う!

 祥大の声に弾んだ笑顔で答え、あたしは急いでジャケットを取りに部屋へと駆けあがっていった。




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