Soda13(R-side) そういえば……
メグにガクくんを引き合わせてから3日が過ぎ、今日は金曜日。
メグの話だと、明日はガクくんとふたりで会う約束をしたらしいの。やった! 初デートだ。あたしまでどきどきしてきちゃうよ。今から月曜日にメグからデートの話を聞くのが楽しみでしかたがないよ。
「瑠花たちも週末はデートなんでしょ? いつも、どんなとこに行ったりするの? 参考までに教えてよ」
メグに質問されちゃったけど、あたしたちって特別週末だからって遠出をしたりって、実は一度もない。近くにショッピングに行ったりするくらいだ。
そういえばデートらしいデートなんてしたことがなかったな。なんで今までそのことに気づかなかったんだろ、あたし。
ひとつ屋根の下で暮らしているから、わざわざ待ち合わせしなくったっていい。祥大はあたしの部屋の隣にいるんだもの。ノックひとつでいつでも祥大に会える。だから、デートするなんてこと考えてもみなかった。
あたしもデートしたい。祥大と一緒にでかけたい。メグからの質問に答えることを忘れて、頭は欲望と妄想でいっぱいになっていた。
「ねえ、瑠花聞いてるの?」
「あ、ごめん。デートって言っても、遠出はまだしたことないんだ。付き合いだして日が浅いからさ。これじゃ参考にならないね」
「そっか。そっか。だったら今度さあ、4人で遠出したらいいじゃん」
「うん、そうだよね。メグはガクくんとこのままうまくいきそう?」
「それはどうかわかんないよ。まだ一度会っただけだもん。好きになるかどうかもわかんないし」
そりゃ、そうだよね。4人で遠出しようとか持ちかけるくらいだから、もっと積極的に付き合うこと考えてるのかと思っちゃった。意外とテンション低めなんだね。
ガクくんって優しそうだし、いい子だと思うから、ふたりが付き合ってくれると嬉しいんだけど。それに4人でWデートしたいよ。
うちに帰ったらさっそく、祥大にメグとガクくんが明日デートするってことを伝えたの。メグのガクくんに対するテンションもついでに付け加えておくと祥大はこう言った。
「そりゃ、メグちゃんだって、いい方向に向かうことを願いつつ、不安でもあるだろ。ひとりで突っ走るわけにはいかないだろ恋ってやつは。ふたりの気持ちが同じ方向向いてなきゃだめなんだからさ」
「相手も自分を好きになってくれないと成立しないもんね」
「だよな。ちゃんとわかってんじゃん。だったら、メグちゃんのことを温かい目で見守ってやりなよ」
わかったよ。祥大の言う通りだよね。最近祥大って少し感じが変わったよね。あたしはそう感じるよ。なにがって言われると、うまくは表現できそうにないんだけど、なんとなくそう感じるんだよね。以前より精神面でもふたりの距離が近くなったからかな。それでそう感じるのかな。あたし自身、以前は祥大に対して悪態ついてばっかだったしね。自分が変われば相手も変わるってこと? たぶんそれだね。
「おい、またひとりで空想に浸ってるなおまえ。俺を置いてくなよ。おまえが楽しそうに浸る世界に俺も一緒に連れてけ」
言いながら祥大は、あたしにじゃれついてきた。
「ちょ、ちょっと待って。あたし今日ね大事なことに気づいたんだよ」
「なんだよ、それ」
ちょっと大げさなほどに、声を大にして言ったものだから、祥大は驚いて、タッチしてきた手を止めて、次の言葉を待っていた。
「あたし、祥大と一度もデートしたことないんだよ。ふたりで休みの日に遠出したりしたことがないの!」
「ぷっ、そんなことかよ、大事なことって」
なんでそんなこととか言うかなあ。大事なことだよ、あたしたち恋人同士でしょ。
「怒ったの瑠花? ほっぺ膨らませて拗ねてんだ。かわえーー」
あたしは真剣なのにおちょくったりしてもう。
「やめ、やめて、くるしいよ」
ぎゅぎゅって祥大の身体の中に格納されて、息する隙間がないくらいに抱きしめられている。近くに感じる祥大の鼓動。胸が熱くなるような祥大の匂い。
こうやっていつも、あたしは心身の自由を奪われていくんだよね。むっとすることすら許されないなんて。ずるい男だよ、祥大ってやつは。
「どこでも瑠花の好きなところに連れってってやるから、明日の朝までに考えときなよ」
心臓がきゅぅーっとなった。かっこよく言い放たれた言葉に祥大の愛情が込められていて、すごく、すごく嬉しかった。
待望の祥大との初デートだ。
明日はどうかいいお天気に恵まれますように。




