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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
CRANBERRY SODA
38/66

Soda11(R-side)  ついうっかりと……


 真新しい木の香りが優しく漂う店内は、ブラウンオークの色調で統一されていて少し落ち着いた雰囲気がある。昇華学校の近くに新しくできたカフェは、特別目を惹くような建物もない都会に成りきれないこの町で、ひときわ目を惹く存在となった。

 あたしとメグは、4人掛けのテーブル席に不自然に横並びをして座っている。

 運ばれてきたお水は、ほんのりレモンの風味がする。「おいしいね」って言いながら、飲んではコースターの上に置いてを繰り返しているうちに、とうとうコップは小さな氷の欠片だけになっていた。

 水にばかり手を伸ばすのは、そわそわしている証拠で、ふたりともまるで落ち着かないといった具合だ。

 以前、晴哉君を紹介してもらった時も有未香とふたり、こんな感じだったっけ。あの時と今日とでは、あたしの立場は違っている。初めて祥大を友達にお披露目する。そのことにあたしは緊張しっぱなしなんだ。友達と祥大の間で、不自然なくいつも通りの調子で居られるのか、すごく心配で。

「メグ、一回深呼吸しようよ。深呼吸」

「うん、そだね」

 大きく息を吸って、そして少しずつ吐きだしていく。それを何度か繰り返し、ふぁーって腕を伸ばしていく途中、入口から祥大が入ってくる姿がパーテーションのガラス越しにみえた。そのまま腕を上げ、大きく左右に振って、祥大に気づいてもらおうとした。

 よかった、意外とすぐに気づいてくれて。

 祥大と友達がゆっくりとした歩調でこちらに歩んでくる。

「来たよ、メグ」

 その言葉にメグは居住まいを正して、固まってしまう。

 横並びで座るあたしたちの前に、ちょうど同じような背丈の男の子がふたり立ち止まった。

「そっち座って」

 手で座席を指し示しながらそう言った。

 なんとなくぎこちない空気がたちこめる中、なんとかしなきゃ。気持ちが焦り始める。

 ねえ、なんとかできないの? 祥大!

 視線で信号を送ろうとしたタイミングで、店員さんがオーダーを取りにきてくれた。

「ご注文はお決まりですか?」

 いいタイミングできてくれたおかげで、なんとか間が持ちそうだと胸を撫で下ろす。

 メニューをテーブルの真ん中に開いて置くと、4人の視線は一斉にメニューへと向かう。

 あ、あたしはこれだ。目に飛び込んできた品名に反応し、すぐに決めることができた。

「どれにするか決まった?」

 祥大は優しい声音で、メグに声をかけてあげている。

「うーんどうしようかまだ迷ってて。瑠花はどれにするか決まった?」

 今度はメグがあたしに質問してきた。

「あたしはこれ、クランベリーソーダにするの」

 幾美ちゃんがあたしのイメージに合ってるって言ってくれた飲み物なんだ。だから思い入れがあるの。ここのメニューにもあったことが感動だよ。

「あたしもそれしてみようかな」

 緊張ぎみに祥大へと意思を伝えているメグ。女の子っぽくて可愛い。

「ガクは決めた?」

「俺はアイスコーヒーでいいや」

「じゃあ注文するぞ。店員さん、クランベリーソーダがふたつと、アイスコーヒー、それとコーラをひとつお願いします」

「ぷっ」

 あたしは思わず噴きだしてしまった。

「なに噴いてんだよ」

 すかさず祥大から声が飛ぶ。

「だって、祥大ってほんとコーラが好きなんだなあって思って。う……」

 あっと! 危ないところだったよ、今。

「家でもコーラばっか飲んでるくせにここでもコーラ頼むんだね」そう、口走ってしまいそうになり、すぐに口に手を当て食い止めた。気をつけなきゃだめだね。幸い、ふたりにはあたしの挙動不審っぷりは気づかれてはいなかったようで。

 だけど祥大の目だけは「おいっ! 気を付けろよ」そうやって注意している意志が伝わってきた。

 ごめん、ごめん、もうしないから。




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