Soda10(R-side) 女の子は先走り好き!?
晴哉くんにメグを紹介しようと思っていたあたしは、どうせわかっちゃうことだからと、仲のいいグループの子3人に彼氏ができたことを伝えた。
やっぱりそのことを伝える時はいつも以上に緊張した。1年の時に半年間だけ付き合った子が居たけど、その時とは比べ物にならないくらい今回は話すこと自体に緊張していた。祥大との関係の全てがばれちゃうような気がして。そんなこと黙ってりゃ済むことなのに、なにびびってんだろうね、あたし。
昨日の話からすれば、晴哉くんと有未香が付き合うことになるのは時間の問題だと思う。そしたら4人でデートしようぜって嬉しそうに息巻いていた晴哉くんだけど。
実はあたし、晴哉くんをメグと引き合わせるつもりで、すでにメグには紹介話があると公言していて、メグのほうもすんごく乗り気になってんだよね。
ちょっと、先走りすぎちゃったな。祥大に忠告されていたにも拘わらず。
それでもやっぱり頼みの綱は祥大だから、今朝バスの中で祥大へとメグの件を打ち明けたの。そしたら祥大は「俺にまかせとけって」とか男らしく言ってくれたけど。
晴哉くんの代わりになる子を探してくれる約束を取り付けることができて、ひとまずは安心できそうだ。
ところがもう3時限目になるのに、いまだ祥大からのメールはこない。メグに紹介のことを振られたらどうしようと、今朝からどきどきしてるのに。話決まらなきゃ、どう対応すればいいのか。
お願いだよ祥大、早くメール送ってきてよ。
4時限目にはいっても、あたしのスカートのポケットの中は、いっこうに震える気配がない。
そのまま昼休みを知らせるチャイムが鳴ってしまった。
あたしたちは4人で机をくっつけて、お弁当を広げ食べ始めた。
昨日の晩のドラマの話や、最近学校の近くにできたカフェの話題など、たわいもない話をしながら食べている。今のところメグからは、話を振られずに済んでいる。
みんな揃いも揃って小さなお弁当箱だから、お昼ご飯なんてすぐに食べ終わっちゃう。そのあとはいつも決まって食堂に向かい、アイスクリームを買って雑談しながら食べる習慣になっている。
「そういえば、あの話ってどうなってる?」
食堂へと向かう途中、とうとう切りだされてしまった。期待をいっぱいにのせた表情でメグがあたしに問いかけてくる。
「うん。今ね、日にちとかを調整中だから、詳しいことはもう少しだけ待ってくれる?」
はぐらかすようにしか言えなかった。
と、その時スカートのポケットから、待ちわびた震えが伝わってきた。
「ちょっと待って。メールがきたみたい。たぶん彼氏からだと思うんだ」
急いでポケットに手を突っ込み携帯を取りだした。画面を確認してみると、やっぱりそのメールは祥大からだったの。やった! やっとだよ、よかったあ。それで結論は?
『わるい遅くなって。別のクラスのやつでさ、なかなか捕まんなくって手こずってた。来週の火曜日でいけるか?』
「メグ、来週の火曜日でいいかどうか聞いてきてるんだけど、時間とれそう?」
「もちろんっ、空いてる空いてる。なーんも予定ないし。うわあ、どうしよう瑠花。合コンの時より緊張しちゃいそうだよ。ツーショットだもん。きゃっ」
メグのテンションが異常に上がっている。すごく期待されてる。これは責任重大だ。
「あたしらもいるんだから大丈夫だよ、安心しなって」
「だってだって、瑠花の彼氏って遠海って言うじゃない。レベル高いよねあそこの学校。イケメン率高いっつーか。やーマジどうしよイケメンくんが来たら」
もう誰も彼女のことは止めらんない。隣に並んで歩くあたしの腕、興奮ぎみにバシバシ叩いてくるんだもん。
「痛いって、メグ!」
食堂に移動してアイスクリームを食べながら、あたしたちはメグのテンションに合わせて、紹介話で盛り上がっていた。
「瑠花からメグでしょ。メグに遠海の彼氏ができたら、次はメグからあたしでしょ。うわっ、うちらのグループは明穂を除いて、みんな遠海の子と付き合うことになるじゃん。それ、何気に自慢ぽくない?」
沙紀ちゃんまでどんどん妄想膨らませて、たいへんなことになってる。メグ以上にワクワクしているみたいで。
うちの学校でも遠海学園の男の子たちは人気者なんだ。
祥大も現に遠海の生徒で、女の子たちにモテモテなんだよね。
メグに祥大をお披露目すること自体に、優越感を感じ始めてきた。
「瑠花の彼氏も、やっぱかっこいいんでしょ?」
すでに彼氏のいる明穂が、直球でそう質問してきた。
「う……うん、まあ、そうかな」
ちょっぴり照れて、お茶を濁すようにしか答えることができなかった。
3人がひゅーひゅー言いながら冷やかしてくる。
頬が熱い。照れくさい。そんでもって身体中が痺れたみたいな感じになって、頭ん中でいっぱいのろけちゃう。
みんなに自慢したいなあ。あたしだけの祥大。あたしだけの。




