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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
CRANBERRY SODA
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Soda2(R-side)  なんでわかっちゃうの?


「最近、雰囲気変わったよね?」

「ええっ、なにが? うちのクラスのこと?」

 幾美ちゃんに見惚れてしまっていたあたしは、とつぜんの幾美ちゃんからの言葉の意味がいまいち把握できず、当て推量な答えかたしてしまったの。

 そしたら幾美ちゃんがくすっと笑いながらこう言った。

「違うよ。瑠花がだよ。恋とかしてるのかなって思ったの」

 うう、するどい。見破られている。

 さすがに合コンを常に取り仕切っているだけのことあるみたい。色恋沙汰には人より敏感なんだね。

「わかっちゃった?」

「わかるわよ。瑠花ってば、きれいになってキラキラしてるから。あの人のおかげなのかな? あの合コンの時に見かけたカッコいい彼。違った?」

 ほんと、すごい。幾美ちゃんってすごすぎ。

 一緒に参加していた友達は誰も気づいてなんかないのに、幾美には見破られている。

 合コンではただの盛り上げ役を買って出てるだけなのかと思っていたんだけれど、違ったんだね。まわりの様子もちゃんとよく見てんだ。

「だけどあの時、彼って別の女の子連れていたよね? 実りそうなの? 瑠花の恋。脈ありそう?」

 心配げな顔して、幾美ちゃんがあたしの目を覗き込むようにしてみてきた。

 顔を傾けたせいで、薄茶色のさらさらの長髪が肩を越えて、前にするんと流れていった。その姿がとてもきれいだったので、再度あたしは幾美ちゃんに見惚れてしまっていたんだ。

 この子にだったら、打ち明けてもいいかな。そう思ったの。

「幾美ちゃんあのね、まだ誰にも言ってないことなんだけど、彼とは付き合い始めたところなんだ」

 くっきりとした輪郭の大きな目。めいっぱい見開いて驚きの表情を見せたあと、ゆっくりとコーヒーカップを口許へと運んでいった。

 よくみるとコーヒーソーサーに乗るスプーンは使用された痕跡がない。幾美ちゃんって、ブラックでコーヒーが飲めるんだ。小さなことにも感動を隠せない。

 あたしはといえば甘いクランベリーソーダを飲んでいるところ。コーヒーを飲むとその後すぐに胃が痛くなっちゃう。あたしは幾美ちゃんと比べたら、まだまだ子供なんだよ。

 コーヒーをひと飲みしてからカップを置き、一瞬の含み笑いをみせてから言葉を発する幾美ちゃん。

「すごいね瑠花。あんなイケメン物にするなんて。実は積極的な子だったんだ。そっかあ、そうか。ふーん。だから女っぽくなったんだー」

 勝手に何かを想像するような顔をみせ、含むように微笑する幾美ちゃんの前で、あたしは顔がどんどん熱くなっていくのが分かった。クランベリーソーダに視線を落とすと、意味もなくストローでグラスの中身をカラカラいわせながらかき混ぜてく。

 あーあー、泡だってきちゃってるよ。せっかくの炭酸が抜けてっちゃう。

「かわいいなあ、瑠花って。すごく純情でさあ。反応が素直すぎるからすぐ分かっちゃうもんね。彼ともうエッチしたんでしょ?」

「……」

 あー、やられた! 図られたんだ。あたしの反応をみようとして、わざとあんな顔してみせたんだ。ずるいよ、幾美ちゃん。

 それにそれに、そんなはっきりとエッチなんて言っちゃだめだよ。

 あたしは自分のことでこんなきわどい会話をしたことがないから、すっごく恥ずかしくて。

 友達の話なら平気で聞けちゃうのに、どうして自分のことだとこんなにも落ち着きなくなるのか? 恥ずかしくて、照れ臭くて、こんな気持ちになるとかまるで知らないことだった。

 そんな中でも、少しだけ心がくすぐったかったり、快感だったり……。

 頭ん中が祥大のことでいっぱいになるのが、たまらなくいい感じなの。

 これってあたしが変なのかな?

「瑠花ごめん、メール打ってもいいかな? すぐ終わらせるから」

「いいよ」

 いいよ、いいって。グッドタイミングだよ。

 あたしは止められなくなった祥大への妄想を膨らませながら、気長に幾美ちゃんのメール作業が終わるのを待つ。

 祥大は今なにしてるのかな?

 あたしの帰りがいつもより遅いこと心配してくれてる?

 帰ったらまっ先に「おかえり」って笑顔くれるの?

 ねえ、祥大。会えない時間、あたしのこと考えてくれてるよね?


「これでよしと。瑠花なんか楽しそうだね」

「え、そうかな。普通だよ」

 幾美ちゃんったら、やっぱするどいや。




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