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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
CRANBERRY SODA
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Soda1(R-side)  魅力的な彼女


 もうこんな時間だ。

 くじ運の悪いあたしは、誰もやりたがらない不人気の風紀委員をやるはめになってしまったの。その定例委員会が今日さっそくあった。

 教室に戻るといつもつるんでいるグループの友達はもうみんな帰っちゃってて、今日はぽつんとひとりぼっちだ。なんだかつまんないな。

 委員会が長引くと、友達と寄り道できなくなるし、彼氏と帰ることもできなくなったり。みんなジレンマを抱える。

 あたしの場合、その点は心配がない。家に帰ればいつでも彼氏に会えちゃうんだもんね。祥大が「おかえり」って優しく迎えてくれる。

 寄り道なんていいから、一刻も早く家に戻りたくなった。

 こんな幸せな生活ってあり? ありだよね。あたしだけ得しちゃってるみたいで顔が弛んじゃう。


「なんて顔しーてんの!」


 うわあぁぁ、びっくりした。

 もしかして今の妄想顔、一部始終みられていたってこと?!

 やだなんで。近くに誰も居ないと思っていたのに。

 下駄箱の前でシューズを履き替えながら、にまにまとみっともない顔だったはず。そのあたしに声をかけてきたのは、同じクラスの幾美ちゃんだ。

「幾美ちゃん、あたし今へんな顔してたよね?」

「うん。すっごい鼻の下がのびてたよ。こーんな感じで」

「うそだぁ、最悪じゃん」

 うふふって、焦るあたしをみて楽しそうに笑う幾美ちゃん。そういえば、こうやって話をするのはあの日以来かもしれない。合コンの次の日に「ごめん」って謝るために声かけたけど、幾美ちゃんは急いでるようすで「いいよ」って流すように答えただけで去っていっちゃった。そう、あの日以来だね。

「瑠花も今帰るとこだったんだ。今日はひとり?」

「そうなの。風紀委員会が長引いちゃってさ」

「そっか、よかったひとりで。瑠花が風紀委員ねえ、まあ似合ってんじゃん」

「なんで? そんなことないよ。誰もやらないからくじ引きになって、運悪く当たり引いちゃって。ぜんぜん嬉しくない当たりだよ、もう」

「いや、でも瑠花ってまじめだし、すれてないからやっぱ合ってるって」

 幾美ちゃんの目には、あたしはそんな風に映っているんだね。

 確かにあたしは隠れてタバコ吸ったりしないし、お酒だって飲めないよ。でもね、高校生のくせにいけないことしちゃったりするんだよ、幾美ちゃん。

 「ねえね、ちょっとだけお茶つきあってよ」

 そう言うと、結構強引ぎみにあたしに腕組みをしてきて、学校近くにある喫茶店までひっぱっていった。

 近くに寄ると、幾美ちゃんってすごくいい匂いがするんだ。おとなっぽい魅力的な香り。

 これって香水だよね? 幾美ちゃんって香水なんてつけてるんだ。でしゃばってなくて、さりげなくていい香り。幾美ちゃんって、なんだか素敵だ。



 席について分厚い表紙のメニューを開くと、何てことないごく普通の喫茶店なのに、ドリンクの種類が豊富で驚いた。そしてどれもこれもおいしそうで目移りしてしまう。

「あーもう、迷っちゃうね。今日はなんとなく炭酸系って気分なんだけどなあ」

「じゃあこれにしなよ。クランベリーソーダ。瑠花のイメージに合ってるから」

 あたしのイメージに? それってどんなイメージなんだろう。

 そんなこと考えてる間に、幾美ちゃんはさっと軽く手をあげて、ウエイトレスに合図を送り注文をしてくれようとしている。

「クランベリーソーダとホットをお願いします」

 ウエイトレスを呼ぶ時のしぐさから注文をする姿まで、あまりにも卒がなくしなやかな流れだったから、同じ高校生だってことを忘れてしまいそうだった。

 幾美ちゃんは合コンの時とは少し感じが違ってみえる。合コンしている時は、盛り上げ役に徹していて、常にはじけている感じで。テンション高めだ。

 今、目の前にいる幾美ちゃんはそれとはぜんぜん違っていて、とても落ち着いている。身のこなしもタイトだし、なによりカッコいい。

 あたしに欠けているものを全部持っているみたいで憧れちゃう。

 いいなあ、幾美ちゃんって。もっと彼女のことを知りたくなった。




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