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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
LIMEMINT TABLET
16/66

Episode8 Positive Heart


 セッティングに加担した手前、暫くは事の一部始終を傍観していたが、そろそろ限界がやってこようとしている。

 晴哉はよっぽど瑠花のことが気に入ったのか、しつこいくらいにあれやこれやと質問攻撃している。こいつのこのテンションやばいよ。暴走しすぎだろ。

 そろそろここらへんで、終わりにさせないとまずい。


「あのさ、盛り上がってるとこ悪いんだけど、そろそろ俺バイトに向かわなきゃなんないんだよ。この続きはまた後日ってことで、今日はもうお開きにしないか?」

 晴哉も瑠花たちも一応納得して、席を立ち精算に向うところなんだけど、後日なんてのは口から出まかせで、これっぽっちも考えちゃいねーんだけどさ。

 駅までの道を俺は晴哉と並んで歩き、後ろから瑠花と有未香がついてきている。

 晴哉のテンションは絶好調で、瑠花を彼女にする気満々って顔で自信ありげに俺に話しかけてくる。確かにこいつに交際申し込まれて断った女の子はまだみたことがない。俺の目から見ても晴哉はイケメンだし。

 けど、俺は今日決心したことがある。そうはいっても今さっき決めたところなんだけどさ。それはさておき、俺は瑠花を誰にも譲る気ないから。それがたとえ親友だったとしても。

 俺は瑠花に出会うべくして出会ったんだって、そう感じている。こんな様なのは、俺に対する試練なんだ。わざと歯車狂わされて、神様にきっと試されているんだ。

 俺はプライドよりも瑠花を愛しているという自分のハートを大事にするべきなんだと、ようやく気づいたんだ。

 晴哉にも有未香にも悪いことをしたって、ちゃんとそう感じている。

 今までの俺なら、振った女の子の気持ちなんてどうでもよかった。いつも自分が優位にたっていると勘違いしていたから。


 瑠花の気持ち。瑠花のハートはどうなんだ?

 どうしても今すぐ瑠花の気持ちを確かめたくてしかたがない。

 だから晴哉と有未香をうまく誘導して、俺は瑠花と同じ側のホームへと向かうことにした。


 瑠花の気持ちを知りたい。


 そのまま電車に乗り込んでしまいたくなかった俺は、咄嗟に瑠花の手を掴んで駅を出ると、元来た道を辿った。

 瑠花がさっき居たカフェであるケーキを食べたいのに我慢していたことに気づいていた。メニューにあるケーキの写真をじっと眺めていたことを。だから、とにかくあのケーキを買ってあげようと思い立ったんだ。

 案の定、瑠花は喜んでくれた。ここからだよ、肝心なのは……どう切りだそうか。

「祥大、バイトは? 遅れちゃうよ」

 心配そうに眉を寄せ、俺を見上げてきた。

 バイトなんて口実なのさ。あれ以上、晴哉におまえを晒すのは限界だったんだよ。

 そして俺は少しだけ、瑠花に鎌をかけてみることにした。

「晴哉のやつさ、おまえのこと超可愛いってさ。ぜってー彼女にするんだって言ってたぜ。どうすんの?」

「どうしよっか。メールしたほうがいいのかな?」

 おまえ、俺を前にしてそういうこと言う?

 おまえも他の子と一緒で晴哉に簡単に落ちるタイプだったのかよ? 凹むぞ、俺は。

「おまえがどうしたいかだろ。俺に聞かれてもわかるか」

 少しいらっときて、ついつい、冷たくあしらってしまった。

「じゃあ、メールしてみようかな」

 なんだよ。なんでそうなるんだ、瑠花。

 俺は……俺はな、俺はだな……つまり……。


「俺は瑠花のこと好きだよ」


 とうとう、言ってしまった。いや、言うつもりだったんだが、告られ専門の俺にとっては、生まれて初めての告白だから、内心すっげーびびってるんだ。

 おい、落ち着けよ。いつも通りクールにいけよ、俺。

「またぁ、からかおうとして!! 兄妹としてでしょ」

「俺は瑠花が好きだ。兄妹としてじゃなく」

 俺の真剣な眼差しを察してくれよ。

「だめでしょ。あたしたち戸籍上の兄妹なんだよ。だめに決まってるじゃん」

 ちょっと待った。おまえって、ほんと無知なんだな。

 ここまできたら、もう笑うしかない。瑠花、おまえ天然すぎなんだよ。

 けど、そこも可愛いんだけど。

「おまえ本気でそう思ってるの? 俺の戸籍はおまえとは違うよ。苗字を変えただけだって。それに血縁ないんだから結婚だってできるんだぜ。知らなかったの?」

 瑠花の顔がマジで困惑し始めた。やばい。

 結婚まで引き合いに出したのがまずかったか、やはり免疫のない瑠花には過激な発言すぎたのかもしれない。

 この後、瑠花は急に無口になってしまった。帰りの電車でも一言も口を利いてはくれない。

 俺の気持ちは瑠花でいっぱいだっていうのに。

 結局、瑠花の口から答えを導きだすことは、俺にはできなかった。

 たぶん、瑠花は有未香のこともあってか、自分を解放することができないんだと思う。

 いや最悪の場合、俺の独りよがりで、人生初の失恋が待っているのかもしれない。


 こうして言葉を交わさなくても、黙っていても歩く方向は同じで、たどり着く場所も同じなわけで。

 だから、俺はもう少し時間をかけて、瑠花のハートを探ってみることに決めた。

 未来は明るい。きっとそうだ。

 なにごともポジティブが一番なんだ。




*** LIMEMINT TABLET * end ***




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