差
タンザを戦士に育てるのは間違いかもしれない。
そもそも、女であろうと男であろうと戦わずに過ごすことはできるんだ。
『いたっ』
不意に握られた手に痛みを感じて引く。
「すみません……」
「続けてくれ」
握り直してクエストワークを眺める。
「特にないな」
ドラゴンだったり採取だったり、タンザが向いてないものばかりだ。
「……したいことはあるか?」
タンザに聞いてみると。
「ど、ドラゴンを見てみたいです……!」
「これはどうだ?」
俺はジャーンとドラゴンヘッドを見せてみる。
「これは……」
タンザはキラキラ目を輝かせてくれた。
「かっこいいです!」
「それだけじゃないぞ」
俺はクレアになったつもりで、タンザにドラゴンを被せた。
「さらに被れる」
「すごいです!」
「タンザにあげよう」
「良いんですか!?」
嬉しそうな人にあげた方が物も喜ぶ。
「いいぞ」
「一生、大事にします!」
「それほど良いか?」
あげた俺が言うのもなんだが一生はどうかと思う。
『他の人から貰うことなんてなかったので……』
ドラゴンのせいで表情が読めない!
やはりドラゴンヘッドは敵かもしれない。
「これで勘弁してくれ」
「勘弁します!」
勘弁してもらった。
「……これに、しとくか」
取った依頼は配達業の手伝い、小銭稼ぎとして選んだ。
「それは?」
「家に手紙を届けるんだ、結構歩くぞ」
配達所の建物に向かう。
『ちょっと待て、なんだこの不審者は?』
建物の前で呼び止められた。
「そうか?」
「ドラゴンを模した被り物など……入ることは認めん、紙を燃やされては困る」
依頼の紙を見せると下がっていった。
「失礼した」
中では手紙が宙を舞い、慌ただしい空気。
俺に気づいた少年が紙束が詰まったカバンを渡してきた。
『ごめん! めちゃくちゃ多いけどボーナスあるらしいから!』
そのままピューっと持ち場に戻ってしまった。
「……頑張るぞ」
「はい!」
足腰を鍛える運動にはちょうどいい!
ということで家から家に手紙を届けまくった。
規則的に記された数字を元に、届け先の家に送る。
基本的には訪ねて手渡し。
「ドラゴン!?」
「わ、おねーちゃんかっこいい!」
「ひーろーみたい!」
なぜか、タンザのドラゴンは好意的に受け止められていた。
「なんだと……」
羨ましいんだが!
「お仕事ってこんなに楽しいんですね」
「そ、そう思えるのも今のうちだぞ!」
「そうですか?」
羨ましさのあまり、俺は素直になれなかった。
次の家を調べて歩く。
目の前に来て気づいた、ここはクレアの家。
クレアとすることがあるとカゲは言っていたな。
出会うと何言われるか分からない。
「タンザ、ここは任せていいか?」
俺は物陰に隠れて任せることにする。
「どうして?」
「仕事中に知ってる人と出会ったら、気まずいだろ!」
「は、はあ……?」
「そのうち分かる」
頑張れよと、俺はタンザの単独挑戦を見届けることにした。




