追求
引くなら今しかないとその場を後にする。
次来た時に、コノハから何か貰おう。
ギルドを出て一息。ドアが遅れて閉まって振り返る。
『エム』
カゲが居た。
「寝てたんじゃないのか」
「早起きして、こっそり」
じっとりとした熱っぽい視線に冷や汗。
「……あの告白は、なんだ!」
大きな声に一歩下がる。
「こっそり耳打ちまで!」
ミストめ! なんてことをしてくれたんだ!
「腕を抱かれて、エムは、嬉しそうにしていた」
俺の手を抱き込みながら、大きな一歩で近づいてくる。
「……カゲの胸より、さぞ大きなモノに挟まれたからか」
「そういうわけじゃ……」
「なら、なぜあの時振り解かない!」
「悪かった認める、大きな胸に挟まれて嬉しかった」
弁解のしようがない、事実だ。
「むっ」
「面食らったんだ、急に言われたから」
「……耳打ちの内容は」
「この状況を予測してたぞ」
「カゲがバレることはありえない! まさか、こっそり出会うなど……」
巻きついていた腕が解け、不安そうに俺を見てくる。
「大丈夫だ、監視してくれてもいい」
「できない、クレアとの約束が……」
急ぎの用事なのか、話を切って背を向けると歩き始めた。
カゲは少し歩いてすぐ振り返った。
「エム……」
真実を確かめたいのか、名残惜しそうだ。
「出会う約束はないと言っておくぞ」
「これが嘘か否か、カゲは二度と確かめれない」
そう言ってまた歩くと、今度は駆け寄ってきた。
「どうした」
俺の肩に手を置くと唇を押し付けてくる。
「…………っ」
受け入れてしばらく。カゲは姿を消してしまっていた。
もう行ったのか足音は聞こえない。
「感触が、名残惜しいな」
宿に戻ると奴隷ちゃんが背筋を伸ばして待っていた。
『おはようございます! あれ?』
「どうしたんだ」
「起きた時に二人起こしたのですが、お一人が飛び出してしまいまして、合流されたのかと」
カゲの早起きしたっていうのは嘘じゃないか。
「やってくれたな」
「か、勝手なことをして申し訳ありません!」
「そんなに重大なことではない」
寝起きの荒いルビーを起こしてくれたのは助かる。
「お仕置きなら、お待ちしております」
「基準がおかしいな」
「よくあった、ことなので」
「もう二度とないから安心してくれ」
二人を連れて例のおにぎりセットにあやかる。
「ど、ドレイに食べ物なんて……」
俺に対して両手を広げるといらないですって言ってくる。
『えぇ!? あんたの名前、奴隷って言うのかい!?』
いつものおばちゃんが驚きながら箱を渡してくる。
「……」
気まずい空気。
『……はい』
何かに気づいたように、奴隷ちゃんは眉をひそめた。




