寵愛
『やさしー』
リドルはヒラヒラと舞いながら見てくる。
「当たり前だ」
「なにか思いがあったりする? まさか浮気?」
「単純に、さっさとギルドに行って欲しいんだ、こんな所で燻る必要は無い」
そんな時にコロリと風邪を引かれたら最悪の一言。
「愛情くらい何人でも良いと思うけど」
「カゲの攻めが凄くてな」
宿を出て、ギルドをこっそり伺った。
シンスが居るかどうか確認してから入る。
『…………』
居ない、美女自体少ない。
夜更かしは美の天敵と聞くが、本当らしい。
「――お土産は?」
コノハは当たり前のように男らしくテーブルから身を乗り出して声をかけてくる。
「寝ていると思っていた」
「少しばかり、リズムを殺してもいいだろうとね」
ほんの僅かだと言って人差し指と親指を浮かせた。
「まあ座れ、暇なんだ」
「シンスに心配されてたじゃないか」
「喋ると傷が開くからって口を聞かせて貰えない」
「手厚いもてなしだな」
注がれた酒をありがたく頂戴する。
「ここに来たってことはなにかすることが?」
「いつもの宿が居心地悪くて、サボりにきた」
「ああ、奴隷を姫様のように担いでいたからだろう?」
ホウセンカは小さい街なのかもしれない。
ドヤ顔のコノハを肯定するのは嫌だが、渋々認めた。
「で、どうする?」
「剣士として頑張ってもらう」
「あの剣術を直々に教えてもらうとは豪運な奴隷だ、羨ましい」
名前すらないただの癖を剣術と呼んでいいとは思えない。
「そろそろ、納品用に金を……」
立とうとするとコノハに力任せに座らされる。
「なんだ?」
「金は工面してやろう、暇に付き合え」
強靭な圧力に抑え込まれて拒否権がない!
「暇すぎてもはや死にそうなんだ……」
シンスの過保護加減が想像つく。
「分かった分かった」
「そう言うと思い、美女からトランプを借りている!」
言わせたんだろと思いながらカードゲームに付き合った。
ルールはよくわからなかったが、結果的には互角。
「傷が癒えたらこんな紙ではなく刀に勝敗を委ねたい」
「信頼できるのは実力だからな」
「強くなる必要も、ある」
コノハは握り拳を作って解いた。
「そうだな」
「シンスが来るまで、戦いを続けよう」
「来たら怒られるぞ」
「その方が都合も良い」
夜明けまでカードゲームに勤しみ、シンスが出てきた。
『コ、コノハ!? だから出禁にしてたのに!』
割り込んできたシンスがコノハのトランプを取り上げる。
「今いいところ……」
「寝てなさいって!」
コノハはしゅんとした様子で俺を見てくる。
「こんなに遊んでも傷が開いていない、大丈夫だと思いますが?」
「男は黙らっしゃい!」
コノハはもう大丈夫だとアピールしていた。
「そ、そんなに言うならカードゲームくらいは……」
トランプが戻ってくると、コノハはにこにこしながら強カードを叩きつけてくる。
「……で、いつもの!」
コノハのせいで機嫌が悪いシンスに金をせびられる。
くっ、俺の命もここまでか!
『シンス、リュウキからお金はもう頂いているぞ』
コノハは嘘を吐きながら、嘘みたいに弱いカードをペラリと出す。
「俺の勝ちだな」
そのカードの上に俺は強いカードを重ねた。
「あ、せっかく助けてやったと言うのに、なんという仕打ち!」
「助けたって何!? ねえ!?」




