告白
しばらくしたら女の人が出てきた。
『女?』
「ああ、ここは依頼主の自宅らしいぞ」
「奥さんというものか」
「そうだな」
消えた俺達の横を香水の匂いが横切った。
「ついて行こう」
「うむ……」
透明になって堂々とついていける、これはカゲのおかげだ。
「匂いが鼻につく」
「カゲはそういう匂いをつけなかったか」
「つける必要が、今までなかった」
尾行すると女の前に男が現れる。
素通りするかと思ったが。
『待ってた?』
『全然』
一度抱きつくとネットリとキスを始めてしまった。
「確定だな」
「分からない、好きな人が居るのに他人を愛せるなど」
「好きな人ができたら分かるんじゃないか?」
「む……」
カゲが顔をしかめているのが、手に取るように分かる。
「好きな人は、もう居る……」
不意に俺の肩を掴むと背を伸ばして唇を重ねてきた。
『好きだ、エムのことが』
どんな攻撃も受け止めてきた俺。
この時はカゲの言葉に数歩下がってしまった。
「俺はなんて返せばいい?」
「カゲのこと、好きか否か……聞きたい」
「かわいいそして、なにより一緒に居て楽しい。これが好きということなら、好きかもしれない」
顔を近づけるとカゲは二本の人差し指でバツを描き、唇を塞いできた。
「は、初めてのことで、カゲもよく分かっていない……」
フツフツとかわいく赤らめていくのがよくわかる。俺も変な顔してるかもしれない。
「お試しということで、しばらくキスは見送る…………」
それからクルリと背を向けられるまで早かった。
「なんだそれ?」
「カゲからの、おねがい、だ」
ユラユラと体をひねるように揺らすカゲ。
「ああ、見失ったし撤収するか」
「すまないエム、迷惑を」
「思いが聞けてよかったぞ」
クエストワークで依頼書に簡単な答えを記す。
「エム、これ……」
キスとか書きたくはないが、ディープに記しておかないと認められない。
「見なくていいからな」
「見ていると、してみたくて涎が」
指をくわえて俺をじっと見てくる。俺は梅林じゃないぞと言いたい。
「なんだ、その顔は?」
「……す、するわけが!」
何かを振り払うように首を振っていた。
「見送る、見送る、見送るっ!」
「そうか」
普通はこの書いた内容が本当なのか審議され、ようやく報酬になるのだが。
「報酬です」
「早いな」
「噂にはなってたので」
「そういうのは疎いんだ」
カゲに全部あげて宿に戻ることにする。
「報酬は……」
「カゲのおかげで見つからずに済んだからな」
「今回は貰う!」
「元気だな」
「ちょうどいい使い道を、思いついた!」
そう言って金袋を大切そうに縛り直していた。




