おんぶにだっこ
はっと気がついて目を開ける。
いつもなら見えない、カゲの下顎が映り込む。
『おー、本当に起きたんだ』
リドルの声が聞こえる。
「あわよくば幽霊になるかなーって思ってたのに」
幽霊になれなくて悪かったな。
「そんなことより、この子が心配してたよ、土に寝ると頭が痛くなるからって正座して」
頭の弾力ある感触はカゲの膝枕だった。
「黙ってないで、反応してあげたら」
この心地は名残惜しいが、時には諦めも肝心。
「カゲのおかげで、頭を痛めずに済みそうだ」
声に気づいたカゲが見下ろしてくれた。
目が合い、少し恥ずかしく思う。
「起きたか! 頭の痛みは、とても辛い故に」
元気で良かったと、カゲは頷いてくれる。
「ありがとう」
「こんなこと、誰でもできる」
「してくれたのはカゲだぞ」
話したくないのか、顔を逸らされて表情が見えない。
「エム、そろそろ膝から……」
心地が悪そうに膝が揺らされる。
「そうする」
「エムのことが嫌いという訳では、ない!」
「知ってるぞ」
「正座でシビレてきて……」
俺が体を起こすと、カゲは正座を崩して足を揉み始めた。
たまに顔をしかめている。
「手伝おう」
「もう大丈夫だ、助けはいらない」
立とうと膝を立てたカゲがピタリと動かなくなる。
自然と同化するような姿を眺めていると。
「そろそろ、撤収しようと思うのですが」
女性の方から帰るという声が!
「え、エム、助けを」
「どうした? 自然と一つになってたんじゃないのか」
「つ、つ、つった……」
「そうか?」
「首を貸せぇ」
腑抜けた声に答えると腕が首に巻きつく。
「だっこよりおんぶの方が、居座るには良いと思うんだが」
「早くしないと置いていかれる」
よいしょと下からカゲを支えて後を追う。
ルビーは相変わらず、仲良く話をしていた。
「にゃー!」
「上手上手、はい蜂蜜ー」
「にゃあにゃあ」
微笑ましい光景にカゲが重なる。
「カゲを見てほしい」
背を伸ばして視界を直接奪ってきた!
「前が見えないぞー」
「見せぬ見せぬ」
右に首を傾けるとカゲも傾いて割り込んでくる。
ニヤニヤしているのが余計に腹立たしい。
「これは、俺もなにかしていいってことか?」
「む、キス程度では怯まん」
唇をギュッと閉じてなにやら構え始めた。
「怯まなくていいぞ」
片手でカゲの背中に手を置き、強引に密着する。
小さな肩に顎を乗せれば邪魔されることはもうない。
「これならカゲも許す」
背中にカゲの手が伸びてきた。
「エムの邪魔は、もうしない」
ギュッと締め付けられる感覚に息苦しくなる。
「そうか」
街に戻るまで本当に静かだった。




