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全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
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猫耳騎士団と猫耳王女

開演開演、開演でございます。

いにしえの劇団が残した劇場で、新たな世界を。









『燃え盛る悪夢から逃げ出した三人は羽根を休めるように立ち止まります』



 森の中をザアザアと熱い風が通り抜ける。


「ここまで来れば」


 草の音に振り返ると、カゲはガクンと膝を着いて俯いていた。


 スカートがふわりと花のように広がっていて。


「街が、家が、お人形さんが」


「お前が死ぬという最悪の事態は避けられた、落ち込まないでくれ」


「お友達が、騎士さんが、お父さんが」


「もう、何も言うな」


 その先を、知っていることを。


 言われてしまう前に唇を一瞬で塞いだ。


「ん……」


「いや――すまない、失礼なことを」


「もう一度して」


「……っ」


「してくれないと、失礼って怒る」


 ルビーは背を向けて剣の装飾を撫でていた。


 さっさと終わらせろと、物分りのいい硬派な人間性をヒシヒシと感じる。



「休憩は、これで終わりにする」


 演技でもなんでもない、ただのキスを客に見せつけてしまった。


「……休憩、終わっちゃった」


 カゲはそう言って立ち上がると森の中を歩き始めた。


 このまま揃って舞台を出て、裏を歩く。


 入口の方に素早く戻って待機。


 舞台裏を忙しなく動く演出係が、自然を動かしていることだろう。


「カゲ、よくもやってくれたな、あれは台本にないぞ」


「エムと、キスが、したかった」


 俯いた顔を下から覗き込むとほんのり赤く、人差し指が忙しなく遊ばれる。


「そうか」


「怒った……?」


「……」


「もう、しない……」 


 天の声の合図で舞台に立たなければいけない。


 段々と時間が近づく、反撃の時でもある。


「台本にないことは、したらダメだぞ」


 カゲの隣に立ち、欲張りな唇に反撃する。



「んっ!?」


 驚きはしても俺の口を拒もうとしてこなかった。



『更に森を歩いた三人は、一輪の花を見つけます』


 天の声と同時に俺はキスを辞め、舞台の方に入っていく。


「ま、待ってエム」


 アドリブというのは、頭を真っ白にさせられる。


 カゲは段差に躓き、派手にずっこけていた。


「……」


 ここからは俺のアドリブ。


「さすが王女といったところか、転んだ先の花とは幸先が良い」


 ちょうど芽生えていた赤い花を摘み、ルビーに託す。


 当然のように匂いを嗅いでいた。


「幸運の匂いがするな」


「にゃあ」


 頷くと大切そうにポケットにしまっていた。


 ずっこけたカゲが起き上がりそうにないので心配する。


「大丈夫か」



「少し、擦りむいただけ」


 落ち着きを取り戻したカゲはプロ根性で役を演じていた。



「もう少しで、同盟国の……」


 俺のセリフの途中でガサガサと草木が掻き分けられる。



『舞い込んできたのは杖でも同盟軍でもなく』




「俺様登場! 四字熟語みたいだぜ!」




『敵国のリアトリス二世でした』



 俺達はリアトリス商人に気づき、身構える。


「だ、誰だ!」


「炎は、赤いよなあ? 俺様も赤い、つまりそういうことだ」


「どういうことだ」


「まだわかんねえのか! 街に火を放ったのは、俺様だってことだ!」


 カゲがそんなと声を漏らす。


「お前がやったのか……」


「生き残りも灰にしたくて森を燃やすつもりだったが手間が省けたぜ、へっへっへ」


 俺が前に出ようとすると、ルビーが待てと左手を伸ばす。


「お前が、やるのか?」


「にゃあ!」


 怒りに満ちたルビーは剣を抜いてリアトリスとぶつかり合う。


 キンキンという剣劇の末、まさかの敗北。



「へっへっへ、もう死んだかな?」


「させるか!」


 死体斬りをされる前に剣を抜いて男を斬り上げる。


 自前の剣が僅かな魔力で一瞬の火を残した。


『彼の復讐心に火が付き、リアトリスを掠めます』



「手品か? へっへっへ」


 リアトリスの攻撃を見切り、接戦を演出する。


 盛り上がるタイミングで相手の剣を弾き飛ばす。


 後ろの木にトンッと刺さる。


「な……」


 そのまま斬り抜け、トドメを刺した。


「ぐ、ぐああああ」


 バタリと倒れた所を見てから、ルビーの肩を抱く。


「無茶しやがって、俺が倒したぞ」


「……」


『目を瞑ったまま、返事をしない。騎士は役目を果たし、命を果たしていた』


 嘘だろと、起きてくれよと。


 さっきの斬り合いで死ぬ要素どこだよと思いながら、何度も声を掛ける。


「そんな、まさか……くそっ」




『国を失い、仲間を失い、鬼となった猫耳族。つ、づ、く』




 幕が段々と降りていき、暗くなっていく。


 パチパチという成功を祝う拍手。


 ルビーが目を開け、口を開く。


 やばい、鳴くつもりだ!


 それはさせまいと色々張り巡らせる。


 まだ見られている状況で死んだ人間の口に触れるなんてできないが、幸いにもルビーは足を客に向けて倒れている。


 顔なんて、隠せばいい。



 俺の決死のアドリブ。




 抱きしめる振りをして、ルビーにキスをした。











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