表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
73/200

事実は生き返らない







 さっきよりも長く唇を交わす。


 何もしていないのに後方へぱたんとカゲは尻もちを着き、キスが終わった。



『わ、わわ』


 顔を真っ赤にしたカゲが両手を使ってズリズリ俺から距離を取っていく。



「もう何もしない、安心してくれ」


「気が、動転していた……」


 落ち着いたカゲは慣れた手つきで立ち上がった。


 赤かった様子はもうない。


「エム、この気持ちに従ってもいいか?」


「なんだ?」


「キスはエムとしかしていない、沸き上がった気持ちの真偽が付けれない」


 そう思えたなら従ってもいいんじゃないかと答えてみる。


「……明日、確かめることにした」


「いいと思うぞ」


「おやすみ!」


 カゲはそう言って早足で家に戻っていく。


 パタンとドアを閉められた。


 カチャンと鍵がかかったような気がした。


「そんなまさか」


 ドアノブを回すが、ガタンガタンと引っかかる。


 空き家に忍び込むほど寝床の大切さを知っているカゲが、こんなミスを犯すとは思えない。


 焦っていないように見えて、焦っていたのかもしれないな。



 どうしようか考えていると。


「終わったかなーって思って」


 リドルが都合よく俺の前に現れた。


「よく分かったな」


 リドルの言う通り、俺はまずい状況に置かれている。


「女の子が戻ってきたから、大丈夫かなって」


「大丈夫ではない」


「え?」


 リドルに状況を説明する。


「んー、このまま遊んじゃえば?」


「夜だぞ?」


「ここの酒場は夜から本番だよ!」


 手を引かれてついていくと劇場を横切った先に小さな家の集まりが。


「色々変わってる」


「酒場は?」


「……ない」


 残念そうに呟いた。



「何もかも自分に都合悪くて怖いよ、この街が本当に自分の街?」


 リドルは理解できないのか。


「死んだことを昨日のように思い出せるのは、昨日のように根強く覚えているだけなんじゃないのか」


「……」


「街は変化する、店は増えるが減りもする。酒場は昔になくなったかもしれない」


 知っていたことが消え、知らないことが増える。


 リドルは心底寂しそうにしていた。


「数回しか、行ったことなかったのに」



「残念だが、時は残酷だ」


 唐突に懐かしいものを懐かしめなくなる状況。


 良いものではないだろうと俺は思った。


「気づいたらゾッとしちゃうくらい寂しいね」


 近くの家の酒瓶を手に取り、中身を揺らす。


 その場でキュッキュと栓を抜いて嗅ぐ。


 匂いは悪くない。


「なにしてるの?」


「気づいたら、誤魔化さないとな」



 片足が欠けたテーブルを起こし、皿に酒を注いで置く。



「小さな酒場で小さな話をしよう」









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ