強気な展開
話の内容に文句をつけることはないが、不思議に感じることがある。
台本が届いてペラペラめくって思った。
『なんだ? この話は』
商人はやりきった様子。
「猫耳騎士団と猫耳王女の物語である!」
「変な話だな」
配役的に俺とルビーが騎士団の生き残りという設定。
協力者の少なさを設定に生かしたらしい。
「なんとか考え、猫耳族を生かすことは必要と捉えたのだ、元々数が多いとは思えない」
「あとは予想通りだな」
商人は悪役として出るようで、カゲは猫耳王女を演じるようだ。
「セリフ類を覚えてくれ! こちらはもう覚えている!」
「早いな」
「商人は商売を忘れない、この程度の把握は余裕」
悪役とは思えない順応力の高さだ。
「カゲ、覚えるぞ」
「分かっている」
模写することがめんどくさいのか、演技に必要な情報が手元のこれしかない。
一つの紙束を仲良くにらめっこは良い気がしないな。
「猫耳村が燃やされてなんとか逃げてくるところから始まるのか」
舞台は森の中、俺達は今後について話を交わす。
「街が、家が、お人形さんが」
カゲは悲しそうにしゃがみ込む。
ルビーは見てばかりで、俺が手を取らなければ行けない。
「そんなに落ち込むんじゃあない、最悪の事態は避けられた」
「最悪、だ」
「泣くな」
「ん」
『俺は黙らせるように……キス?』
「エム、続きを」
カットだカット、なんでここでキスするんだ?
「おい商人、俺はこの展開に不満がある」
「設定では恋仲だったのだ、同じで嬉しかろう」
「少々、ご都合が過ぎないか? 緊迫状態にキスは変だぞ」
「物語を書いたことはない、素人なのは認める」
カゲも嫌だろうと聞いてみる。
「エム、キスをするように書かれている」
「嫌じゃないのか?」
「私情を舞台で挟むつもりはない」
カゲはプロ意識が高いらしい。
「そうか……そうか?」
「それともエムは、カゲと口付けを交わすことが……残念だ」
「そうじゃないが」
「したいことをする演者のワガママ含めて、舞台は面白いというのに」
言いくるめられ、仕方なく次の展開を見る。
途中で悪役の商人が現れ、ルビーが剣を交えて力尽きる。
俺が悪役を倒すが、悲しみで火を放った人間達に復讐を誓うという、次回作を意識した構成。
この商人、商売として劇場を使っていくつもりだ。
強気すぎるだろ!
「……覚えるか」
それからじっくり覚え、実際に舞台に立って早めのリハーサル。
味気ない舞台もいずれ森に姿を変えるんだろうか。
ルビーには教えれないので、その場の空気で動いてもらう。
常にアドリブって感じだが、俺がなんとかする。
「あなた達は燃え盛る街から逃げました、はい動け!」
女性が俺達を睨みながら、パチンと手を叩く。
台本通りにセリフを読み上げて動き、キスするくだり。
「エム……時間がもったいない」
『あ、そういうシーンは個別で練習しといてね、今は必要ないから』
「そんなっ!」
ルビーは棒立ちだったが、次第に自然に立ち尽くすという技術を覚える。
周囲を見たり、匂いを嗅いだり、迫真の警戒心が伝わってくる。
そしてルビーに俺が話しかけるシーン。
「……誰がやったと思う?」
「にゃー?」
「そうか、そうだよな、やっぱり……」
何がそうなのかよく分からないが、決められたセリフだ。
『俺様登場! 四字熟語みたいだぜ!』
舞台の右側を見ると赤い衣装を纏った商人が腕を組んでいた。
『炎は……赤いよなあ? 俺様も、赤い。つまりそういうことだ』
「どういうことだよ」
なんでお前だけ、衣装がもうあるんだよ!!




