表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
69/200

赤くない他人









 演技練習の現場は劇場の裏。


 向かってみると二人の男女が腕を組んで待っていた。


『参加はしないけれど、劇団式演技を覚えてもらうわ』


 キツいツリ目で俺達を睨むと女子陣が手招かれる。


「僕はあなたの指導をします」


「ああ、頼む」


 大人しそうな男の人に「こちらへ」と連れられて人気ない場所に移った。


「あなたの演技力を確かめます、泣いてください」


「泣いたことがない、方法が分からない」


「……はい?」


「泣く必要性が分からなくてな」


「はいィ?」


 困った表情を浮かべる男。


「……はいここ痛みます、痛がってみてください」


「ぐあああっ!」


 触られた肩を抑え、ありもしない痛みに震える。


「上手ですね」


「それほどでもない」



 痛い思いは何度もしてきたからな!



「他にも試しますよ」


 悔しい思い、楽しい思い、全てを思う通りに表す。


「一つだけ残念なところが……」


「残念?」


「動きが硬いです、ぎこちないわけではないのに、引っ掛かりを感じます」


 リドルに目線で聞いてみるが。


『さあ?』


 お手上げ状態のジェスチャー。



「よく分からないな」


「他は問題ないです、次に行きます」


 教えられたことは動きによって印象を与えれること。


 実際は指示されていなくてもアドリブで必要な動きもあると言われた。


「思ったより悲劇的な空間が生まれれば、泣くことも辞さない必要があります」


「俺は泣けないぞ」


「緊急事態を成功に変えることが、劇団のルールです」


 細かいことを教えられたが、もう覚えてない。


「では戻りましょう、台本通りの時間です」


 戻ると、カゲとルビーが待っていた。


「ルビーはどうだ? 喋れないからな……怒られてたか?」


 カゲは褒められていたと教えてくれた。



「体の動きに感情がこもっていると、大絶賛だった」


「カゲはどうだった?」


「全然だ、良く考えれば他人と話したこともたいして……」


 難しさを感じているようだ。


「あと少しで台本が手に入るとこの紙には書かれてるな」


 内容が届かないと意味がないからな。


「カゲ、頑張ろう」


「……がんばる」


 届くまでの自由時間はアドリブで過ごすことにする。


「そうだな、カゲの話を聞かせてくれるか?」


「たいした意味は……」


「何か、意味が見つけれるかもしれないだろ」


「エムが言うなら」


 それからカゲはじっと黙った。


「どうした?」


「自慢げに話せる過去もない、エムと沢山話したいというのに」


 下唇を噛んで残念そうに目を潤ませてくる。



「名前の由来なんかどうだ? 本当の名前は?」


「気がついたら夜風に吹かれていた、誰かに日陰と呼ばれていた」


 隙間風のように話が進み始める。


「日をてらえないカゲはそれからずっと人影に服を着せて、消えて過ごしてきた」


 カゲは肌寒そうに両手を組んで解く。


「自然と陰は影と呼ばれるように、足から伸びる黒い影は、カゲ自身だ」


 足を浮かせるとつま先でトントン、自分自身の影を叩いていた。


「姿を消しても、影は常に見えているから」


「だから名前が」




『わたしより、カゲの方が目立っているだろう?』




 視界から消えたカゲの足元を追うと。


 くっきりと残った人影と目が合う。


「かっこいいな!」


「エム……」


「二文字にそんな理由があるなんて、凄いぞ」



「カゲも、そう思えてきた」



 俺なんて、名前にもかっこいい過去はないからな!







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ