印象として証拠として
『にゃー』
途中でルビーが食べ終えた尻尾を見せてきた。
綺麗に骨と先端の食えない部分を残している。
「偉いぞ!」
撫でてみると猫耳をピコピコ。
「にゃーあー」
いつもより長めに鳴くと尻尾を俺に渡してきた。
「……」
よく分からないが、渡すということはそれなりの意図が?
「そんなわけないでしょ」
クレアはクツクツ笑っていた。
「使い道、あるかもしれないからな」
「ないからないから」
骨を肩に乗せて街に戻った俺達。
クエストワークの報告はドラゴンの頭で成立。
「倒されたのは……?」
「クレア」
「ほほう!」
クレアが『違うから!』と横槍を入れてきた!
「私じゃなくてこの猫耳が!」
「ルビーだぞ」
「ルビーちゃんが倒したの!」
名前を呼ばれたルビーがにゃーと返事。
「なるほど」
報酬がポンとルビーに渡され、頭が返却される。
「頭は使われないのでいりません」
クエストワークを出て報酬を……ルビーの手柄なのでルビーの好きにさせることにした。
「にゃー!」
金の袋をギューッと抱きしめて離さない。
「別に、なくてもいいけど」
「そうか?」
「うん」
確かにクレアは裕福そうだ。
「そう言えば、ドラゴン被ってみれば?」
「これか?」
俺の手に移ったドラゴンの頭は重く生々しい。
「ちょっとは印象に残る男になれるんじゃない」
「そんなに俺は普通に見えるか」
「それはありえないから」
食い気味にありえないと言われてショックを受ける。
「じゃあ要らないな」
「でも見た目はパッとしないし……」
「ああ、被る」
被ってみると右と左の端が見えなくなって不安を感じた。
それでいて、あれだ。
「うっ……!」
とんでもない臭いに頭を外しながら口元を抑える。
「大丈夫?」
「これは、臭いぞ!」
クレアが俺の髪に鼻を近づけ、すっと離れていった。
「たし、かに」
「格好は良いんだがな……」
正面で見てみるとドラゴンの顔はカッコ良い。
「使えるように加工してあげる」
「良いのか!」
「良いよ、別に」
ドラゴンを持つとクレアは何も言わずに帰っていった。
「俺達も帰るか!」
「にゃ!」
ブランドの酒場で夜まで騒いだが、クレアは現れなかった。
『今回は払ってもらう』
ブランドが帰ろうとする俺とルビーを引き止める。
すました顔のルビーは今日の報酬をまさぐり、一枚のコインをカチンと鳴らして置く。
「にゃ」
そして手の平を見せてお釣りは要らぬと。
その場を去ろうとルビーは俺を横切った。
『待て待て待て、足りるわけないだろう!?』
そりゃ一枚で足りるわけがない。
「帰ってこいルビー!」
ブランドに呼ばれて素直に帰ってきたルビー。
金の価値を教えてない俺が悪かった。
「あんな顔で一枚だけとは大した娘だ」
ルビーの金袋からお代の分だけ取ると普通に返してくれた。
「次からはジョークでも許さん」
「すまない、教えておく」
申し訳なさそうなルビーに問題ないと髪を撫でる。
酒場を後にしていつもの様に宿を取った。




