お礼
部屋を出て宿屋を出て。
クレアは忙しなくキョロキョロしていた。
『……何で持ってんの?』
不意に振り返ったクレアに武器を持ってきたことがバレる。
「クレアから盗んでどう使うまでも、俺の意思だ」
「はぁ?」
俺は怒られる覚悟で、ルビーに鞘付きの剣を手渡した。
「身を守る術は、必要だからな」
「にゃあ!」
ルビーは両手で鞘を抱きしめると俺の方を見てにゃーにゃー言ってくる。
「礼を言うなら、クレアに言うんだぞ」
クレアの前にルビーを歩ませ、間を風がビューと抜ける。
「……なに?」
「ありがとうって言うんだぞ」
ルビーの肩をトンと触れてお礼をレクチャー。
『あ、ありがとう!』
しっかりお礼を言えたルビーは剣の持ち手に頬擦りしていた。
『嬉しそうにされたら、没収できるわけないじゃない……』
許してくれたのか、背を向けて足早に歩き始めた。
「良かったな、ルビー」
「にゃー!」
猫耳に触れるとうにゃうにゃ言われ、クレアの武器を無断で売り捌く悪徳商人のエリアに近づく。
ここは夜中に鶏皮だけを食った場所。昼は賑わっている。
「本当に居るのか?」
「嘘はないんじゃないかな、ホウセンカって他より強いから」
「騙すメリットがないってことか」
しかし、商人が口止め料を貰っていたらどうだろうか。
「武器商人は大体二人、あんたが聞いてきて」
クレアは交渉上手なだけあって、簡単にターゲットを絞ると指差しで教えてくれた。
「私が行ったら、バレるし」
「分かった」
一人目は普通の武器屋でクレアの武器を扱っていなかった。
二人目、俺はある異変に気づく。
『らっしゃい! これがお品書きでい!』
バンっと投げられたブックを開くとデカデカとした文字で『ソード』と書かれていた。
「一つ、聞いてもいいか?」
「聞いてくれーい」
「夜中に鶏皮売ってただろ」
「それは裏の顔だぜ!」
絶望的にセンスがない。
武器を売る店でお品書きなんて聞いたことない。
そんな奴が、この街の商売ルールなんて調べるはずがない。
「とにかく、剣を見せてくれ」
「どーぞ〜」
ビブラートを効かせて布に隠れた剣の山を見せてくれた。
そのうちの一本を手に取り、名前を確認。
クレア・ウィザードと書かれている。
「お前だな」
「なんだなんだ?」
「本当になんも知らないんだな、この街でクレアの武器を扱うのは禁止されてるらしいんだ」
「マジか!」
クレアを呼ぶか考えたが、鶏皮の恩が脳裏に浮かんだ。
「これらは見なかったことにしよう、二度とクレアを扱うな」
「わ、分かったぜ」
「それと昼間に開くのは鶏皮にしろ、味は悪くない」
ルビーが肯定するように「にゃー」と鳴いた。
返事を待たずにクレアの近くに戻ってきた。
「どうだった?」
「偽情報を掴まされたか、クレアに気づいて武器を隠したかもしれない」
「今回は諦めて、ギルドに報告しとく……」
ダルそうに踵を返したクレア。
一枚の紙が横切り、サラリと足元を撫でた。
手に取ると号外と書かれていて。
役立ちそうにない、どうでもいい内容だった。
「……報告した後はどうする?」
「ちょっとだけ、冒険する」
「面白そうだな」
紙を細長く折ってルビーの前でヒラヒラ。
「にゃーーー!」
ルビーと遊びながらギルドに戻った。




