掛け湯足湯、睨まれ湯
ガツガツ掘ってふうと一息。
目をキラキラさせながらルビーが俺を見ていた。
『サボるんじゃないぞ』
見つめ返すとせっせと掘ってくれた。
「エム、土はどうする」
「山にしておけば誰かが捨ててくれる……か?」
知らないと冷たく返されて掘り進む。
途中でルビーが眠そうに目尻をピッピと拭った。
「まさか、土を食ったのか!」
「アホエム」
「冗談なんだが」
ルビーが眠いなら仕方ない。
「寝てていいぞ」
一旦スコップを置いて、ルビーを土の外に連れ出した。
「にゃあ!」
まだやれるにゃ的な抵抗を受けながら近くの硬い地面に寝かせる。
カゲが寝ている間、ずっと俺と遊んでくれたからな。
「寝心地は良くないが、寝てくれ」
本音を言うと三人は狭くて掘りにくい。
「うにゃー」
俺の服をルビーにかけると急に静かになった。
服のえりをギュッと掴んで見てくる。
「……」
「足湯ができそうな時には起こすからな」
掘ってくれているカゲの所に戻って手伝った。
「掘るってだるいな、悪くない」
しばらく掘るとじんわりと水を帯びた土に足を取られる。
泥を蹴って掘ると湯気が湧いてきた。
「これが温泉、なのか?」
「カゲに聞くな」
触ってみると熱い、湧いてきたってことで良い気がする。
「濁ってるな」
「本来は石を積んで、土から足を遠ざける」
「詳しいな?」
「まさかエム、温泉を知らないと?」
頷きながら横に掘って温泉の領域を広げていく。
「カゲが、教えてあげよう」
「そうだな」
そこそこ広げた時には湯が深くなっていて。
ルビーを起こしに戻り、湯を見せてあげた。
「にゃー?」
よく分からないって感じで、こればっかりは俺も何も言えなかった。
「熱い湯は体が心地よくなる、足だけでも触れよ」
カゲはそう言ってチャプンと靴を脱いだ素足を濁り湯に隠す。
「まあ、してみるか」
俺も靴を脱いでカゲの隣に座ってみた。
熱で足先がジンジンしてくる。
「ルビー」
手招くと俺の方を向いて正座しながら肩に抱きついてきた。
「にゃー……」
「まさか、怖いのか?」
カゲの方を見ると静かに頷いた。
「靴脱げ」
足先を湯に向けさせると足をピンと伸ばして浸かろうとしない。
「エム、強引は良くない」
「そんなつもりはないぞ」
湯を手ですくって、ルビーの足首にかけてみる。
「あったかいだろー」
「にゃー!」
嬉しそうなので片方の足にも湯をかける。
足を突っ込むのが嫌なだけで、かけるくらいは良いらしい。
「にゃー、あ〜」
歌うように声を上げると自分の手でお湯をチャラチャラかけ始めた。
「賢いな!」
こういうのも悪くないなと思いつつ、右足がなにかに触れる感覚に気づく。
カゲの動きに合わせてヌルヌルと足に触れる存在。
じっと俺を見て、文句ありげだ。
「なんだよ」
『カゲにも、湯を』
ピンと浮いてきた足はポタポタと湯船に雫を落とす。
「浸かってるだろ」
「エム……」
ズボンを指で摘まれ、無言の圧力が俺を襲う。
「仕方ないな!」
押された俺は湯をかけてあげることにした。




