温泉計画
足取りが重い。
嫌な出来事が待っているから?
憂鬱な気持ちをどこかに残しているから?
『にゃー』
左足にしがみつくルビーのせいです。
「……」
夜の静かなクエストワークを好都合と思う日が来るとはな!
「ルビー、行け! 依頼を取ってこい!」
「にゃにゃにゃ!」
嫌だと首を振りながら頬擦り。
「仕方ないな」
稼げそうな依頼を見てみるが、特にない。
青いドラゴンがまだある。
ホウセンカのコノハ部隊が倒してると思うんだが。
色だけ同じのドラゴンかもしれない。
「良いのないか?」
受付の人に聞いてみると。
「ありますよ」
という確かな返事。
「教えてくれ」
「ホウセンカの温泉計画をご存じですか?」
「知らない」
「ギルドの方でこの街に休める場所を作ろうという計画みたいです」
そんなことをシンスは考えていたのか!
「それで、俺達がすると言ったら?」
「ここを出てから向こうをしばらく進むと柵に囲まれた場所があります」
「あったか?」
「掘れるように土が剥き出しになっているので、そこを掘り進めてください」
湯が湧く場所を掘り当てるって感じか。
「これ、支給のスコップです」
「そうか……」
カゲを背負っている俺は受け取れない。
「ルビー、頼むぞ」
「にゃああ……」
「やればできるだろ、俺は知ってるぞ」
猫耳に手を伸ばすとスッとルビーは離れていった。
触られるのは嫌らしく、スコップを三つ抱いて抱えてくれた。
「じゃあ行ってくる」
「終わったら早めに報告してくださいね」
「どうして?」
「ふふ、誰よりも先に足湯するんです!」
手を組んでキラキラと夢見心地な受付。
「湧いたら、いいけどな」
そんなに都合よくいくわけないと思いながら、クエストワークを出て言われた方向を歩いた。
カゲが何も言ってくれない。
どうやら寝ているらしい。
「ルビー」
「にゃー!」
ルビーの声に安心しながら掘り場所に着いた。
既にちょっとだけ掘られているのか、土の場所は凹んでいる。
カゲを優しく下ろして起こす。
「起きろ」
頬を人差し指で突いてみる。
ムニムニ、起きない。
親指も加勢して摘んで揺らすとようやく起きた。
「……つまむな、エム」
「それは、ごもっともだな」
体を起こしたカゲは眠そうだ。
「今日のお仕事は温泉を掘り当てることだ」
「この土から?」
頷くとカゲは地面に手を置いた。
「カゲはもう少して沸くと判断する」
「分かるのか」
「物を消せるカゲなら、大地を透かすことは容易い」
「凄いな!」
「そう思うならエム、撫でてくれ」
「ああ、凄いことだからな」
尊敬しながら髪をわしゃわしゃ撫でてあげた!
「……納得がいかない」
「もう少し撫でたらいいのか」
「そうではない、なんというか、遠慮されないのも……」
不満があるらしい。聞く暇はもちろんない。
「後で聞く、今はさっさと掘るぞ」
「……」
「物事には、優先順位があるからな!」
ルビーの大きな胸に抱かれていたからか、どこを持っても暖かい。
これなら、手がかじかむことはないな。
『スコップは持ったか!』
「……ルビーから受けた所を見てないのか?」
『カゲは物を消せるからな、あるものをないとか言うかもしれないからなー』
『……ッ!』
カゲは目を丸くして驚くと顔をみるみる赤くしていった。
「どうしたんだ?」
「なんでも、ない……さっさと掘れバカエム!」
「バカはひどいぞ」
とりあえず先陣を切ってスコップを土に立ててみた。
意図をもう一度見ると今のカゲが思ったことが分かるかも




