幸せの下は
『ば、バレてたのか!』
『バレにゃ!?』
ルビーと顔を合わせてゾッと蒼白する。
「問題ないけど」
「食いまくれるな! ほれ!」
さらに切って渡すと美味しそうに食べてくれた。
「にゃまい!」
「まだあるぞ! ほれほれ!」
後ろから美女にパシリと叩かれ『限度はある』と言われてしまった。
「にゃーあ」
怒られてしまったが、ルビーが満足してるならOK!
幸せの下は犠牲で成り立っている。
「仕方ないこと」
「急に達観されても許さないですよ」
ちっ!
「……まだ切った方が?」
「もう切らないので食べていいです」
「摘んでもいいんじゃないか」
「なんか腹立ちますね」
めんどくなった俺は切らずにルビーへお野菜シェア。
両手で持つと大口でかじってシャキシャキ。
思った以上に美味しそうだ。
「それで、スジの方はできるようになるだろうか」
「試してみましょう」
野菜の次はファングの肉。
この時点では値段的価値はない。
「スジに沿って切り込みを入れて」
「なるほど」
「そこからスッスッと」
手品のように披露してくれた包丁さばき。
瞬く間に肉からスジが摘出されていく。
「想像以上だ……」
「ホウセンカへの配給も、してますから」
実際にしてみたが、真似するだけじゃダメなようだ。
同じ場所に同じスジがあるわけではなく、臨機応変に切り込みを入れないといけない。
「ここはこう、これはこう、経験則の直感も大事」
後ろに回った美女の手が、包丁を持つ俺の手に重なる。
「手伝ってあげましょう」
「助かる」
耳元でしっかり言葉にしてくれるから覚えやすい。
「うにゃあ……」
ルビーがうらめしそうにポツリと鳴いた。
今度、ルビーにも包丁術を教えてあげよう。
「今回の肉の場合は以上になります」
「スジがどこにあるのか、とかは?」
「目で見て分からないので切り込み入れて止まったらそこスジです」
思った以上に難しい技術だった。
「にゃあ……」
人差し指でツンツンしてくるルビー。
「食べたいのか?」
コクコク頷いて肯定された。
「仕方ないな、秘密だぞ」
火を付けようと手を伸ばすとバレた。
「言ってくれたら用意するので」
「この肉、食べてみたいらしくて」
「使ってください」
鉄製の容器を隣の場所に置き、鉱石の魔力で容器の底に火を起こす。
普通ならすぐ消えるが置いた場所は料理専用の台、簡単には消えてくれない。
熱した鉄に肉を置くとジューっと焼けてきた。
思った以上に油が出てて美味しそうに見えるぞ!
「にゃ」
ルビーが俺の手首を両手で握る。
「私の獲物を取るにゃべからず」という暗の警告かもしれない。
「分かってる、食わないから」
「にゃ?」
できあがった肉をお箸で取り上げる。
「にゃー」
ルビーに近づけると大きく口を開けてきた。
「違うって、手順があるんだぞ」
冷まして食べる理論をルビーに教えてから口元に運んであげる。
モゴモゴ口を動かして飲み込むと嬉しそうにニコニコ。
「まだあるぞ」
ルビーに食べさせているとカゲが近づいてきた。
『カゲも、居るから』
「分かってる」
カゲに肉を近づけると別の意味でモゴモゴし始めた。
「エム、その……」
「なんだ?」
じっと見つめてはツンと視線が逸れて目が合わない。
「カゲはフーってして欲しいなって……」
「良いぞ」
そうして欲しいというリクエストに応えて肉をフーっと冷ます。
「はい、あーん」
パクッと食べたカゲはそのまま背を向けてしまった。
「スジがあったのか?」
「おいしい、それだけだ」
俺がスジを取ったわけじゃないが、誇らしい。
『そうか!』
幸せの下は努力で成り立っている。




