過去の人間
『まあ、落ち着けよ』
「おちつけない……」
カゲは俺の足でゴロゴロと寝返りをうっている。
「ソランだって働かなきゃ行けない時が来るんだぞ」
「働きたくない」
「そんなこと言ってもダメだ」
不意にカゲが俺の足を超えて転がる。
ラッキー、立ち上がろう。
「どうせ寝れないだろ、俺に付き合え」
「嫌よ」
空いたベッドに転がったルビーは寝るつもりらしい。
「にゃあ、にゃあ」
「ああ、おやすみ」
ルビーを撫でておやすみをする。
やっぱり夜という時間は暇になるようだ。
「じゃ、行くぞ」
「嫌ってば」
「拒否権なんてないぞ」
離れようとするソランを強引に掴む。
「このまま押し問答してもいいが、どうする」
「……わかった」
嫌そうなソランを連れてクエストワークに向かった。
「なにするの」
依頼を眺めて数分、これだと思った奴を取る。
「木材の納品」
「し、しないから!」
「これ以外でソランができそうなのは、他人棒を触るくらいだぞ」
「分かったから……」
木材を手伝ってくれるらしい。
「決まりだな」
街を出て草原の森に踏み込んだ俺達。
『さむい』
「だろうな、そんなドレスなら」
仕方ないので俺の羽織りを貸してあげることにした。
「なんとか生きていけそう……」
「それはなにより」
木の近くに来た俺はあることに気づく。
「斧買うの忘れてた」
「え、えぇ……?」
「いやー金もなくてな」
呆れた顔でソランに睨まれる。
「どうするの!」
「このまま切るよ」
寒そうなソランの為に近くで焚き火を組んだ。
俺は剣を抜いてトントンとゆっくり削っていく。
恐ろしいことに斬れる未来が見えない。
「大丈夫……?」
「そのうち切れる」
トン、トン、トン。
微かに皮が剥がれ、凹みを見せる。
トントントン。
さらに凹む。
「ソラン、昔のことを思い出すな」
「前もこんなことあった気がする」
ソランがどうしても、倒したドラゴンの近くでキャンプファイヤーしたいって言うから、木を剣で斬り倒したんだ。
その時の感覚を頼りに切り込みを入れていく。
「早くして……」
「それは無理だ」
何百回、何十分の末に木が倒れる。
「やった」
「よし、帰りましょ!」
「まだだぞ」
「え?」
「切って持ち運べるようにしないと」
「……」
さっきまでの意欲はどこに行ったのか、ソランは悲しげに火を見つめていた。
二分の一に木を割った俺は両手に抱えてソランに声を掛ける。
「これで、終わりだぞ」
「やったわ!」
昔だったら『えーもう終わり?』って言ってくれただろうか。
「うれしくない?」
「いや、別に」
さっさと木をクエストワークに持っていこう。




