お怒り
『ここ入ってから、それから……』
「わかったわかった」
出ようとしたらカウンターの美人さんに『金払え』って言われ、払ってから逃げてきた。
このルームから先に進んで出れるみたいだ。
目の前のドアを開き、細い道を進むと階段。
『ここ上がったら……』
上がりきると夜空に迎えられる。
確かに外に出てれたみたいだ。
「大丈夫か?」
「ん」
カゲは肯定するように唸った。
「そうか」
宿屋に戻って借りていた部屋に入る。
ソランがベッドに座っていた。
「どこ行ってたの?」
「話は後だ、退いてくれ」
「ねえって」
ソランを払ってベッドにカゲを寝かせる。
「どこいってたのーって」
「インドアな奴に言っても仕方ないだろ」
着いてくるわけじゃないなら教えてやる必要はない。
「じゃあ、早く稼いできてよ」
「後でな」
「前みたいに早く大金を……」
「物事には、優先順位がある」
俺の冷えた手の甲をカゲのおでこに軽く当てる。
「まずは仲間、次にお金、それから自分だ」
「このソランよりアレが良いの!?」
「お前は元気だ、こいつは元気じゃない」
「ギルドマスターの命令!」
「もう、ホウセンカに属したから聞けないな」
虹色のドレスがフリフリと揺れた。
「なんで、なんで! あんなに、優しかったのに……」
「あの時は一人だったからだ」
ソランは何も言わずに振り返るとドアを開けたまま出ていった。
代わりにルビーが静かに閉めてくれた。
『いいのか』
「ああ、カゲが寝るまで待つ」
「ソランという人は大切な……」
「頼み方が気に食わなかったんだ、ソランはそういう所が昔からあってな」
あの時は自分しか居なかったら文句はなかった。
実際に仲間がアレ扱いだと頭に来る。
「エム、約束は」
「覚えてるぞ」
「指、切るよ」
本当に切ることができそうだから困る。
「分かった、切らないでくれ」
靴を脱いでベッドに座り、足を組んだ。
「これでいいか?」
カゲを引き寄せて太ももに頭を置かせた。
「安心できる」
「そうか」
そのままカゲが寝るまで待った。
「にゃー」
ルビーが俺に近づくと人差し指をドア側に向けた。
「にゃあ、にゃあ」
音が聞こえる、とでも言いたげだ。
「開けてこい、ルビーなら行ける」
「にゃ……」
目をキリッとさせたルビーは静かに近づき、ドアを開ける。
「しゃ、シャー!」
ルビーが怒ってるぞ! 誰なんだ!
「な、なんなの!?」
ソランだった。
「入ってきてもいいぞ、ソラン」
ルビーがドアから離れるとソランが入ってきた。
「私、もう一人で生きていける気がしない」
「こんな短い時間で何が?」
「別の部屋を取ろうとしても取れなくて、飲み物もダメで……」
よく分からないが、ソランが重症なのは分かった。




