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全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
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ソラン







『……名前は』


 ソランが変なことを聞いてきた。


「もう酔ってるのか?」


「そうじゃ、ない」


「リュウキだぞ」


 ソランの喋りは止まらず。


「ギルド、終わっちゃいそう」


「そうか」


「ギルドに届く手紙ってなんなの?」


「アイテムの納品催促だ」



 届いた依頼はアイテムを集めて欲しいって言葉が多かった。


 こなす前に抜けることになったが、ソランは一つもやってないらしい。



「そ、それくらいやってから抜けてよ!」


「それくらい、か」


「溜まりに溜まって……」


 そういえば、依頼の中に討伐が潜んでいたな。


「久々にドラゴンを倒しに行くか」


「いや、嫌に決まってるから?」


「それくらいの依頼なんだ、ソランも手伝ってくれないか?」


「絶対しない、一人で行ってきて」


「……インドアになったな」




 酒場に入っていつもの椅子にソランを座らせる。


 俺は飲む気がないので立って見ていよう。


『知らない顔だな?』


 ブランドが近くにやってくるとソランを見ながら言った。


「……キツい酒持ってきて」


「あぁ」


 注がれた酒を、ソランは一息つかずに飲み干す。


「なんで、美味しくないの」



「この酒は、それなりに高価なんだが」


 ブランドが見つめる黒瓶の酒は豪華な装飾がされている。



「ギルドに届く酒はいつも絶品で……舌が肥えちゃったのかな」


「どんな味がするか、聞いてもいいか?」


「まろやかに甘くてサラサラと消えてく」


「品種、特徴が分かればこの中にあるかもしれないが」


「……その時は興味がなかったから、飲み終えた瓶は捨てさせてた」


 ソランが指で酒をねだると、ブランドはトクトク注ぐ。


「そんなんじゃ足りない」


 注ぎ途中の瓶に手を伸ばして奪い取ると口を付けて傾け、一瞬で飲み干していく。



 瓶は役立たずと言わんばかりに床でパリンと割れた。



「あの酒、くれる?」


「……正気か?」


「まだシラフ」


 ブランドが運んだ瓶は奪い取られ、残骸と同じような運命をたどる。


「なんで、おいしくないの!」


 叩きつけられた瓶がカウンターで弾けた。


「さすがにやめてくれ」


「もっと!」


 椅子から降りたソランは生暖かい椅子に手を置く。



『リュウキもなんか言ってよ!』


 俺は飛んできた椅子を受け止め、その場にカタンと置いた。



「金は取らねえから、もうつまみ出してくれ」


 暴れるソランを後ろから抑えてみる。


「離して! もうギルドは終わって廃れてくんだから!」


 ソランが動けば動くほど、酒の匂いがその場に残って気分が悪くなりそうだ。


「ソランも、廃れて終わりよ……」


 そう言って突き出された肘が横腹に当たった。


「もう、戻って、きて……」


 切れた糸のように抵抗しなくなったソランを酒場から連れ出した。



 カゲとルビーが目の前で姿を見せる。


「エム……」


「酒って怖いだろ? カゲも気をつけろよ」


「どうする、これから」


 こんなに早く酔ってつまみ出されるとは思っていなかった。


「この金で遊んでていいぞ」


「エムは」


「ソランの酔いが覚めるまで待つ」


「把握した、エムのそばに居よう」


 金の袋をカゲは受け取ろうとしない。



「ルビーは腹減ってると思うぞ」


「エムの近くを離れようとしない」


 カゲがわざとらしく引っ張ると。


 ルビーは「にゃー」と言って対抗していた。


「この女々しき女はエムに合っていない、捨てることを提案する」


「それはできない」


「なにゆえ」


 俺はソランを担いで歩く。



『最高のプレゼントを貰ったからだ』



 宿屋の一室を借りた俺はソランをベッドに寝かせた。


 酒を飲んで寝たソランはしばらく起きないはずだ。


 起きてもなんとかなるように全財産の半分を置いておくことにした。


「エムは、何を貰った?」


「言葉にできないものだ」


 追放という言葉にできな……くもなかった。


「なるほど」


 納得してくれたから良し。


「腹ごしらえしたら、稼ぎに行くぞ」


「結局捨てるのか」


「ソランは起きないから安心してくれ」


 宿屋を出た俺達は、近くの店で携帯用の握り飯を買うことにした。



 店の中で書かれた値段の結果、選択したことだ。


『一つ200ヘルだよ』


 悲しいことに全財産は1500しかない。



「何個食いたいんだ?」


「カゲは三つ」


「ルビーは?」


「にゃ」


 ルビーは謙虚だな、二個で良いらしい。



「にゃあにゃあ!」


 違う違うと首を横に振ったルビー。


 両手にピースを作って見せつけてきた。



「七個だ」


「作るから待っててね」


 おばさんは店の奥に隠れていった。


「エムの分は……」


「俺は要らないぞ」


「食べることを提案する」


「却下を提案する」


 獣の肉をたまにちぎるくらいでいいんだよ。




「はい、おにぎりだよ、また来てね」


「助かる」


「にゃすかる」


 俺の真似をするルビーにおばさんが不思議そうな顔をする。


「舌足らずでかわいいな〜」



 おにぎりセットを受け取った俺は、ルビーを撫でながらその場を後にした。


「にゃー」


 握り飯は柔らかくした木を編んで作られた四角い箱に詰められている。


 箱を開けて、透明な袋に包まれた丸い握りを取り出し。


「ほら」


 受け取ったルビーはお菓子の件で開け方を学んでいたのか、自分で開けれるようになっていた。


「か、カゲにも……」


「もちろんだ」


 渡すと大きな一口でそれぞれ食べ始めた。


「にゃまーい」


 猫耳族にとって、人間が食べる物はキラキラ光って見えるんだろうか。


「にゃあにゃあ」


「言われなくても分かってる、ほら」


 静かに食べるカゲはまだ一つ目。


「どうしたんだ?」


「エムも食べろと、カゲは言いたい」



 近づく握り飯。


 俺は受け取ることにした。


『にゃすかる』










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