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全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
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気分転換








 ギルドに戻るとカゲ達に迎えられた。


『エムはカゲが持つ!』


 近寄ってくれたカゲを返すのは気分が良くない。


「手を握ってくれ、本物じゃないが」


 右手を見せるとカゲは握ってくれた。


 シンスはベッドに着くと座らせてくれる。


「あとは……お好きに」


「これからどうするんだ?」


「ミストを呼び戻して、復興しないと。資金と肉体労働はもちろん」


「分かってる」


「100億用意しなさい」


 にっと笑ったシンスが部屋を出ていく。




「エム、ここでゴロゴロしたい」


「椅子に座ってくれ、俺がゴロゴロしたい」


 寝てみると背中が痛くて寝れない。


 それをミトラにバッチリ見られた。


「あの……」


 前に出たミトラが帽子を置いて手を広げる。


 グローブをするりと脱いで帽子に重ねた。


「冷やすのは得意なので、背中を……」


「頼む!」


 食い気味に答えて仰向けに託す。


 ミトラはベッドに乗り込むと俺の足に座ったようだった。


 服が静かにめくられる。


「赤い……」


 腰周りから上に冷気が駆け上がる。



「熱が取れてくな」


 ああ、気持ち良い。


「カゲも魔法が使えたら合法的に……」


「聞こえてるぞ」


 タッタっとその場を去る足音。


「ねね、あんたって地獄耳が過ぎるんじゃない?」


「そうか?」


「さっきの聞こえなかったもん」


 クレアからは距離があるからな。



 聞こえなくても不思議じゃない。


「クレアの耳が悪いのかもしれないな!」


「んなわけないでしょ」


 耳たぶがクレアにもってかれる! そんなに痛くない!


「手加減をしてくれるのか」


「それが何?」


「優しいと思って」


 耳から手が離れていく。



「……当然でしょ」


 クレアの言葉は続く。


「ミトラ、凍らせないようにね」



「うん」


 また一つ足音が離れていった。


「……」


 長い沈黙。


 少し冷気に誘われて目を閉じた。


 ふかふかの枕が更に光を遮る。


「え、寝るの?」


 リドルの声に枕を左右に擦って答える。


「ふーん……ってそれ寝るやつの動きじゃん、寝るつもりじゃん」


 そのつもりは。


「それもいいと思うよ、お疲れ様」


 ……。


 …………。


 次に目を開けた時は仰向けだった。



 真っ暗な天井。



「おはよう」


 リドル。


 仰向けに寝れるほど冷やしてくれたミトラにお礼を言わないと。


「みんな寝てる時間だよ」


 じゃあダメだなって起きる考えを捨てる。


 久々に寝て全てがリセットされた気分だ。


 疲れと一緒に経験がリセットされてるんじゃないか?



 そんなわけないか。


「右手の中を見てみて」


 暖かいふかふか布団の中を見てみる。


 カゲが腕に巻きついていた!


「全然わからなかった」


「色んなことしちゃえ!」


 手始めにカゲを撫でてみる。


「んん……」


 もう目覚めやがったのでなにも出来ない。


 ぱちぱち瞬いて俺を見る。


「えむ……」


「よしよし」


 髪の動きに合わせて唸ったカゲは少し嬉しそうにする。


 窄んだ唇に人差し指を近づける。


「いたっ」


 爪先を噛まれて手を引く。


「……おやすみ」


 ギュッと目を閉じたカゲはスースー寝息を立てる。



 リドルから空白の時間を聞いた。


 寝てる間にカゲが色んなことをしていたとか、ソランがやってきたとか。


「ソランはまた今度来るって言ってたよ」


「重要な話があるのかもな」


「かもねー」




 そういえば、夜はコノハと話すことが多かった。


「リドル」


「なーに?」


「なんで邪魔をした?」


 あの時、コノハに届く距離だった。


 リドルが立ち塞がらなければ身代わりぐらいには成れた。


「それは……」


 リドルの声ノリが一気に悪くなる。


『成仏したくなかっただけ』


「なんだよそれ」


「本当にそれだけ!」


 よく分からないが、言い訳っぽいのはなんとなく分かった。



「そうか、それで誰か死ぬかもしれないからな、もうするなよ」


「そっちは死ぬじゃん」


「それは仕方ない、トロッコ問題だな」


「小は大も兼ねてる!」


 降ってきたリドルが透明な手で俺の肩を掴む。ひんやり。


「知らない誰よりも、あなたが大事!」


 ピリピリ金縛りにも似た痺れ。


「びりびりー」


「わ、わかったわかった」


 死なないという約束をしていたら夜が明けていた。



「めんどくさい一日が始まる」


「なんで?」


 まだ明るいだけの空は敵じゃない。それは今もそうだ。


「ホウセンカの修復に追われる」


「いつも何かに追われてるんじゃ?」


「それもそうだな」


 起きようとしてカゲが腕に引っ付いていることを思い出す。


「こうするか」


 機械という部分を活かして腕のパーツを付け根から離す。


 カゲを真ん中に寝かせて言葉と布をかける。


「おやす」


「起こさないんだ」


「もう少し寝たいだろうしな」


 椅子に座ってカゲに手を伸ばす。


 髪に触れると布の中に体を丸めて引っ込んだ。



 部屋を出て美女に朝からやれることはないのか、聞いてみた。


『ないですねー、だってクエストワークも壊れちゃいましたから、大慌てです』


 ちなみに私も大慌てです。美女はオホホと笑う。


「臨時的とはいえ、ここをクエストワークとして扱うみたいですが」


「ほう?」


「ギルドクエストは一時的にソレで染まりますね」


 そう言って既に集められた看板の紙を取っていく美女。


 俺も取らないとまずいか……!


『もちろん』


 いつの間にか、横にはシンスが。


「げっ」


 きらびやかな服でお出ましのよう。


「げっ、とは?」


「気のせいだ」


 笑って濁しつつ逃げようと後ずさる。


「待ちなさい」


 手を引かれて逃げがミスる。


「あれをやらなきゃいけないのか」


「そうよ、喜んでいろいろしてたみたいじゃない、クレアから色々聞いてる」


「……めんどうだ!」


「はっ?」


「やりたくない!」



 乗り気になりないというか、なんというか!


 とてもじゃないが働きたくねえ!



「いや、え? せっかく、剣も手元に戻ったじゃない……?」


「離せ!」


「ちょ、そこのあんた! こいつリュウキだと思う!?」


 変な質問を誰かにするシンス。


『し、シンスが狂った! やばい!』


「狂ってない! 質問に答えなさい!」


 逃げようと引く手がギッチギチに固まる。


 本気で手伝って欲しいみたいだっ!


「本人なんじゃないですか? 顔みたことないですけど、男ってそれくらいですし……」


「この顔、どう?」


 ぐっと引き寄せられて脇から差し込まれた腕にホールドされる。


 頬を小動物みたいに下から挟まれて美女に晒される。


「男ですねー」


「そう?」


「男じゃないんですか?」


「男よ」


 バカみたいな話が俺を挟んで進む。


「そろそろ離せ」


「やると言うまで離れないわ」


 押し寄せられる度に胸のクッションが沈む。


「胸が……」


「まあまあ」


 シンスはシンスで俺には異常としか思えない!


「こんなことも、コノハにやってたのか!」


「今は、そんな話は置いといて、するかしないかの話を」


 シンスの質問に答えていた美女に手を伸ばすが関係なさそうに逃げていった。


「やりたくないと言ったらやりたくないんだ!」


 口答えをしているとギルドの扉が開く。


「ただいま〜」


 ミストの声にサボりたい一心で手を伸ばす。


「助けてくれ!」


「リュウキくん!?」


 気づいてくれたのか、慌ててやってきてくれた。


「ちょっとちょっとー! 罰ってこれのこと!?」


「み、ミストっ!?」


 シンスはミストの帰還に心底驚いていた。



「あなた、あれでしょう? 馬車で行ったんじゃ」


「ホウセンカの為に、帰りは土の塊に乗ってきたよー」


 俺を見ながらにーって笑うとピースサイン。


「土の塊に乗るってどういうこと?」


「まあまあ、それよりもリュウキくん返して!」


「それはできない、仕事してもらうから」


「リュウキくんは頑張ったんだよ!? 休んでもいいじゃんかー!」


 ミストの話にその通りだと頷きながらシンスを見てみる。


「じゃあこの作業は誰がするの?」


「へ?」


「みんなは明日のために忙しいの、薬草なんて取りに行けない、でも怪我した人の為に取りに行く必要がある」


 シンスはそれをミストがやるのかと返す。


「リュウキくん……」


 このパターンは経験済みだ。休めよと言うだけ言って事実には手を貸さない。俺も貸したくないから知ってる。


「ミストも手伝うから頑張ろー?」


「優しいな、ミストは」


「当然!」


 俺も貸さないといけなくなった。


「取りに行こうか、薬草」


 シンスの手を払って前へ進む。


「でーとでーと……」




 ずっとミストの頭に乗っていたカエルがシンスにゲコッと跳ねていくのが見えた。


「ちょっ! なにこれっ!?」




『に、逃げろー!』



 ミストに手を引かれて慌ててギルドを飛び出した。









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